第80回 SCスタッフの白球コラム「元祖ヘビー級打者が語る”体重と飛距離は比例する”」

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 目下、両リーグトップの27本塁打を放ちキング一直線、埼玉西武の山川穂高選手が今季、絶好調です。


 山川選手は14年、富士大からドラフト2位で西武に入団し、プロ入り4年目の2017年にブレークしました。78試合に出場して打率2割9分8厘、23本塁打。翌18年には全143試合に出場し、47本塁打。チームのリーグ優勝に貢献するとともに、初めてホームラン王のタイトルに輝きました。

 

 山川選手の打撃論はシンプルです。「ホームラン以外は失敗です」と言い切り、リーグ優勝後のインタビューでこう語りました。
「僕は、ほとんどの打席でホームランを狙います。年間500打席以上立つとして、チームのために右打ちをしたり、外野フライを狙うのは50打席くらい。残りの450打席は自分のための空間だと思っています」。

 

 さて、山川選手はホームランを打った後、ベンチ前で「どすこい」というシグネチャーポーズがおなじみです。身長176センチで体重108キロの体格に実に似合っています。西武には中村剛也選手といった、こちらも身長175センチ・体重102キロと重量級の先輩がいます。その他、千葉ロッテの井上晴哉選手も身長180センチ・体重114キロです。なぜ「重量級」選手がパ・リーグに多いのでしょうか? 巨人の元GMの鹿取義隆さんがこう語っています。

 

「アマチュア時代からホームランを打つバッター、飛距離のあるバッターは当然、どの球団にとっても魅力的です。ただし、セ・リーグの場合には”守備ができる”という前提条件がつきます。打てるけど守れない、これだとセ・リーグ球団は指名を躊躇します。その点、パ・リーグはDH制を採用しています。”打てるけど、守備の方は……”とスカウトから報告があっても、最終的には指名打者にすればいい、と判断できる。だからパ・リーグには中村や山川のような体型の選手が多いんですよ」

 

 元祖・重量級選手によるこんな証言も。「体重と飛距離は比例します」。発言の主は大久保博元さんです。水戸商時代に高校通算52本塁打を放ち、”水戸の怪童”の異名をとりました。85年、ドラフト1位で西武に入団。その後、トレードで巨人に移籍。身長180センチ・体重108キロ、愛称もそのまま「デーブ」が定着しました。大久保さんは現役時代をこう振り返りました。

 

「西武に入った当時、僕は広岡達朗監督に指示された玄米食のおかげで痩せていたんですよ。体重80キロ台とかだったんじゃないかな。でも痩せたら飛距離が完全に落ちました。守備や足では貢献できない僕は大きいのを打てなきゃ存在価値がない。慌てて体重を元に戻しましたよ。軸足に乗せた体重をそのままボールにぶつける。それが飛距離の源でした。自分がそうだから言うわけじゃないですけど、野球というのは”動けるデブ”なら商売になるスポーツなんですよ」

 

 のちに西武のコーチを務めた大久保さんは、中村選手にこうアドバイスしました。「ダイエット指令が出ても聞いたらダメだぞ」と。さらに大久保さんは中村選手に「飛距離アップ」の秘策も授けました。大久保さんがコーチに就任した07年オフ、中村選手は不振にあえいでいました。入団4年目の05年に22本塁打をマークしたものの、06年は9本、07年は7本と伸び悩んでいました。

 

 大久保さんは秋季キャンプで中村選手に、「サンペイ(首脳陣が呼ぶ中村選手の愛称)、左足の前で打て。今よりも2メートル前でボールを叩け!」とアドバイスしました。果たして、08年46本、09年48本と中村選手は2年連続でホームラン王に輝いたのです。

 

 走攻守、3拍子揃ったプレーヤーがもてはやされる時代ですが、個性派の「重量級」選手の活躍もプロ野球の華です。7月に行われるオールスターのファン投票の結果が発表され、山川選手はリーグ最多得票の42万2122票を得て、一塁手として選出されました。山川選手が主役を務める”花火大会”が今から楽しみです。

 

(文・まとめ/SC編集部 西崎)

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