日本代表の大半を海外組が占めるようになった時代、どうも国内組の肩身が狭い。前回9月のメンバーは23人中、国内組はわずか4人(畠中槙之輔、橋本拳人、永井謙佑、鈴木武蔵)にとどまった。先発に食い込んだのは橋本だけである。
海外でプレーする選手が増加していくなか、国内組の踏ん張りにも期待したい。そこで代表に食い込んでいく可能性のある2人のアタッカーを紹介したい。
1人はヴィッセル神戸の24歳、古橋亨梧だ。
中央大卒業後にFC岐阜を経て、昨夏に神戸に移籍を果たしたが“伸び率”が半端ない。アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャというビッグネームとともに攻撃の絶妙なハーモニーを奏でるには欠かせない存在となっている。
先日、等々力競技場での川崎フロンターレ戦(9月28日)を取材したが、神戸のカウンターによる先制点は見事だった。自陣で相手の縦パスを防いでボールを回収すると、古橋はすぐさま右サイドの裏のスペースに出てパスを呼び込む。マークをかわして中にドリブルし、ファーにフリーで走り込んできたビジャにラストパスを送り、アシストを記録した。
このシーンばかりではない。徹頭徹尾、プレスバックを怠らずにビジャやイニエスタを守備で助けた働きも大きかった。スピードのみならずスタミナもある。判断力もいい。ビッグネームに鍛えられているとあって成長著しく、いつ代表に呼ばれてもおかしくない。
ここまで8得点を挙げている(9月28日時点)なかで、特にインパクトがあったのが8月10日、アウェーの大分トリニータ戦だった。ドリブルでペナルティーエリアに侵入を試みるイニエスタの動きを見て、相手を背負ってパスを受けての鋭いターンから右足を振り切った。判断も技術も素晴らしかった。守備と運動量でも貢献しており、エネルギッシュなプレーが止まらないのは魅力である。
もう1人が横浜F・マリノスの27歳、仲川輝人だ。
専修大卒業後にマリノス入り。大学ナンバーワンアタッカーの呼び声が高かったが、ケガの影響もあってなかなかチャンスをつかめない時期が続いた。町田ゼルビア、アビスパ福岡と2度、J2へ武者修行に出ている。
才能が開花したのは昨シーズン。就任したアンジェ・ポステコグルー監督が掲げる攻撃サッカーの申し子とも言うべき存在感を放ち、リーグ戦で9ゴールをマーク。時にはチャンスメーカーとなり、アシストが多いのも彼の大きな特徴だ。プレスバックも90分間持続できるしつこさ、スタミナもある。
今季は連係に磨きが掛かり、特にマルコス・ジュニオールとのコンビネーションは他クラブの脅威となっている。9月14日のホーム、サンフレッチェ広島戦でプロ5年目にして初めてゴールを2ケタ台に乗せた。
背番号は「23」、つまりはニッサン。身長は161㎝と小柄だが、高性能スポーツカー「GT-R」のツインターボエンジンを搭載しているかのようである。
マリノスOBで“元祖ハマのスピードスター”と呼ばれ、福岡で一緒にプレーした坂田大輔(17年シーズンを最後に引退)は仲川をこう評していた。
「止まった状態、つまりゼロからが速い。同じくらいの体型の選手だと確かに1歩目は速いんだけど、その後の伸びが続かない印象がある。でもテルは1歩目の後も速い」
すぐにトップスピードに持っていける爆発力のみならず、緩急の使い方もうまい。連続してスピードを使える継続性も強みだと言っていい。今季はセンターフォワードでも適応力を見せている。
古橋と仲川。
まさに今、Jリーグで乗りに乗っている旬のアタッカー。森保ジャパンの前線に活気をもたらす意味でも、彼らがメンバーに食い込んでくると面白い。
10月10日にはカタールワールドカップアジア2次予選のモンゴル戦(埼玉スタジアム)、15日には同タジキスタン戦(アウェー)を控える。もし3日のメンバー発表で招集されなくても、翌月には2試合の代表戦が控えている。
個人の勢いは、チームにも勢いを与える。
ぜひアピールを続けて森保一監督を振り向かせてもらいたいと思う。
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