四国アイランドリーグplusは猛暑の中、四国4県で激闘を繰り広げている。後期、雪辱に燃える香川オリーブガイナーズにおいてアイランドリーグ5年目の外野手・白方克弥の躍動が目につく。後期に入りシーズン2本目のホームランを放つなど長打力にも磨きがかかり、チームの主軸を任される。インターバルには北米遠征でハングリーな野球にも触れた。様々なことを吸収し、日々成長中の白方に話を聞いた。

 

  「生涯野球漬け」

 後期が始まるまでのインターバルでアイランドリーグ選抜として北米遠征に行ってきました。その間にクリスが愛媛マンダリンパイレーツへ移籍し、妹尾克哉が北米の独立リーグチームに派遣されるなどメンバーの入れ替わりがありました。

 

 クリス、妹尾は攻撃の軸だったこともあり、「どうなるんかなぁ」という気持ちで遠征を終え、チームに合流。そこで全体練習などをこなして後期が始まると心配したような穴もなく、まあまあ良い感じでスタートすることができました。若原翔平、嶋村悠斗といった代わりのメンバーが経験の少ない中でもよくやってくれています。まだまだチームとして伸びしろも課題もあるので、後期の残り試合は気を引き締めて戦っていきたいですね。

 

 北米遠征は約1カ月半、知らない土地で野球漬けという日々でした。行く前は移動の大変さや環境の過酷さなどを心配していましたが、まあ移動は確かに大変でしたが、その中できちんと体のケアをすることでカバーできました。

 

 向こうの選手はレベルが高く、150キロをマークするピッチャーもいたし、それぞれがフォームも決め球もタイプが異なり、いろいろな経験ができました。北米遠征の効果なのか後期は今までよりもバットが振れている印象です。ほとんど当てにいくことがなく、常に自分のタイミングでしっかりと振っている外国人選手を目の当たりしたことと、あとは選抜の他球団の選手に聞いたことが役立っているんでしょうね。徳島の平間隼人選手は僕とはタイプの違うバッターですが、追い込まれた後のバッティングについて教えられることがありました。北米遠征で自分の中にある野球の引き出しがたくさん増えましたね。

 

 僕は小学校に上がる前からリトルリーグに混じって野球をやっていて、小学生になってから正式に入団。そこから今までずっと野球を続けています。実は中学生まではピッチャーだったんですよ。リトル、ボーイズまでは。でも同級生に安樂智大(東北楽天)がいて、何度か対戦するうちに「自分は安樂ほどの速い球は投げれん。ならバッターに専念して勝負しよう」と、それで野手へ転向しました。高校は名門・松山商高に進み、甲子園出場は果たせませんでしたが、進路を考えたときに「もっと野球を続けたい」とアイランドリーグの愛媛へ進みました。

 

 愛媛では高いレベルで野球をしていた選手や、それこそNPB経験者もいて、いろいろと話しを聞いていくうちに、自分の野球が進化しているのがわかりました。そうなると自分がどこまでできるのか、野球を極めてみたいと思うようになり、まあ、おこがましいですけどイチロー選手と同じようなことを思ったわけです。だって、僕は170センチそこそこでパワーもそんなにないんですが、それでもホームランが打てます。そのコツをたとえば野球教室で小さい子に伝えたりしたいんですよ。

 

 ずっと野球をやってきてそこで得た知識は僕だけのものじゃなくて、みんなのものだと思っています。将来、指導者になったときに子供たちの可能性を引き出すために使いたいし、そのためにもまだまだ知識、引き出しを増やしたいですね。幸い、頑丈なのか大きなケガをしたこともなく、まだまだ現役を続けられそうです。自分がNPBに行くという夢もありますが、それ以上に野球をもっともっと知りたいですね。

 

 17年のオフ、愛媛を自由契約になって香川へ移籍したのは、新しい環境を求めた僕のわがままを球団に聞いてもらったおかげです。生まれてからずっと愛媛にいたので、マンダリンパイレーツならとてもいい環境で野球ができます。でも、親元を離れて、知らない土地に行って野球をしたらどうなるんだろう。そういう好奇心が湧いてきたんです。香川に来てからも新しく学ぶことが多く、毎日が充実しています。

 

 本当、物心ついてからずっと野球漬けなんですが、まったく飽きないですね。自分でプレーするのはもちろん、テレビでプロ野球選手のドキュメンタリーなどをやっていたら必ずチェックします。何か気づくことや、得るものがあると思っていますので。まあすぐ自分に役立つ知識じゃなくても、将来誰かのために使えるかもしれませんからね。

 

 そういえば僕は小学1年生からリトルリーグで硬式球を使って野球をやってきました。世間一般では小さい子供に硬式球を投げさせるのはケガの原因になる、という説もありますが、僕は一切、どこを痛めたことがありません。正しい指導をしていただいたこと、そして正しいフォームで投げていたこと。それらを守れば硬式球だから故障するということはない、これは僕自身が証明しています。そうしたことも伝えていきたいですね。

 

 さて香川は昨季、日本一になれなかった悔しさがあります。愛媛時代に日本一の経験があるので、またあの喜びを香川のメンバーで味わいたいですね。首位とのゲーム差はそう離れていないので、全員で勝ちにこだわって戦っていきます。後期の残りの試合もオリーブガイナーズへの応援をよろしくお願いします。

 

<白方克弥(しらかた・かつや)プロフィール>
1996年5月28日、愛媛県出身。小学1年生からリトルリーグに入団し、以後、硬式球一筋の野球人生。ボーイズリーグに入った中学生時代まではピッチャー。松山商(愛媛)へ進学後、本格的に野手に転向。高3夏は県大会2回戦で敗れて甲子園出場は果たせず。2015年、愛媛マンダリンパイレーツに入団。3年間、レギュラーとして活躍し、17年オフ、自由契約となり香川オリーブガイナーズへ移籍。香川でもレギュラー外野手として主に3番を任される。18年前期は打率3割4分6厘、同後期2割9分1厘。今季も前期で2割9分4厘の成績を残し、北米選抜にも選ばれた。身長171センチ、体重83キロ。右投左打。

 

(取材・文/SC編集部西崎)


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