四国アイランドリーグplusは後期が始まり、香川オリーブガイナーズは上々のスタートを切りました。インターバルの間に各選手が目的意識を持って練習に取り組んだ成果もあるのでしょう。ミスも少なくいい試合ができています。

 

 甲子園の魔力

 目下6勝1敗1分(7月30日現在)と好調の香川ですが後期開幕前はクリスが愛媛へ移籍し、妹尾克哉が米独立リーグへ派遣されるなど、攻撃陣に穴が開いた不安がありました。ですが、今のところ中村道大郎キャプテンを中心にしてチーム一丸、いい戦いを見せています。

 

 特に練習生から上がってきた嶋村悠斗がいい働きをいています。ショートで起用していますが守備が非常に良く、センターラインが固まりました。彼は打撃よりも守備が持ち味。打つ方はたまにヒットを打ってくれればいいと、こちらも開き直って起用していますが、期待以上の活躍ですね。あとは若原翔平も長打力を発揮しているし、外野では宋皞均が好調で張り切っています。宋は出塁率が良いので2番に起用していますが、これもうまくハマっていますね。

 

 もともと安定していた投手陣に不安はありません。ただ後期は暑さの中で行われるゲームがほとんどなので、継投でしのぐことになります。長いイニングを投げさせるのは森崎友星くらいで、あとはつないでいきます。そういう状況で又吉亮文、石田啓介がコントロールも良く、大崩れしないのが頼もしいですね。

 

 選手の数も少なく、穴が開いたらやりくりして埋めるしかない。これが独立リーグの戦い方で、今のところそれがうまくいっています。長い監督経験から8月にもうひと山あるのは分かっていますが、優勝には投手力を含めたディフェンス面が決め手になるので、その点で「なんとかなるだろう」と思っています。

 

 この時期、やはり気になるのは夏の甲子園です。香川県は高松商が23年ぶりに切符を手にしました。古豪だけあって県内にOBも多く、古くからのファンも多い。例年以上に香川は"熱い夏"になりそうです。まあこれは香川に限らずどの都道府県もそうでしょう。同級生や仲間と一丸になって甲子園を目指し、それをOB、ファンが後押しして地域に勢いと熱気を呼び込む。高校野球、特に甲子園というのは日本独特の文化です。

 

 だからこそ大船渡高(岩手)の佐々木朗希投手の決勝登板回避もこれだけ賛否両論、大きな話題になったのでしょう。これは監督、選手本人、ナインが話し合って決めたことでしょうから、その判断について外野がとやかく言うことではありません。ただ、個人的には「甲子園で見たかった」というのが正直なところです。そういう人は多いと思いますよ。そのためにはやはり大会日程をもうちょっとうまく組めないものか、と思います。佐々木君もせめて準決勝の後に中1日あれば、決勝で登板していたでしょうから。

 

 甲子園というのは不思議な場所なんです。出場すると本当に人間が変わるし、視野も考え方もそれまでとは大きく変化します。甲子園に出たことでプロに行こうと思う子もいれば、推薦で大学に行ける子も出てくるし、さらにそこをケジメとして野球を辞める子もいる。まあ、中には出場したことに浮かれてしくじるヤツもいますが(笑)、それも含めて甲子園なんですよ。だから佐々木君が甲子園でどう投げ、そしてどう成長するかが見たかった。佐々木君だけでなく大船渡高のナインも甲子園に出ていたらどう変わったんだろう……そんなことをつい思ってしまいました。

 

 私自身のことを振り返れば、今から41年前の1978年、大阪府大会を勝ち上がり、甲子園に出場。そして決勝まで進み、PL学園を初優勝に導きました。大阪府大会で8試合、そして甲子園が5試合。よく「オレはあの夏、13試合に投げた」などと言ってましたが、今思えば、よう投げたな、と(笑)。不思議ですよ、そう大きくない体で最後までよくまあ投げられたなと思います。練習してきたことの自信や、チームメイトの存在、PLの教えなどいろいろなものが支えになって達成できたんでしょうね。ホンマ、よう投げましたわ。西田の七不思議のひとつですよ(笑)。まあ自分がやったからといって、今の時代に「同じことをやれ」とは言えませんけどね。

 

 後期優勝を目指してまだまだ戦いは続きます。猛暑が続きますがアイランドリーグでは試合中に給水タイムを設けるなど熱中症予防に取り組んでいます。球場に足を運ぶファンの皆さんも水分補給をしっかりしながら、香川オリーブガイナーズへの熱い応援をよろしくお願いします。

 

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