29日、Jリーグは事務局で会見を開き、サポーターが差別的行為を行なった横浜F・マリノスに対して、制裁金500万円とけん責の処分を科すと発表した。この件は今月23日に行われたJ1・第21節横浜FM対川崎フロンターレ(ニッパ球)において、横浜FMサポーターのひとりが川崎Fの選手に向けてバナナを振りかざした。これが差別的行為にあたるとして、横浜FMが当該サポーターを聴取した結果、本人が認めた。クラブは23日に当該サポーターの無期限入場禁止処分を発表。25日に村井満Jリーグチェアマンに報告していた。
(写真・今回の行為を「許しがたい行為」と断じた村井チェアマン)
「挑発行為を受けた選手、川崎フロンターレの関係者やファン・サポーターの皆さま、また不快な思いをされた多くの皆さまに深くお詫び申し上げる」
 村井チェアマンは会見冒頭で、このように謝罪した。今年3月には浦和レッズの一部サポーターが差別的表現の横断幕を掲示し、浦和には無観客試合の制裁が科された。今回は日本サッカー界をあげて差別的行為の撲滅を目指してきた中での一件だけに、村井チェアマンは怒りと悲しみが入り混じったような表情だった。

 リーグは処分を決める際、「啓発活動」「監視体制」「問題発生後の対応」の3点から検証した。その上で、「監視体制」と「問題発生後の対応」は適切であったものの、ファン・サポーターへの「啓発活動」が十分ではなかったと判断。また横浜FMにとって初めての事例であったことから制裁金500万円、けん責という処分決定に至った。この処分に加え、横浜FMからは嘉悦朗代表取締役社長の報酬を20%、2ヶ月間にわたって返上することも発表されている。

 リーグの後に会見を行った嘉悦社長は問題が起こった背景に「差別に対する意識の希薄さ」「一部サポーターの挑発行為」を挙げた。その上で、再発防止策として9月1、2日にサポーターグループの中心人物に向けた人権啓発研修を実施すること、その後もホームゲームの前に希望者を募り、同様の研修を行うことを掲げた。また挑発行為については、「サッカーの本質ではないと思っている」と述べ、差別的行為とともに撲滅していきたいという意志を示した。

 また村井チェアマンも、より差別撲滅に向けて注力することを強調した。
「(差別は)スタジアムだけの問題ではない。スタジアムでのみならず、ホームタウン活動などでサポーターに向けて、さらに一歩踏み込んで啓発活動を行い、責任を果たさないといけない」

 前回は浦和、今回は横浜FM。問題発覚後、それぞれが再発防止策を掲げているが、果たして他クラブはどうか。村井チェアマンによれば「横浜FMのレベルまでに達していないクラブが大半」だという。すべてのJクラブが同じレベルで撲滅に取り組まなければ、リーグから差別は根絶されない。村井チェアマンはJリーグを「世界で一番フェアでオープンなリーグにしていきたい」と語っている。そのためには、クラブ、ファン・サポーター、リーグがともに危機感を持ち、一体となって改善に務めなければならない。