四国アイランドリーグplusは後期の戦いを終え、ポストシーズンを迎える。惜しくも優勝を逃した高知ファイティングドッグスにあって、輝きを放ったのが首位打者を獲得したルーキーの洸佑だ。大阪桐蔭で甲子園春夏連覇、大学時代には明治神宮野球大会に出場と数々の大舞台を経験。「もっと上を目指したい」と四国ILの門を叩いた洸佑にルーキーイヤーとNPBへの思いを聞いた。

 

 「同級生に負けたくない」

 今年からアイランドリーグ高知に入り、最初はそのレベルの高さに驚くとともに、バッティングではうまくいかないことも多く、結果も出ませんでした。月ごとの成績を振り返ると4月は打率1割台と全然ですよね。でも駒田徳広監督や本田明浩コーチからいろいろとアドバイスをいただき、監督からは「コンパクトに振れ」ということを常に言われました。

 

 なかなか言われたとおりのスイングはできなかったんですが、練習から「コンパクト」を心がけてコツコツと取り組んでいるうちに、監督のアドバイスが実ってきました。試合でヒットも出るようになり、そこからは好調を維持できました。特にスイングやフォームで何が変わったというのはありませんが、とにかく監督の言葉を忘れないように意識してバットを振れるようになったのが良かったのだと思います。

 

 おかげさまで前期は5・6月度の月間MVPに輝き、さらに後期は前期と比べても長打が増えました。教えられたことが自分のものになっている実感はあります。ただ、まだまだ納得できないスイングもあるし、投手を攻略できていない部分もあります。そこが課題ですね。

 

 社会人野球のバイタルネットから高知に入り、アマチュア時代よりもレベルの高い野球に触れられて、毎日学ぶことばかりで充実した日々を送っています。ここ(高知)に来たのはNPBに入るためです。支配下でも育成でもどんな形でもいいからNPBに行きたくて、その近道として選びました。アイランドリーグのことは、兄(髙井啓行)が過去にプレーしていて(2007年高知に在籍)、弟(悠生)が以前は愛媛マンダリンパイレーツ、そして現在は高知にいるので、よく知っていました。NPBへの近道というイメージですね。

 

 まだまだ全体的に足りないことだらけだと思いますが、でもNPBでやれると思っています。ソフトバンク3軍などNPB球団との対戦で、実力として負けていないと思いました。彼らからヒットを打つ中で自信もつき、遠い場所じゃないな、と思っています。まあ、まだNPBに入ってもないから大きなことは言えませんが、でもやれる自信はあります。

 

 うちは野球一家で父や兄の影響で物心がついたときには野球をやっていました。学童野球から中学時代はボーイズリーグに進み、高校は大阪桐蔭でした。同級生は阪神の藤浪晋太郎です。ベンチメンバーとして甲子園春夏連覇を体験し、代打や代走でも出場し、とてもすごい経験だったと今も思っています。あれだけの大観衆の前で野球をするというのは、本当にそれまでにしたことがありません。

 

 僕は大舞台に縁があるんですよ。甲子園もそうだし、大学時代(中部学院大学)は明治神宮野球大会にも出場しました。大学から社会人に進んだのも「都市対抗」という舞台に憧れていたからです。NPBでも大舞台で野球をしてみたい、もう一度、あの感動を味わってみたい、というのもNPB行きにこだわる理由のひとつかもしれません。社会人を経てアイランドリーグに入り、ここまで野球を続けているのは野球への衰えない情熱と、高校や大学で身近にいた人間がNPBで活躍しているので、彼らに負けたくないという思いもあるからです。高校は藤浪、大学の同級生は床田寛樹(広島)がいますからね。どんな形でもNPBへ行って、同じ舞台に立ち、そして対戦したいと思っています。

 

 高知に入って、指導者にもチームメイトにも恵まれました。能力のある選手が多く、レギュラー争いも厳しい環境です。その中でしのぎを削ったことで、1年目から成長できたと思っています。またファンの人たちの声援も心強く感じました。これからも高知ファイティングドッグスへの応援をよろしくお願いします。

 

 

<洸佑(こうすけ)プロフィール>
本名・髙井洸佑。1994年10月28日、岐阜県出身。父と兄の影響で幼少期から野球を始め、小学校入学と同時に学童チームに入団。ポジションはバッテリーを務めた。中学時代は岐阜レッズボーイズ(現・岐阜青山ボーイズ)に所属。強打の内野手として鳴らし、全国大会にも出場した。高校は強豪・大阪桐蔭へ進み、3年時はベンチメンバーとして甲子園春夏連覇を経験。同級生に藤浪晋太郎(阪神)がいた。卒業後、中部学院大学へ進学。外野と一塁を守り、4年春に打点王とベストナイン(外野手)、秋は一塁手でベストナインに輝いた。大学同期に床田寛樹(広島)。卒業後、社会人野球のバイタルネットを経て、19年、高知ファイティングドッグスへ入団。開幕当初は不調も、5月から打撃開眼。前期終了時点でリーグトップの打率3割1分1厘をマークし、5・6月度月間MVPを受賞した。後期も好調を維持し、3割2分6厘で首位打者に輝く。身長174センチ・体重76キロ。右投左打。同じ高知でプレーする髙井悠生は実弟。

 

(取材・文/SC編集部西崎)


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