3回戦
◇8月20日 川崎市営等々力陸上競技場 5,104人
 川崎フロンターレ 0−1 愛媛FC
[愛媛] 表原玄太(34分)
 愛媛の3回戦突破は3年前の91回大会以来。その時はJ1のサンフレッチェ広島を下している。川崎とは天皇杯で過去3戦全敗だったが、初めて勝利を収めた。4回戦ではJ1の大宮アルディージャと対戦する(9月10日予定、場所未定)。

 J1トップの38得点をあげ、2位につける川崎を完封勝利。金星をもたらしたのは、これまでサブに甘んじてきた選手たちだった。

 猛暑のなか、週末のリーグ戦の間に設けられたウィークデーの一戦とあって、両チームとも主力を温存して試合に臨んだ。川崎はMF中村憲剛、FW大久保嘉人、愛媛はFWリカルド・ロボやFW河原和寿がベンチ入りから外れた。17日に松本山雅FCに1−4で大敗を喫した愛媛は先発を全員入れ替えた。

 リーグ戦では1度もスタメン出場がなかったMF近藤貫太は「自分がやってやろうという気持ちだった。それは誰もが持っていたと思う」と明かす。立ち上がりから積極的にプレスをかけ、相手陣内でボールを奪ってゴールに迫る。連係がかみ合わず、ミスも目立つ川崎に対して互角の展開を繰り広げた。

 そして34分、先制ゴールが生まれる。ヒーローは18歳のルーキー、MF表原玄太だ。相手のパスミスに乗じ、ハーフライン近くで前を向くと、得意のドリブルで一気に中央突破。「相手のディフェンスがブロックしてくるのが見えた、横に抜いて決めよう」とイメージ通りに、右へ回ってDFを2人かわし、右足を振り抜く。川崎サポーターで青く染まったスタンドを青ざめさせる鮮やかなゴールが決まった。

 1点をリードし、愛媛は戦い方がより明確になる。「戦前から相手にボールを持たれることが予想できた。ラインを意図的に低く下げた」と石丸清隆監督が語ったように、守りを固め、川崎に思うような反撃をさせない。

 リーグ戦では2試合連続で4失点と崩壊していた守りは、この日は左足関節捻挫で離脱していた林堂眞が復帰。ボールを蹴り始めて1週間も経たない段階ながら、体を張って川崎の攻撃を食い止めた。

 その林堂は「前半ゼロでいけたことで連動すればボールを奪える手応えがあった」と振り返る。川崎は後半に入ると、J1得点ランク3位(9ゴール)のFW小林悠、MF大島僚太と主力を一気に投入。大島を起点にパスがつながり、愛媛陣内に次々と攻め入る。

 押し込まれる時間帯が続くなか、光ったのは途中出場のMF堀米勇輝だ。後半14分に投入されると、カウンターで何度も川崎ゴールを脅かす。18分にミドルシュートを放つと、直後は右サイドをドリブルで駆け上がり、内に切り込んでゴールを狙う。試合を決定づける得点こそならなかったが、川崎の攻勢を断つには十分な働きだった。

 それでも残り10分を切ると、川崎が最後の猛攻をしかける。いつ同点弾が生まれても不思議ではない状況ながら、リーグ戦未出場のGK大西勝を中心に虎の子の1点を必死に守り切った。「クオリティでは差がある。集中が途切れたらやられる。ミーティングからみんなで声を出し合うことを意識していた」と大西は語る。セットプレーの連続だったロスタイムをしのぎ切り、歓喜のホイッスルがピッチ上に鳴り響いた。

「チーム状況が良くなかったなか、フレッシュな選手で勝てた。チーム力の底上げになる」と石丸監督は笑顔をみせた。ここまで出番の少なかった控えメンバーが奮起して成し遂げたジャイアントキリング。リーグ戦では17位と下位に沈む愛媛だが、残りのシーズンに弾みをつける意味でも大きな白星となった。

<両チームメンバー>
愛媛FC
GK 31 大西勝吾
DF  3 代健司 → 28 ハン・ヒフン(83分)
  23 林堂眞 
   17 キム・ミンジェ 
MF  7 村上巧 → DF 25 村上佑介(65分)
   10 原川力
   16 江口直生
   22 近藤貫太 → 14 堀米勇輝(59分)
FW 19 渡辺亮太
   24 表原玄太

川崎フロンターレ
GK 21 西部洋平
DF  5 ジェシ
    7 中澤聡太
    4 井川祐輔
MF  6 山本真希
    3 田中裕介
   34 パウリーニョ → 16 大島僚太(HT) 
   25 山越享太郎
FW 26 可児壮隆 → MF 谷口彰悟(76分)
   18 金久保順
    9 森島康仁 → 11 小林悠(HT)