(写真:ハカを披露するオールブラックス。戦士たちの雄叫びがスタジアムに響き渡った Photo by World Rugby-Handout/World Rugby via Getty Images)

 ラグビーW杯日本大会が21日、各地で行われた。神奈川・日産スタジアムでは優勝候補が激突。プールBの2連覇中のニュージーランド代表(オールブラックス)が前回大会3位の南アフリカ代表(スプリングボクス)を23-13で下した。開始早々にPGで先制されたオールブラックスだったが、22分にPGで追いついた。直後にトライで勝ち越すと、前半を17-3とリードして終える。後半に1トライ1ゴールとDGで迫られたものの、2つのPGで突き放した。

 

 決勝の会場となる日産スタジアムで、優勝候補のオールブラックスとスプリングボクスが激突した。6万3000人を超える大観衆は世界トップレベルのプレーに沸いた。軍配はディフェンディグチャンピオンのオールブラックスに上がった。

 

 前半1分、スプリングボクスはハーフウェイライン付近でペナルティーを獲得。SOハンドレ・ポラードがゴールまで50mを超える距離をものともせず決めた。幸先良く先制したスプリングボクスはSHファフ・デクラークがキックを織り交ぜながら速いテンポでボールを回す。12分を過ぎた時点でボール支配率は60%。敵陣でプレーし、相手にプレッシャーをかけた。

 

 潮目が変わり始めたのは風が強くなりはじめた頃。流れの変化を報せるかのようにオールブラックスの攻撃方向に吹いた。18分、ポラードが1本目よりイージーに見えたPGでポストを叩き、失敗に終わる。すると20分にはデクラークのパスが乱れところをSOリッチー・モウンガが奪い、逆襲を仕掛ける。ここでたまらず南アフリカはペナルティーを犯す。モウンガがPGを成功させ、オールブラックスが同点に追いついた。

 

 一気に流れを引き寄せたいオールブラックスは23分、モウンガのキックパスからWTBセブ・リースが右サイドを大きくゲイン。最後はFBボーデン・バレットが中央突破し、相手にタックルを受けながらオフロードパスでWTBジョージ・ブリッジにボールを渡した。ブリッジはインゴールへ滑り込み、トライを挙げた。モウンガのコンバージョンキックも決まり、10-3となった。

 

 オールブラックスの勢いは止まらない。26分には左サイドからCTBアントン・レーナートブラウンが中央へ切れ込み、縦へ突破。LOスコット・バレットにボールを渡す。S・バレットがインゴールに飛び込んだ。モウンガがコンバージョンを成功し、2トライ2ゴール差で前半終えた。

 

(写真:相手のスキを突き、豪快にインゴールへ飛び込んだデュトイ Photo by Warren Little-World Rugby-Handout/World Rugby via Getty Images)

 後半に入ると、スプリングボクスの反撃が始まった。7分、FLピーターステフ・デュトイが敵陣深くでラックのボールを相手の守備陣形が整っていないスキを突き、トライを挙げた。ポラードのコンバージョンキックも成功し、1トライ1ゴール差に迫った。

 

 オールブラックスの背中をとらえようと、執拗に攻めるスプリングボクス。18分、ポラードの正確なキックが光った。ゴールまで40m以上ある位置でボールを受け取ると、右足を振り抜いた。美しい放物線を描き、ポールの間を通過。DGで4点差とした。

 

 スプリングボクスの逆転が見えたかと思われたが、ここで慌てないのが王者たる所以か。26分と31分にPGで着実に加点した。終わってみれば、10点差を付けての快勝だ。序盤から積極的に圧力をかけ、ゲームを支配したのはスプリングボクスだった。だが、オールブラックスは粘り強く守り、余計なペナルティーはせず、1トライに抑えた。

 

 オールブラックスのスティーブ・ハンセンHCは「優勝するためには全戦勝たないといけない。負けたら歴史が終わってしまう。全試合決勝だと思って戦う」と王者の矜持を覗かせた。王者の白星スタートなったプールB。オールブラックスは中10日でカナダ(大分スポーツ公園総合競技場)、スプリングボクスは中6日でナミビア(豊田スタジアム)と対戦する。

 

(文/杉浦泰介)