8月30日から9月8日まで韓国で開催されていたWBSC U-18野球ワールドカップ。高校日本代表は5位に終わってしまいました。今回で6度目の出場ながら、高校日本代表はいまだに優勝がありません。


 今大会、いくつものトピックがありました。最も注目されたのは大船渡高(岩手)の佐々木朗希投手です。高校最速163キロの佐々木投手、大会初先発は6日の韓国戦でした。初回打者4人に対し19球を投げ無失点。最速153キロをマークするなど上々の滑り出しでしたが、右中指の血マメがつぶれるアクシデントに見舞われ降板。2番手の西純矢投手(創志学園・岡山)にマウンドを譲りました。試合は延長10回、4対5で日本がサヨナラ負けを喫しています。

 

 またこの大会では高校日本代表の守備の乱れも目立ちました。1次リーグのスペイン戦から始まり、2次リーグのオーストラリア戦まで全8試合で合計9失策。これを敗因と指摘する関係者の声もあります。先の韓国戦、8回、日本の守備に乱れが出ました。2死二、三塁で三塁手・石川昂弥選手(東邦・愛知)の送球が乱れ、一塁手・韮沢雄也選手(花咲徳栄・埼玉)が捕球できずに2人のランナーがかえり、同点とされました。

 

 韮沢選手の本来のポジションはショートです。ファーストに慣れた選手だったら…と、たらればを言っても仕方がありませんが、高校日本代表の内野手登録7人のうち6人がショートという偏った編成でした。球数制限のある今大会、投手起用を考慮して選手20人中、投手が9人登録されました。捕手2名を加えバッテリーで11人。残り9人の野手で6人がショートというわけです。チーム編成にあたって不足となるポジションは身体能力の高いショートでカバーするという策でした。だが、これが結果的には裏目に出ました。餅は餅屋ではありませんが、ファースト、セカンド、サード、ショートと4つのポジションを"内野手"とひと括りにするのは少々乱暴な気もします。

 

 以前、各ポジションの難しさについて球界OBの高木豊さんに聞いたことがあります。高木さんはショートとしてベストナインに1回、セカンドとしてベストナイン2回、ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)1回に輝いた守備の名手です。セカンド、ショートの他、サードやファースト、晩年は外野手も経験しました。その高木さんの弁です。

 

「野球のポジションにおいて、どこが簡単というのは当然ありません(笑)。それぞれ体の使い方などが違いますからね。ショートは守備範囲の広さや肩の強さが求められるし、セカンドは二遊間の打球を処理した後、一塁送球に体を切り返す必要があって逆の動きになる。では、サードが簡単かというと、打球がショートやセカンドよりも強くて速い。差し込まれる感覚には慣れが必要です。そしてファーストですが、よく"簡単"と言われますがとんでもない。野手からの送球を捕るのがどれほど難しいか……。たとえるならノーサインでキャッチャーをやるようなもんですよ。シュート、スライダー、ときにはフォーク、(笑)。そんな荒れ球がボンボン放られてくるんですから、まあ大変ですよ」

 

 プロ入りしてのコンバートと、今回のような代表チームでの急造守備とでは慣れる時間にも差があります。高校日本代表の世界一への挑戦、次は2年後です。頂点に向けては、今回、明らかになった課題をひとつひとつクリアしていくことが重要です。

 

(文/SC編集部・西崎)


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