コパ・アメリカで株を上げた1人が、三好康児であった。

 東京五輪世代、攻撃の中心選手である彼が先発のチャンスを得たのがグループリーグ第2戦のウルグアイ戦(現地時間6月20日)。難敵相手に2ゴールを叩き出したのだ。

 

 1点目は前半25分。柴崎岳のロングパスを右サイドで受けた三好はドリブルで一気にゴール前へ。対峙するディエゴ・ラクサールに対してフェイントから再び仕掛けてニアを打ち抜いた。そして2点目は後半14分、左サイドを突破した杉岡大暉のクロスを相手GKが弾き、ゴール前に詰めていた三好が左足で押し込んだ。この試合のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に選ばれたのも納得のハイパフォーマンスだった。

 

 同世代でも海外組が増えている中、三好はJリーグでもまれて成長を遂げてきた。

 川崎フロンターレU‐18からトップチームに昇格し、昨季はミハイロ・ペトロヴィッチ監督率いるコンサドーレ札幌に期限付き移籍し、今季は同じく期限付きで横浜F・マリノスでプレーする。いずれも攻撃サッカーを志向するチームで己を磨いているところが面白い。

 

 今春、彼にインタビューする機会があった。それぞれのクラブで得たものが財産になっているのだと、十分に伝わってきた。

「(札幌では)動きにはある程度の制限があって、動きすぎないことが崩すうえで効果的でした。逆にF・マリノスではあまり制限がない。自分が(インサイドハーフの位置から)サイドに流れることもありますし、自分たちでアレンジしながらどう崩すかを考えていくサッカー。どっちが良い、悪いじゃなくて、いろんな崩し方ができるんだなっていうのは本当に面白いところです。もちろんフロンターレでの経験もあります。崩しに対していろんな正解があって、それを経験させてもらっているという感覚なんです」

 

 川崎ではサイドハーフ、札幌ではシャドー、そして横浜ではインサイドハーフ、ウイングと様々なポジションを経験してきた。これも三好の成長を後押ししている。

「過去にいろんな状況、ポジションを経験したことで、“こっちでも崩せるし、あっちでも崩せるな”という選択肢は増えています。ただ、自分だけ動いたって仕方がない。チームのやり方と味方の動きがあっての攻撃なので、そこは自分から合わせていかなければなりません。試合を重ねながら、チーム全体として(攻撃の)幅が広がっているなとは感じています」

 

 課題としてきたのがゴール数だ。

 昨季は札幌で活躍しながらも3得点どまり。今季は開幕戦のガンバ大阪戦(2月23日)で豪快なミドルシュートを決めたものの、5月18日のヴィッセル神戸戦で途中出場ながら2ゴールを挙げるまでに3カ月近く要した。

 

 ウルグアイ戦の鮮烈な2ゴールによって、ファンの見方も変わってくるはず。ポジションの問題はあるにせよ、コンスタントにゴールに絡んでいきたいところだ。

 

 来年は東京オリンピックが待っており、その先には2022年のカタールワールドカップも控えている。ここからギアを上げていく覚悟はできている。

 

 大きな大会をしっかりと見据える三好はこのように述べていた。

「東京オリンピックがある世代に生まれて、本当にラッキーだなと思います。F・マリノスで目指すものは当然ありますが、代表となると東京オリンピックが一番近くにある大会。目指すものの1つであることは間違いないし、出るチャンスがある以上は掴みたい。ただ、サッカーを始めたきっかけはワールドカップに出たいという思いからでした。ここが僕にとって一番の目標であり、夢です」

 

 ウルグアイ戦の2ゴールは、東京オリンピック、カタールワールドカップに向かう号砲となった。川崎、札幌、そして現在の横浜――。3つのクラブで刺激を受けてきたからこそ、今の、そしてこれからの三好康児がある。


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