9月の代表2連戦から見えてきたものがいくつかある。

 

 森保一監督はマジョルカでプレーする18歳の久保建英を、ジョーカーとしてテストした。5日のパラグアイ戦は2-0とリードの後半開始から投入し、久保はチーム最多となる5本のシュートを放っている。結果を残したいという強い気持ちは伝わってきたものの、指揮官は試合後の会見で「守備の部分でまだまだ強さは足りない」と苦言も忘れていない。10日に行われたカタールW杯アジア2次予選のアウェー、ミャンマー戦でも2-0とリードを守ったまま、後半36分にピッチに送り込んでいる。追加点を取る狙いはあるにせよ、失点してしまったらいくら格下相手とはいえアウェーでは何が起こるか分からない。久保に守備力を求めたのは、こういった点を踏まえてのことだろう。

 

 久保が「真のA代表」として扱われ始めたということだ。

 

 6月の親善試合、南米選手権でパフォーマンスを受け、森保監督は現時点でのベストメンバーをそろえた。アジア予選の初戦で敢えてベストメンバーを編成したのは日本代表に対する帰属意識を高め、W杯予選の厳しい戦いに対する覚悟を求めるためだと解釈している。

 

 マジョルカに移籍したばかりの久保を招集したことに、疑問の声もある。なるべく早く新チームの環境に慣れさせ、ポジション争いに専念させるのであれば確かに招集しないという選択肢はあった。長距離移動や時差調整は大きな負担となる。ましてや今回は高温多湿のミャンマーでのアウェーマッチを挟むのだから。

 

 それでも久保は森保監督から必要とされた。心身両面でヤワではないと南米の地で自ら証明したからこそ、だ。

 

 森保監督はベテランや経験豊富な選手に対してはローテーションの配慮を示してきた。しかし若手に関しては継続して代表に呼び続けている。東京五輪世代で言えば堂安律、冨安健洋がそうだ。所属クラブと代表で両立を図ってきた彼らは、ステップアップにつなげることができた。堂安はPSV、そして冨安はボローニャに。ひとつ上のステージでの両立を、今度は求められることになるのだ。

 

 久保もこのサイクルに入ってくるに違いない。招集に拘束力を持つ国際Aマッチデーでは、彼らとともに常連となってくるだろう。もちろんマジョルカで出場機会を得られない状況だと話は別だが。

 

 ティーンエイジはグンと才能を伸ばせる時期でもある。両立を求める指揮官のタフな要求は成長期と合致すれば、爆発的な成長を呼び込む可能性があるということ。久保からしてもA代表とマジョルカでの両立は望むところだろう。

 

 9月の2連戦における起用法を見ても、今後も攻撃のアクセントをつけるジョーカーの役割を与えると見ていいだろう。ギラギラ感あふれる強気なプレーは、パラグアイ戦を見てもチームを活性化させる効果が感じられた。

 

 現在の森保ジャパンのなかでジョーカー候補は、スピードタイプの伊東純也(ゲンク)、フィジカル能力の高い鈴木武蔵(コンサドーレ札幌)らといったところか。テクニックがある久保はまた違う特色があるだけに、相手や戦術によって指揮官としては手元に置いておきたい重要な切り札となるだろう。

 

 もちろん先発で結果を残せれば一番いいが、A代表における久保の序列は下のほうからスタートしている。かつて本田圭佑も途中出場で結果を残していきながら、自分の地位を上げていった。久保もゴールやアシストといった分かりやすい結果、そして守備やオフザボールでの隠れた貢献も両方、求められていくことになる。

 

 パラグアイ戦後の記者会見で森保監督はこう述べてもいる。

「6月はトップ下でプレーすることが多かったが、きょうはサイドに出たときにどういうプレーができるかというところで、攻撃では起点となっていい部分を出せていたと思うし、周りをうまく使うことができていた。オプションのひとつになるプレーを見せてくれた。相手にチャレンジしていく部分は続けてトライしてもらいたい」

 

 10月にもモンゴル戦(10日、埼玉スタジアム)、タジキスタン戦(15日、アウェー)とアジア2次予選2連戦が待っている。久保がひとつレベルアップした姿を見せることができるのかどうか。期待されているからこそ、森保監督の要求は高い。


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