久保建英の「使いすぎ」「頼りすぎ」に注意
久保建英に対する評価が上昇している。
東京五輪世代中心のメンバーで臨んでいるコパ・アメリカ。日本代表はグループリーグ初戦でチリ代表に0-4と完敗を喫した。
トップ下で先発した久保は後半20分、左サイドで味方とのワンツーを受けるとアルトゥーロ・ビダルのスライディングタックルをかわし、ドリブルからシュートに持ち込んでいる。ゴールに至らなかったものの、フィジカルで上回る相手に触らせなかったプレーは技術の高さを証明したと言える。
レアル・マドリードへの移籍も決まり、日に日に注目度も高まる。チリ戦では90分フル出場を果たしていることからも、森保一監督は攻撃のキーマンとして期待を寄せているのは明白だ。
しかし忘れてはいけないのは、彼がまだ18歳になったばかりであること。ブラジルでは長距離移動を強いられ、中2日、中3日でグループリーグを戦わなければならないことを考えると、「使いすぎ」「頼りすぎ」は避けたい。本人は「やれる」と思っていても、代表の重圧など見えない疲労はあるはず。森保監督は十分に理解していると思うが、ときにはストップを掛けることも必要である。第2戦のウルグアイ戦は控えスタートと予想を立てているメディアがあったが、筆者もそれでいいと思う。勝負どころで起用すればいい。
ふと中村俊輔から聞いた話を思い出した。
彼が18歳のルーキー時代、横浜F・マリノスで監督を務めたのがスペイン人のハビエル・アスカルゴルタだった。開幕2戦目から起用されたのだが、決まって途中交代を命じられたのが当時は納得がいかなかったという。
「最初は途中出場で入っていくことが多くて、そのうちに先発で起用されて。でもゴールとか、アシストとか結果を出しても決まって60分、70分で交代させられる。確かに体の線は細かったけど、自分としては体力がないってレッテルを貼られているみたいで納得がいかなかった。交代を告げられてベンチに座ると、明らかにぶすっとしていたし、今じゃ絶対に許されないけど、監督と握手をしないでロッカーに戻ったこともあった。でもそれに対してアスカルゴルタさんは何も言わなかった」
中村が海外でプレーしたころ、アスカルゴルタと一緒に食事をしたことがあった。ずっと気がかりだった途中交代の理由を聞いたという。
「アスカルゴルタさんは“壊したくなかったから”と言ってくれた。プレーのいいイメージのまま交代させて、こっちがもう少しやりたかったっていうメンタルのまま1週間、練習をやって、また試合でいいプレーをするようにする。いろんな意味はあるけど、(そのサイクルを)壊させたくなかったというのが一番の理由だと知った」
メンタル的にも大人になっていく途中。プロの世界に徐々に慣れさせ、いいイメージを壊さない。アスカルゴルタの配慮が、中村の急伸的な成長を呼び込んだと言える。
無論、この話をそのまま久保の起用に置き換えるつもりはない。
A代表のベストメンバーならそういった起用の配慮も考えられるが、東京五輪世代では中核を担う存在になりつつある。そのためには実戦を積んでいくことも大事だ。レアルに移籍したら五輪チームで合わせる時間など限られてしまうからだ。
とはいえ、「使いすぎ」「頼りすぎ」にならないように森保監督は少なからず配慮していくように思われる。
18歳の久保を「大人扱い」にしていくためには、それなりの事前準備が大切になる。