昨年、出場77試合ながら16本のホームランをマークし、ブレイクしたのが横浜DeNA・梶谷隆幸だ。現在、“トリプルスリー”の有力候補として注目されている。2007年に走攻守そろった逸材としてドラフト1位で入団し、期待を寄せられながら、12年までは鳴かず飛ばずだった。なぜ彼は突然、開花したのか。その理由を、編集長・二宮清純が訊いた。
二宮: 昨年は88試合で16本のホームランを放ちました。これは144試合にフル出場したら30本はいける数字です。
梶谷: あんなにいい感じで打てるというのはそうないことだと思いますが、昨年はいいところがだいぶ凝縮された感じでしたね。

二宮: ご自身で、開花の一番の大きな理由は何だったと思いますか?
梶谷: 一昨年が全然打てなかったんです。それで何が良くなかったんだろう、といろいろと考えてみたところ、身体がどんどん前に出ていってしまって、変化球の対応がまったくできていなかったことに気づいたんです。

二宮: つまり、体が前に泳がされて、フォームが崩されていたと?
梶谷: はい、そうです。きちんと後ろ足に体重が残っている状態で、泳がされるのはいいんですけど、打ちたいという気持ちが出過ぎて、「もうこれ以上出られない」という状態にまで体が前に出てしまっていた。これではボールを長く見ることができません。

二宮: 今シーズンは、体が前にいっていないと? つまりタメができたということでしょうか。
梶谷: はい。最初から前の足に体重を乗せてしまって、体が前に出ると、どうしてもボールが速く見えますし、変化球の見極めもしにくくなる。そこで、後ろの左足に7、8分くらいの割り合いでウエイトを置くようにしました。

二宮: いずれにしても、88試合で16本も打ったわけですから、それだけポテンシャルが高いということですね。
梶谷: いや、まだ波があるなと。現に今、苦しんでいますから。波を小さくして、悪い状態から早く抜け出して、いい状態の期間をなるべく長く保てるようにしていきたいと思っています。

二宮: 守備では今シーズン、内野から外野にコンバートされましたね。外野の方が伸び伸びやれているのでは?
梶谷: 内野をやっている時とは、正直、試合の入り方が全然違いますね。気持ち的には楽になりました。

二宮: 足も速いですし、ゆくゆくはセンターはどうですか?
梶谷: いやぁ、センターとなると、ちょっとまだ不安です(笑)。どこがいいというのはないので、とにかく与えられたポジションをしっかりと守れるようにしたいと思っています。

二宮: 身体も一回り大きくなった気がしますが、トレーニングの成果でしょうか?
梶谷: はい、ウエイトトレーニング、それと食事には気を遣っています。というのも、もともと痩せ形で、試合に出続けるうちに、放っておくと、どんどん体重が減っていってしまうんです。今は、なるべくキープできるように心がけています。

二宮: ウエイトトレーニングに力を入れているのは、パワーアップしたかった?
梶谷: 身体を変えたら、プレーの本質も変わるんじゃないかなと思ったんです。もともとひ弱で、飛ばすことも、強い打球を打つこともできなかった。バットスイングも弱かったので、自分で「まずは身体を変えないと、話にならないな」と思ったんです。

二宮: 身体ができてくると、打球の速さも変わったのでは?
梶谷: まったく違いましたね。改めてウエイトトレーニングの重要性を感じています。

二宮: 将来的には、同じジムでトレーニングをしていた金本知憲のような鉄人を目指していると?
梶谷: 大先輩にはおこがましいですけど、金本さんのような選手になりたいですね。

<現在発売中の小学館『ビッグコミックオリジナル』(9月5日号)に梶谷選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>