ベストメンバーを組めなかったことは何を意味するのか。

 現地時間6月14日から開幕するコパ・アメリカに、日本は東京五輪世代を中心にしたメンバーで臨むことになった。当初からの方針ではない。日本協会も、A代表と五輪代表監督を兼任する森保一監督もベストメンバーで臨みたかったという話を聞く。

 

 それはそうだろう。コパ・アメリカは100年以上の歴史を誇る南米大陸選手権で、ブラジルやアルゼンチンも本気度マックスになる。日本は1999年以来の出場となるが、1勝もできずにグループリーグ敗退に終わった。20年ぶりに参戦する今回の相手もチリ、ウルグアイ、エクアドルと難敵ばかりが揃っている。アウェーで、公式戦で、それも強豪との対戦となれば、貴重な経験を積む機会となる。

 

 問題は、AFC(アジアサッカー連盟)に属する日本はクラブに対する選手招集の強制力が働かないことだった。そのためクラブと個別交渉を続けたが、ほとんどが不調に終わったという話だ。

 

 今回、海外からは川島永嗣(ストラスブール)、植田直通(セルクル・ブルージュ)、板倉滉(フローニンゲン)、冨安健洋(シントトロイデン)、柴崎岳(ヘタフェ)、中島翔哉(アルドゥハイル)、中山雄太(ズヴォレ)、伊藤達哉(ハンブルガーSV)、岡崎慎司(レスター)が入った。いずれもクラブからの許可を受けての参加だ。Jリーグもリーグ戦の真っ只中であり、原則「各クラブ1人まで」(大分と広島は2人)の配慮が見える。

 

 ベストメンバーを組めなかったことは残念ではあるものの、東京五輪世代プラスA代表の海外組がどのような融合を見せるのかは非常に楽しみである。違った見方をすれば、オーバーエイジ(OA)の適任者を探す機会にもなる。融合に成功すれば、この中から呼ばれる可能性もあるということだ。

 

 今回のことを教訓としなければならない。

 というのも東京五輪も、クラブに対する強制力が働かないからだ。OAのみならず、U‐23世代も該当する。2014年のリオ五輪を思い出していただきたい。

 

 チームの中心の1人であった久保裕也は当時スイスのヤングボーイズに所属していた。本大会のメンバーに選出されたものの、同じポジションのチームメイトが負傷したためにクラブが派遣を拒否している。

 

 今回も同じようなことが起こり得るかもしれない。協会としては各クラブとのパイプを太くして、大会参加に対する協力を粘り強く求めていく必要があるだろう。

 

 たとえば18歳の誕生日を迎えて海外移籍が可能になった久保建英(FC東京)の周辺は大変騒がしくなっている。

 バルセロナ復帰の可能性のみならず、レアル・マドリードやパリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティなども交渉に乗り出しているなどと、メディアをにぎわせている。今夏の海外移籍はまず間違いないとみている関係者は多い。

 

 どのクラブに行こうとも、久保が順調に育っていけば東京五輪に欠かせない戦力になるだろう。契約の際には東京五輪メンバーに選ばれたら招集を認めるという事項を明文化して取りつけたいものだ。今夏、シントトロイデンから移籍しそうな冨安にも同じことが言える。A代表でも出場機会を増やしている彼が、守備の中心になるのは間違いない。次の移籍先に対して、しっかりと約束を取りつけておくべきだ。

 

 交渉力と準備力。

 金メダル獲得を目指す五輪代表を盛り立てていくには、技術委員会の関塚隆委員長はじめ協会全体で動いていかなければならない。


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