DH制のないセ・リーグでは、打力を買われて外国からやってきた“助っ人”にも、それ相応の守備力が要求される。その意味で、今回紹介する横浜DeNAのホセ・ロペスは攻守にこれといった穴のない“優良外国人”と言っていいだろう。

 

 

 そのロペスがさる5月16日、本拠地での中日戦でNPB新記録となる一塁手の連続守備機会無失策記録を達成した。その数、実に1517。本人によると、試合前まで記録の事は知らなかったらしい。

 

「知っていたらプレッシャーになっていたかもしれない」。無欲が新記録につながったようだ。

 

 守備の名手に送られるゴールデングラブ賞も巨人時代の2013年、DeNA時代の16、17、18年と既に4回受賞している。

 

 参考までに述べれば、過去3シーズンで同賞に輝いている外国人選手はロペスひとりだけである。

 

 DeNAには前身の大洋や横浜を含めて守備に定評のある外国人が多い印象がある。その代表格が72年から4年間大洋でプレーしたクリート・ボイヤーだ。

 

 ボイヤーはブレーブス時代の69年、三塁手でゴールドグラブ賞に選出されている守備のレジェンドだ。35歳で来日した時は、全盛期に比べるとやや肩も足も落ちていたが、それでもグラブさばきは絶品だった。

 

 大洋でボイヤーと三遊間コンビを組んだのが、ショートで8度のゴールデングラブ賞に輝く山下大輔である。ボイヤーとの息の合ったプレーは、川崎球場の売り物のひとつだった。

 

 山下の回想。「こちらのピッチャーが大きなカーブを武器とするサウスポーだったとしましょう。相手は右バッター。ショートの僕からはキャッチャーのサインが見えますがサードのボイヤーは見えない。そこで、あらかじめ“声のサイン”を決めておいて、カーブだったらボイヤーは三塁線に寄るんです。右バッターは引っ張りにかかるから、ライン際に打球が飛ぶケースが増える。こうしたコミュニケーションは、日頃からしっかりとっていました」

 

 三塁手がボイヤーなら二塁手はジョン・シピンだ。ゲッツーをとる際のファーストへの矢のようなスナップスローは、彼の代名詞でもあった。

 

 再び山下。「セカンドはどれだけゲッツーをとれるかで評価が決まる。その意味でもシピンは当時、ナンバーワンのセカンドだったと思います」

 

 98年、横浜が38年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した時には、ロバート・ローズという名二塁手がいた。打点王に2度輝くなど、その勝負強い打撃に定評のあったローズだが、守備も堅実で、この年にはゴールデングラブ賞に選出されている。

 

 守備のうまい選手は、バットだけの選手よりも長く現役を続けることができる。ロペスも35歳と決して若くはないが、彼をベンチに追いやるほどの選手は、まだ育っていない。

 

 欲をいえば、もう少し打率(2割4分4厘・6月16日現在)がほしいところである。

 

<この原稿は2019年6月16日号『サンデー毎日』に掲載されたもの一部再構成しています>

 


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