(写真:ターンオーバーからトライを奪ったラブスカフニ Photo by Cameron Spencer/Getty Images)

 20日、ラグビーW杯日本大会が開幕した。東京・味の素スタジアムで行われた開幕戦は、プールAの日本代表(ジャパン)がロシア代表を30-10で破った。先制を許したジャパンだが、WTB松島幸太朗の2トライで逆転。後半にも2PG、2トライを加えるなど20点差を付けた。4トライ以上を奪ったジャパンはボーナスポイントを加え、勝ち点5を獲得した。

 

 首都・東京でW杯日本大会が幕を開けた。ジャパンがロシアを下し、4トライ以上のボーナスポイントもゲット。4万5000人を超える大観衆を前にホストカントリーが勝ち点5を掴む幸先の良いスタートを切った。

 

 過去の対戦成績は5勝1敗。世界ランキングはジャパンが10位に対し、ロシアは20位である。プールAは1位のアイルランド、7位のスコットランドというティア1の強敵がいる。この試合で求められるのは勝ち点5だ。ジャパンはSHに流大を起用し、速い展開でロシアのパワーラグビーを封じようとした。

 

 しかし、ジャパンはミスで先制を許した。前半4分、FBワシリー・アルテミエフのハイパントキックをFBウィリアム・トゥポウがキャッチできない。ボールが不規則に弾んだところをWTBキリル・ゴロスニツキーにかっさらわれ、そのままトライを奪われた。SOユーリー・クシナリョフのコンバージョンも決まり、0-7といきなりビハインドを負った。

 

(写真:先制点を奪ったロシアだが、後半はバテた印象がある Photo by Adam Pertty/Getty Images)

 先制パンチを食らったジャパンだが、慌てる時間ではない。ジャパンはアタックに自信を持っている。ジワリジワリと敵陣へと攻め込んだ。そして11分、ジャパンの今大会初トライが生まれた。敵陣でSO田村優が右へ展開。CTBラファエレ・ティモシーがタックルを受けながらもトゥポウにパス。トゥポウは片手で浮き球のパスを大外の松島に放った。松島はスピードを生かし、インゴール右に飛び込んだ。

 

 松島は34分にもトライを奪ったかに思われたが、TMO(ビデオ判定)でノックオンの判定となり、得点は取り消された。それでもこの日の松島は切れていた。ジェイミー・ジョセフHCが「Xファクター(特殊な能力)」と評する松島。37分に右サイドを切り裂いた。中央の田村からラファエレ、松島に繋がると、インゴールへ侵入。中央にボールを運ぶ余裕を見せ、10-7と逆転に成功した。

 

 田村のコンバージョンキックでさらに2点を追加したジャパンは、12-7で前半を終えた。後半開始早々に田村がPGで3点を加えた。7分にはセンターライン付近でボールを奪ったFLピーター・ラブスカフニが独走。20-7と突き放す。コンバージョンキックは3本中1本成功と不調気味の田村だが、PGはきっちり決めた。23分は約45mの距離をものともせず、23-10とリードを広げた。

 

 あと1トライでボーナスポイント獲得となるジャパン。仕上げは松島だった。28分、途中出場SH田中史朗のキックが敵陣でうまく跳ね、ロシアのアルテミエフの半端なキックを誘う。アンストラクチャー(陣形が整っていない状態)からのカウンター。ラファエレのパスから田村に代わってピッチに立っていた松田力也がゲイン、松島に繋いだ。松島は相手のタックルをうまく切り、ピッチを駆け抜ける。この日3つ目のトライだ。松田のコンバージョンキックも決まり、30-10で快勝した。

 

 ハットトリック達成の松島は「トライはみんなで繋いでとれた」とONE TEAMを強調した。20点差の勝利にも「60分苦しんだので、修正したい」と反省の弁。ゲームメイクを担当した流は「ミスがあってロシアのペースもあったが、うまく立て直せて良かった」と振り返った。

 

 序盤は硬さからか、ハンドリングエラーが目立った。その一方でパワー自慢のロシアにも当たり負けしない姿も見られた。No.8姫野和樹は何度もゲインし、自慢のボールキャリーをW杯デビュー戦で披露した。途中出場の選手たちの活躍も光った。LOトンプソン・ルークはゲイン、タックルと安定感のある仕事ぶり。リズムを変えた田中、松田、FB山中亮平もいいアタックを演出した。

 

 次戦は8日後、プール最大の強敵アイルランドだ。この日のようにミスをしていては、一気に流れを持っていかれる恐れもある。アイルランドはスコットランドと22日に対戦する。ティア1同士の対戦を終え、ジャパンよりは休養日が2日少ない。日程のアドバンテージも味方につけ、難敵退治を果たしたい。

 

(文/杉浦泰介)

 

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