28日、日本サッカー協会はJFAハウスで会見を開き、9月の「キリンチャレンジカップ2014」のウルグアイ代表戦(5日、札幌)、ベネズエラ代表戦(9日、日産ス)に臨む日本代表23名を発表した。ブラジルW杯のメンバーからはDF長友佑都(インテル)、MF長谷部誠(フランクフルト)、FW本田圭佑(ACミラン)ら12名。また過去に選出経験のあるDF水本裕貴(広島)、MF柴崎岳(鹿島)、MF田中順也(スポルティング)らも代表復帰を果たした。DF坂井達弥(鳥栖)、DF松原健(新潟)、MF森岡亮太(神戸)、FW皆川佑介(広島)、FW武藤嘉紀(F東京)は初選出となった。FW香川真司(マンU)、FW原口元気(ベルリン)はケガのため招集を見送られた。
「ここから新しいステージが始まる」
 ハビエル・アギーレ監督は興奮を抑えるようにこう語った。指揮官のいうとおり、ブラジルW杯で惨敗した日本にとって、9月の2試合は再び世界の舞台を目指すための再起戦である。

 そんな一戦に、アギーレ監督が選出したメンバーはサプライズ要素を存分に含んだ面々だった。メンバー選考について指揮官は「過去のリストをチェックして選んではいない」と、過去の実績は関係ないということを述べた。その証拠が坂井、松原、森岡、皆川、武藤の初選出の選手たちだ。

 これら5名の中で、所属クラブでレギュラーとしてプレーしているのは松原、森岡、武藤だ。プロ5年目の松原は現在21歳。昨年、大分トリニータからアルビレックス新潟に期限付き移籍したサイドバックだ。特徴は積極的な攻撃参加と、精度の高いクロス。今季は第10節を除いてフルタイム出場を続けており、リオデジャネイロ五輪を目指す世代でもある。サイドバックはW杯メンバーの長友、DF酒井宏樹(ハノーファー)、DF酒井高徳(シュツットガルト)が名を連ねる激戦区のひとつ。若きサイドバッカーは実力者たちの間に割って入れるか。

 森岡はプロ5年目の23歳で、ヴィッセル神戸で背番号10を背負うゲームメーカーだ。足元の技術に優れ、左右から強烈なミドルシュートも打てる。視野の広いパスセンスも森岡の魅力のひとつだ。神戸ではトップ下を務めているが、アギーレ監督はトップ下を置かない4−3−3システムの採用を示唆している。起用されるならば左右のサイドMFになるだろう。指揮官の求めるポジションに順応できるかが、森岡にとってのポイントだ。

 武藤は現役大学生のルーキーで、FC東京ではここまで全試合に出場し、チームトップの7ゴールをあげている。抜群のスピードと切れ味鋭いドリブルで局面を打開できる選手だ。武藤はアギーレ監督が視察に訪れた第21節(23日)の浦和レッズ戦で2ゴールを決めており、御前でのアピールが実ったかたちだろう。同じアタッカーでは、高い突破力を誇るFW柿谷曜一朗(バーゼル)が代表でのライバルか。

 皆川は今季から王者・サンフレッチェ広島に入団した。ポジションはFWで、身長186センチ、体重84キロと恵まれた体躯を生かしたポストプレーが彼の武器。今回のFW陣では唯一といっていいパワータイプのストライカーといえるだろう。前線からのハードワークをこなせる点も激しさを求めるアギーレ監督の好みに合致する。クラブ同様、途中出場からの出番が予想されるだけに、短い時間でいかに効果的なプレーをできるかがカギを握る。

 そして今回最大のサプライズといえるのがここまでリーグ戦出場がわずか4試合の坂井だ。プロ2年目の今季は度重なる負傷の影響もあり、第21節(23日)の大宮アルディージャ戦で約4カ月ぶりの復帰を果たしたばかりのセンターバックである。実はその大宮戦に代表のリカルド・ロペスGKコーチが視察に来ており、定評のある空中戦の強さとフィードの正確さが代表首脳陣の目に留まったのかもしれない。ただ、代表にはW杯メンバーのDF吉田麻也(サウサンプトン)、DF森重真人(F東京)、そして広島の守備の要・水本ら経験豊富なセンターバックが揃っている。坂井としては試合出場へのアピールをしながら、しっかりと先輩たちの技術を吸収したいところだ。

 初選出以外にも、柴崎やMF扇原貴宏(C大阪)らJで活躍する若手が選ばれた。特に22歳の柴崎は今や名門・鹿島アントラーズの中心を担っている。持ち前の展開力、そして向上著しい運動量と得点力を練習から発揮できれば、長谷部、MF細貝萌(ベルリン)といった代表常連を押しのけてのスタメンも十分にあり得る。

 アギーレジャパンにとって最初の大舞台は来年1月のアジアカップ(豪州)だ。同大会までに9月の2試合を含めて予定されているテストマッチは6試合。アギーレ監督は「(年内の6試合は)選手たちがパスしないといけないテストだ。このテストをパスした選手がアジア杯に進む」と明言した。代表常連組、復帰組、そして初選出の選手たち。アジア杯、ひいては4年後のロシアW杯に向けたサバイバルレースの火ぶたが切って落とされる。

【日本代表メンバー23名】

GK
川島永嗣(スタンダール・リエージュ)
西川周作(浦和レッズ)
林彰洋(サガン鳥栖)
DF
水本裕貴(サンフレッチェ広島)
長友佑都(インテル・ミラノ)
森重真人(FC東京)
吉田麻也(サウサンプトン)
酒井宏樹(ハノーファー96)
坂井達弥(サガン鳥栖)
酒井高徳(VfBシュツットガルト)
松原健(アルビレックス新潟)
MF
長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)
細貝萌(ヘルタ・ベルリン)
田中順也(スポルティング)
森岡亮太(ヴィッセル神戸)
扇原貴宏(セレッソ大阪)
柴崎岳(鹿島アントラーズ)
FW
岡崎慎司(1.FSVマインツ05)
本田圭佑(ACミラン)
柿谷曜一朗(FCバーゼル1893)
大迫勇也(1.FCケルン)
皆川佑介(サンフレッチェ広島)
武藤嘉紀(FC東京)