どうにも違和感がぬぐえない。プロ野球選手にとってゴルフは、そんなに悪いことなのか。

 

 練習日にゴルフをしていた中日・松坂大輔が球団から規律違反を理由にペナルティーを科せられた。球団が練習日のゴルフを禁止しているのであれば、ペナルティーは致し方あるまい。本人も球団側に謝罪し、「自覚が足りなかった」と反省しているという。

 

 ならば、と問いたい。気晴らしのための練習日の釣りやパチンコは規律違反には問われないのか。もしゴルフがNGで釣りやパチンコはOKだというのなら、その理由が知りたい。

 

 というのも、この国にはゴルフに対する名状し難い偏見があるように感じられるからだ。2001年2月、ハワイ沖で水産高校の練習船が米原子力潜水艦に衝突され、沈没するという痛ましい事故が起きた。休暇中の森喜朗首相(当時)はゴルフに興じていた。その際の対応に瑕疵があったのは事実だが、批判の的にさらされたのはゴルフだった。真冬なのに流された映像は、なぜか麦わら帽子に半袖姿。「お気楽なものだ」との世論誘導がなされた。

 

 話を右肩痛の松坂に戻そう。もし「リハビリのためのゴルフでした」と言えば、彼への逆風も少しはやわらいだのではないか。<膝とか腰のケガならわかるけど、肩だからゴルフぐらいいいんじゃない? リフレッシュにもなるし>。そうツイートしたのはダルビッシュ有(カブス)である。

 

 そこで多くのアスリートの主治医を務める坂山憲史南松山病院副院長に聞いてみた。ゴルフは肩に悪いのか。「個人的にはプロ野球のピッチャーがゴルフをすることは決して悪いことではない、と考えます。なぜなら右利きの場合、ゴルフでは、ほとんど右肩を動かさないですむからです。ゴルフでは肩関節自体の動きよりも肩甲骨の動きが重視されます」。そして、こんな話も。「肩のリハビリで最も有名なものに、コッドマン運動というものがあります。これはうつむいた姿勢で、手を下にしてぐるぐる回すというもの。アイロン程度の重量物を持つとさらにいいとされている。この運動に最も近いのがゴルフでしょう」

 

 そうであるならば「リハビリの一環」と言っても差支えあるまい。明治後期に東京朝日新聞が主導した「野球害毒論」を彷彿とさせる「ゴルフ害毒論」。紳士のスポーツが不憫でならない。

 

<この原稿は19年5月22日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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