森保ジャパンの海外組が拡大している。

 

 今回の親善試合パラグアイ戦(5日、カシマスタジアム)、カタールW杯2アジア次予選ミャンマー戦(10日、アウェー)に選ばれた日本代表メンバー23人のうち、今夏Jリーグから欧州の地に渡ったシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台→シントトロイデン)、安西幸輝(鹿島アントラーズ→ポルティモネンセ)、久保建英(FC東京→レアル・マドリード※マジョルカへ期限付き移籍)の3人が名を連ねた。

 

 海外でプレーする日本代表選手は、大きな負担が伴う。

 

 それは長距離移動、時差調整のコンディション管理だ。今回のA代表であれば帰国して数日後にパラグアイ戦をこなし、高温多湿のミャンマーに移動して試合を行ってから所属先に戻るハードなスケジュールになる。所属チームに戻れば激しいレギュラー争いが待っている。出場機会を得て活躍していかなければ、代表に呼ばれない可能性も出てくる。つまりチームでも代表でも活躍できるように、心身のコンディションを整えていかなければならない。

 

 18歳の久保も、その試練に打ち勝たなければならない。チームと代表の両立を図らなければ、激しいA代表の生存競争で生き抜くことはできない。

 

 どうやってタフに乗り切っていくか。

 

 参考にすべきは日本代表の先輩たちだ。10年以上前は代表の活動が多く、1年に何度も日本と往復しなければならなかった。2010年の南アフリカワールドカップを最後に日本代表を引退した中村俊輔(横浜FC)は独自の調整法についてこう語っている。

 

<自分の場合は日本に戻った初日の練習は昼寝をしないで眠い状態のままやる。体が重く感じても、そうしたほうが後々、状態が良くなる。でも、フィジカルよりも気を配ったのはメンタル。メンタルが萎えて疲労感が強いと体は動かない。代表に合流するために飛行機に乗った時点で気持ちを切り替えていた。日本に到着したらどう時間を使って、どう試合に備えるかイメージを膨らませておく。そうすることで集中力を持続させて、モチベーションを高めるように心がけた。

 

 代表に合流する前の試合→代表戦→クラブに戻って一発目の試合――この3、4試合くらいを一区切りにして考えるようにした。戻ってすぐの試合でパフォーマンスが悪かったら、クラブの監督に「日本に戻すことはリスクがある」と思われてしまうから>

(中村俊輔 二宮寿朗 著「中村俊輔 サッカー覚書」文藝春秋)

 

 彼はレッジーナ、セルティック、エスパニョールという3つの海外クラブで、代表と両立を図った。欧州の選手は代表の活動と言っても欧州間の移動のため、そこまで大きな負担はない。東アジアに位置する日本は違う。しかしこのマイナス要素を弾き飛ばしてこそ、「名選手」の道があると言っていい。

 

 中村が言うように、大切なのはメンタルだということ。メンタルが萎えないための工夫、自分に合ったサイクルを各々が見つけていく必要がある。

 

 代表前後の所属クラブでの試合と代表戦をセットにするとの考え方も、今の海外組にとっては非常に参考になるのではないか。

 

 代表戦だからと言って無理に頑張ってしまうと、所属クラブに戻ってからそのツケが回ってくるかもしれない。あくまで「両立」する術を持っておかなければならない。

 

 海外組になって経験の浅い選手たちもいる。せっかくの機会だ。キャプテンを務める吉田麻也(サウサンプトン)や最年長の川島永嗣(ストラスブール)らにアドバイスをもらってもいい。

 

 新海外組には、もうひとつの戦いが待っている。


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