二宮清純: 今回のゲストは新日鐵釜石のV7の立役者であり、ラグビー界のレジェンドとして知られる松尾雄治さんです。元日本代表キャプテンでもあります。雲海酒造の『木挽BLUE』を飲みながら、ラグビーについてお話をうかがいます。今回の対談場所は松尾さんが経営する東京・西麻布にあるリビングというバーです。

松尾雄治: そうそう、ちょうど今月でオープンして6年になるんだよ。この店は我が家のようなもの。いつまでとは決めていないけど、お客さんが喜んでくれる限りはやりたいね。僕、みんなとワイワイやるのが好きなんだよ。

 

 

 

 

 

 

二宮: 私も時々お邪魔させてもらっていますが、ここでは分け隔てなく、いろいろな人とお酒を飲めるので、楽しいです。松尾さんの人柄でしょうか。

松尾: そうだね(笑)。僕はお客さんがどんなに偉い人だろうとフィフティー・フィフティーだと思っている。どれだけお金を出すと言っても、定価以上のものはとりません。その代わり、精神的にはフィフティー・フィフティーですよ、と。

 

二宮: まさにノーサイドの精神ですね。会員制のバーですが、とてもリーズナブルですから。

松尾: いや、やっていけるかどうかギリギリの値段だよ(笑)。

 

二宮: では6周年を祝って乾杯! お味は?

松尾:  『木挽BLUE』は前にも飲んだことがあるけどスッキリしているね。飲み心地がいいよ。僕はそんなに強くないんだけど、これはスイスイいけるんだよね。人気があるって聞いたけど、わかる気がするな。

 

 日本代表の誇り

 

二宮: アジア初開催のW杯日本大会の開幕まであと少しです。ラグビーのW杯がスタートしたのは1987年ですから、松尾さんが現役を引退されてからです。W杯にはどんな印象をお持ちですか?

松尾: あんまりピンとこないというのが正直なところだね。我々の時代は、ラグビーは1位、2位とランク付けをするようなスポーツではない、と教わってきたからね。

 

二宮: 松尾さんが代表入りしたのは明治大学3年生の時です。日の丸の重みは?

松尾: それは、あったね。桜のジャージを着るというのは誇りでした。代表ジャージは今も宝物です。

 

二宮: タンスにしまっている?

松尾: もちろん。相手チームとジャージ交換をしたものもありますが、24枚全部、大事にとっています。

 

二宮: 日本ラグビーフットボール協会は、今回のW杯日本大会で優勝した場合、選手・スタッフ1人につき500万円の報奨金を設定しました。ベスト4なら300万円、目標としているベスト8入りを達成できれば100万円です。松尾さんの時代は?

松尾: 何もないですよ。ゼロですよ、ゼロ。

 

二宮: 交通費も?

松尾: 交通費は決まった額だけ支給されました。例えば長野の菅平で合宿があった場合、東京-上田間の電車賃、そして上田駅から菅平までのバス運賃は出ました。ただし、急行電車に乗りたい時は自腹。そんな時代だったよ。でも、それが当然だと思っていたね。

 

 ヘタクソなオールブラックス

 

二宮: 日本代表キャプテンになったのは、いつですか?

松尾: 1982 年、僕がキャプテンの時に、平尾誠二を代表に呼んだんだ。ラグビーにおけるキャプテンは大事だよ。監督がどんな指示を出そうとも、最後に決めるのはキャプテンだからね。イングランド大会のリーチ・マイケルがそうじゃない。最後の場面、エディ・ジョーンズの指示はショットだったけど、リーチはあそこで南アフリカに勝つことを選んだからね。あれは本当に感動的だったよ。

 

二宮: 松尾さんが海外で印象に残っている試合は?

松尾: どれと選べないくらいたくさん残っていますよ。バックスだけなら日本人は当時も上手かった。ただフォワードは圧倒的な力の差を見せつけられていた。だいたいボール支配率は3:7。相手が7割は攻めている。残りの3割をどう得点に結び付けられるか、それがカギだったね。

 

二宮: 今はフォワードも強化され、スクラムも押し負けません。スタンドオフ松尾としては、今のフォワードでやりたいでしょう?

松尾: アハハハ、それはどうかわからないね。今と昔じゃ、同じラグビーでも全然違うから。僕らの時代、外国人に対しては、いかにタックルをかわすかに主眼が置かれていた。でも今はバンバン身体をぶつけ、フェーズを重ねるのが主流だからね。とても同じラグビーとは思えないよ。

 

二宮: 84年には世界選抜にも選ばれています。

松尾: オールブラックスとも試合をしたよ。グラント・フォックスという評判のスタンドオフがいたけど、彼はヘタクソだったね。ただし、キックの精度はすごかった。でも僕がボールを持ったら、スイスイ抜けてしまう。他の選手に「おいフォックス、オマエ何やってるんだ」と怒られていましたよ、アハハハ。

 

 ボールへの慣れ

 

二宮: 他にはどんな日本人がいましたか。世界選抜の中に。

松尾: のちにプロレスラーに転身した阿修羅・原(本名:原進)さんが最初ですよ、確か。あの人は人に強かったね。タックルも強烈だったし、ボールを持って突進するパワーもすごかった。

 

二宮: プロレスラーになった時は驚きました。あの原進がと。

松尾: あれにはびっくりした。ラグビー時代より、もうひと回り体が大きくなっていたからね。そういえば、海外にはプロレスラーのような選手がたくさんいたよ。ある医者に「オールブラックスの選手にぶつかったら死ぬぞ」と忠告されたこともあります。「なんでですか?」と聞くと「内臓破裂だ」って。そんなこと言われたら、怖くって正面からタックル行けないよね(笑)。

 

二宮: でも松尾さんはシュルシュルッとタックルをかわすのが上手かった。

松尾: あれにはコツがあるの。インパクトの瞬間、半身に構えるんです。相手のタックルに対し、正面から受け止めたら弾き飛ばされてしまう。それは愚の骨頂です。

 

二宮: 海外の選手と戦ってみて感じたことは?

松尾: 彼らは身体を当てられた後がうまい。ボールコントロールが巧みなんだ。強豪国の選手たちは子供の頃からボールに慣れ親しんでいる。それが日本人との差だったね、当時は。

 

二宮: 日本は土、海外は芝という時代です。その影響もあったのでは?

松尾: 確かにそれは大きかったね。彼らは地面に寝ることに対し抵抗感がない。ところが日本の場合、小石が混じった土のグラウンドばかりだから、擦り剥いてしまってもう痛いのなんの(笑)。消毒のためにヨウチン(ヨードチンキ)をつけなきゃいけない。あれをつけると患部がヒリヒリするんだ。大学では、4年生が1年生にうちわであおがせていたよ。うちわが傷口に当たると、「テメー、このやろう!」って怒っている人もいましたよ(笑)。

 

二宮: アハハハ。さてお話はまだまだ尽きませんが、ここで一旦ハーフタイムということにしましょう。後半は新日鐵釜石時代話を中心にうかがいます。

松尾: わかりました。それでは、おかわりを。これ、本当に飲みやすいね。ウチはシャンパンやワインを飲む人が多いけど、これはオススメだね。まだまだ付き合いますよ(笑)。

 

(後編につづく)

 

松尾雄治(まつお・ゆうじ)プロフィール>

1954年1月29 日、東京都生まれ。小学生の時からラグビーを始める。成城学園中・高と進学。高校1年時、ラグビーの名門校だった目黒高(現・目黒学院)に転校。2、3年時には全国大会に出場した。明治大に進学後、3年時にスクラムハーフからスタンドオフに転向。4年時には大学選手権、日本選手権を制した。76年に新日鉄釜石入り。78年度から84年度までの社会人選手権、日本選手権7連覇に貢献。82年からは同チームの監督も兼任した。日本代表キャップ数は24。司令塔として数々の名場面を演出し、「ミスター・ラグビー」と呼ばれた。85年の現役引退後はスポーツキャスターに転身。現在は、講演活動のほか、ラジオパーソナリティーなど、幅広いジャンルで活躍。ラグビーの普及、競技者の育成にも努めている。

 

(対談構成・写真/杉浦泰介)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、松尾さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>
リビング
東京都港区西麻布4−22−10
TEL. 03-3498-0323

 

☆プレゼント☆

 松尾雄治さんの直筆サイン色紙を「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「松尾雄治さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーの感想をお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は19年10月10日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、松尾雄治さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。


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