四国アイランドリーグplusは後期開幕までのインターバルを利用し、現在、選抜チームが北米に遠征中だ(7月8日まで)。今年、3年ぶりに復活した北米遠征にはIL4球団から計27選手が参加し、現地の独立リーグCan-Am Leagueの6球団と公式戦19試合を戦う。代表メンバーのひとりが愛媛マンダリンパイレーツの福田融司だ。昨季まで愛媛で正捕手を務めた福田は今季、投手転向というサプライズを演じた。前期終盤から実戦マウンドに上がり投手として急成長中の福田に渡米前に話を聞いた。

 

 ブルペン3000球の自信

 投手転向のきっかけは昨秋のフェニックスリーグでした。NPBの2軍相手に戦い、守備では2軍の選手と差はないと感じましたが、打撃に関しては……。1軍半の投手になると正直手を焼くこともあって、フェニックスリーグが終わった後、「このままキャッチャーではNPBに行けないかもな」と痛感し、どうしようかと悩んでいました。

 

 そのときに河原純一監督から「ピッチャーはどうだ? やってみるか」と言われ、「やります!」と即答しました。転向は自分自身でも考えていたことだったし、監督からもタイミングよく提案してもらったので即決でしたね。

 

 実際にピッチャーをやってみると当然、大変なことばかりでした。子供の頃から本格的な投手経験はないので、フォームなどいちからのスタートでした。足の上げ方、踏み出し方、トップの位置、さらにボールにきれいな回転を与えることなど、それこそ課題をひとつひとつ潰していく毎日でした。一番、大変だったのはコントロールですね。

 

 河原監督からは「絶対にフォアボールを出すな」と言われていましたし、ピッチャーとしてストライクをとることはスタート地点ですからね。キャッチャー時代、送球のコントロールには自信がありましたが、マウンドから投げるのは別物でした。最初は投げたいところに投げられず苦労の連続でしたよ。

 

 そんなときに正田樹さん(愛媛・投手)から「キャッチボールを大事にしろ」とアドバイスされたんです。ブルペンに入って投げるときには当然、コントロールを意識しますが、正田さんは「日々のキャッチボールから1球1球、コントロールを意識しろ」と。さらに正田さんはずっとキャッチボールの相手もしてくれて、正田さんの球は全部が僕のグラブを構えた胸の所にコントロールされていました。「ピッチャーのコントロールとはこういうものなのか」と驚き、それでキャッチボールの意識を変えてから、どんどんとコントロールもついてきました。

 

 初登板は5月11日の徳島戦でした。6点リードされた場面でしたが、ものすごく緊張したのを覚えています。2イニングをゼロに抑え、次の登板でも1イニングを無失点。でも、まだまだ打者相手に向かっていくよりも、自分のフォームを気にしてマウンドに立っている部分がありました。そうした迷いや不安がなくなったのは3試合目の登板、5月18日の香川戦です。

 

 8回裏途中、8対5と追い上げられた無死ニ、三塁でマウンドに上がりました。しびれるような場面ですが、だからこそ相手に向かっていくピッチングができました。フォームの不安を感じることもなく、グイグイと投げ込むことができて、結果、2安打1四球を許しましたが2イニング9人に投げて自責点ゼロ。10対7で勝ち、初セーブがつきました。

 

 この試合が"ピッチャー福田"にとって原点となった試合だと思っていて、前期の試合でも一番印象に残っています。監督からは好投しても抑えても決してほめられることはないんですが(笑)、「こういう球を投げろ」と、要求されるレベルが上がってきています。さらに大事な場面で起用されることも多くなったので、信頼されてきているのかな、と。そういう監督の気持ちも意気に感じてマウンドに上がっています。

 

 北米遠征の選抜メンバーに選ばれたことで、海外の選手を相手に自分の球がどこまで通用するのか楽しみですね。また他球団のピッチャーにも話を聞きたいし、選抜チームを率いる監督の養父鐵さんも投手出身なのでアドバイスをもらえたらと思っています。とにかく自分はまだまだ発展途上なので、何でも吸収して成長したいと思っています。今秋のドラフトで指名されるためにも、立ち止まってる時間はありませんから。

 

 香川で昨季までエースを務めていた秀伍さん(高島秀伍)はアイランドリーグに入って外野手から投手に転向しました。対戦していてすごいピッチャーだったんですが、その秀伍さんですらNPBのドラフトには指名されなかった。それを考えても僕なんてまだまだ、もっとレベルアップしないといけませんよね。球速も、コントロールも、球のキレもまだまだ磨きをかけたいです。

 

 ピッチャーに転向して走り込みの量は自然と増えました。試合を戦っていく中で肩の張りを感じることもありますが、肩のスタミナに関しては不安はありません。2月から5月まで、ブルペンで投げ込んだ3000球が自信になっています。後期はさらにチームの勝利に貢献できるように頑張りたいですね。ピッチャー転向したのは何よりもNPBに行くためです。愛媛での優勝と合わせて2つの夢が叶うと最高ですね。後期も愛媛と「ピッチャー福田」に変わらない応援をよろしくお願いします。

(編集部注・福田投手は現地時間16日、サセックスカウンティー・マイナーズとの試合で北米遠征初登板。7回から2イニングを投げ、マイナーズを無失点に抑えた。)

 

<福田融司(ふくだ・ゆうじ)プロフィール>
1994年11月14日、兵庫県出身。幼少期からキャッチボールで野球に親しみ、小学1年生で友人とともに地元の学童チームに入団し野球を始める。小5でキャッチャーに転向し、ヤングリーグのオール播磨で活躍。高校は須磨友が丘高に進学。卒業後、関西学生野球連盟の関西学院大野球部に入り、3年生でレギュラー捕手となった。17年、愛媛マンダリンパイレーツに入団。ルーキーながら28試合に出場し、打率2割6分2厘をマークした。18年シーズンはキャプテンを務め、同オフ、投手へ転向した。"デビューイヤー"の19年前期は9試合に投げ、1勝1敗2セーブ1ホールド、防御率0.56をマーク。身長188センチ、体重97キロ。右投右打。

 

(取材・文/SC編集部西崎)


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