1日、野球独立リーグの四国アイランドリーグplusとBCリーグが記者会見を開き、一般社団法人日本独立リーグ野球機構(IPBL Japan)の設立を発表した。会長には鍵山誠アイランドリーグCEO、副会長には村山哲二BCリーグ代表が就任。今後、「プロ野球独立リーグの代表団体」「国内外の野球関係団体との正式窓口」として活動していく方針だ。
 設立の最も大きなきっかけは、日本学生野球憲章の改正にあった。昨年、最も大きな壁となっていた元プロのアマ資格回復が大幅に緩和されたことは周知の通りである。従来、元プロ選手がアマの資格復帰には2年間の教員経験が必要だった。しかし、新制度ではプロとアマ双方の研修を受け、日本学生野球協会の審査をパスすれば、復帰が認められることとなった。

 ところが、その話し合いの場に、実は独立リーグは参加することができなかった。その大きな理由は、独立リーグとしての正式な団体が設立されていなかったことにある。アイランドリーグとBCリーグでは、2010年に独立リーグ連絡協議会を設立し、情報の共有化を図ってきた。だが、それはあくまでも任意団体であり、NPBや日本学生野球協会などのアマチュア団体からすればオフィシャルとして認めることはできなかった。そこで、NPBを含めた各団体からの強い要請もあり、法人団体の設立に至ったのである。

 独立リーグの選手はプロなのか、アマチュアなのか――。「この約10年間、アイランドリーグとBCリーグは、そのことでいろいろと苦しんできた」と村山代表が語るように、現在、日本の野球界においてこの答えはあやふやなままとなっている。アマチュア側からすれば、「球団と選手契約を結び、給料を得ている以上はプロである」ため、独立リーグ出身の元選手が指導者となるにはアマ資格を復帰しなければならないとされている。ところがNPB側にすれば、独立リーグはあくまでもドラフトの対象であるため、規定ではアマチュア扱いとなっている。そのため、「元プロ」として講習を受けることができないのだ。

 また、独立リーグの日本人選手がNPBの球団に入るには、ドラフト以外に道はない。だが、独立リーグの選手でも外国人選手とNPB出身者はプロ扱いとなるため、シーズン途中での移籍が認められている。12年7月に香川オリーブガイナーズからオリックス入りしたアレッサンドロ・マエストリや、今年7月に信濃グランセローズから埼玉西武に移籍した小林宏がそうだ。

 独立リーグとしては、彼らと同様にプロとして認めてもらうことで、ドラフト入団ではなく移籍できる道をつくりたいと考えている。今回のIPBL設立は、こうした選手の立場を明確にするためにも、重要な意味をもつ。まずは任意団体ではつくことができなかった交渉のテーブルに、今後は法人格を得た団体として正式につくことから始まる。

 普及・発展へ。海外戦略の拡大

 また、IPBLの活動のひとつとして大きく掲げているのが、海外戦略の拡大だ。米国や南米の独立リーグとの業務提携や、東南・中東アジアやアフリカといった野球後進国における普及やスカウティング活動など、広範囲にわたる。鍵山会長は今後の方針についてこう語った。
「海外との業務提携はリーグ単位では以前から行なってきた。例えば米国では、今年はサンディエゴのサマーリーグを2球団、アイランドリーグが運営している。また、トライアウトもアイランドリーグとBCリーグとの提携事業として米国で行なってきた。しかし、これからはIPBLとして米球界との関係を深めていきたい。さらに、アジアでは今年の年末にシンガポールでトライアウトが予定されているので、そこにIPBLとしてスカウトを派遣する。(米国に次ぐ)世界で2番目に大きな受け皿として野球選手の発掘に努め、そこからNPBや米球界に送り出す中継点としての機能を果たしていきたい」

 こうした海外戦略は、独立リーグの存在意義や権利獲得にも大きな意味をもつ。レベルの差や選手枠の関係上、NPBが東南アジアや中東アジア、アフリカといった国々の選手と契約することは、現実的ではない。しかし、世界的な野球の普及・発展を考えた場合、経済的発展が目覚ましい東南アジアなどを抜きにすることはできない。鍵山会長は、アジアの現状をこう語る。

「ひと昔前までは、野球はお金がないとできないと言われ、アジアやアフリカの国々には敬遠されてきた。しかし、今では経済発展が目覚ましい国々も少なくない。またアメリカンスクールに通う子どもたちが野球を始めるケースも出てきている。そうした国々からひとりでもNPBに入る選手が出てくれば、野茂英雄がメジャーリーガーになったのと同様に、その国のヒーローとなる。ひいてはその国が日本野球の新しいマーケットにもなる。そして、世界的な野球の発展やビジネスにつながり、オリンピックの正式種目にもなる可能性も出てくる。こうした新しいマーケットの開拓も、独立リーグの役割のひとつかなと。とはいえ、我々だけでは難しいところもあるので、NPBと一緒になってやっていきたいと考えている」
 NPBとの協力を得ながら、独立リーグの存在価値を高めていくつもりだ。

 IPBLの設立は、日本球界における独立リーグの存在意義と価値を高め、権利を獲得する大きな一歩となりそうだ。しかし、鍵山、村山両代表が目指すのは、それだけではない。米国に次ぐ野球大国である日本が、世界における野球の普及・発展に寄与することで、マーケットを拡大し、さらなる発展を遂げることもIPBL設立の大きな柱となっている。10年前は「海のものとも山のものともわからなかった」独立リーグだが、日本球界に新たな風を吹き込む貴重な存在となりそうだ。