(写真:リーチ<20>をはじめリザーブの活躍が目立った Photo by Clive Rose-World Rugby via Getty Images)

 28日、ラグビーW杯日本大会が各地で行われ、プールAの日本代表(ジャパン)は静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムでアイルランド代表を19-12で破った。先制トライを許すなど前半はリードされたジャパンだったが、SO田村優のPG3本で9-12で試合を折り返した。後半18分にWTB福岡堅樹のトライで逆転に成功。守ってはアイルランドに後半得点を許さなかった。ジャパンはこれで通算2勝、勝ち点9。アイルランドは7点差以内の負けでボーナスポイントを獲得。1勝1敗で勝ち点6となった。

 

 ジャパンが世界ランキング2位、優勝候補にも挙げられる強豪を撃破した。

 

 プールB最大の強敵と目されていたアイルランドとの対戦に、ジャパンは8日前の開幕戦からはFLリーチ・マイケルらをリザーブに下げるなど、4人のスタメンを入れ替えた。ところがハイボール対策でWTB起用のウィリアム・トゥポウは直前のケガで外れ、急遽レメキ・ロマノ・ラヴァがスタメン、福岡堅樹がリザーブに入った。

 

 対するアイルランドは。SOジョナサン・セクストンがコンディション不良のため、メンバーから外れた。代わりジャック・カーティが背番号10を纏い、SHコナー・マレーとコンビを組んだ。控えには期待の新鋭ジョーイ・カーベリー。スコットランドとの初戦を欠場したFBロブ・カーニーもスタメンで起用された。

 

 先手を取ったのはアイルランドだった。ゴール前中央でボールを持ったカーティが右サイドへキックパス。大外でギャリー・リングローズがFB山中亮平と競り合いながらボールをキャッチし、そのままインゴール右隅に飛び込んだ。

 

 先制トライを許したジャパンは17分に田村のPGで2点差に迫ったが、再びアイルランドにトライを奪われた。20分、カーティがショートパントでインゴール目前まで前進される。浮き球をカーティが弾くと、こぼれ球をカーニー拾われた。カーニーのトライと、カーティのコンバージョンキックで3-12と突き放された。

 

 27分には敵陣深くに攻め込んだジャパンだが、No.8アマナキ・レレイ・マフィがマレーにタックルを浴び、ノックオンを犯してしまう。さらにマフィはこのプレーで脇のあたりを痛め、リーチとの交代を余儀なくされた。よもやの交代にもジャパンは慌てなかった。

 

 速いテンポのパスでボールを保持し、アイルランドを走らせた。終盤は明らかにジャパンのペースだった。獲得したペナルティーはショットを選択。着実にスコアすることを優先した。開幕戦は「10日間眠れなかった」と硬さの見られた田村だが、この日は正確なキックを披露した。33分、39分と成功し、3点差で前半を終えた。

 

 後半もジャパンがボールを持つ展開でスタートした。14分は同点のチャンスで田村がPGに失敗したものの、以降も押し気味に試合を進めた。16分、SHを流大に代えて田中史朗を送る。経験豊富なベテランに終盤のアタックを託した。

 

 すると直後に、ジャパンに待望の瞬間が訪れる。右サイドで得たマイボールスクラムから田中は左へ展開。攻撃を継続する。最後は田中、CTB中村亮土、CTBラファエレ・ティモシーが速いテンポでパスを回した。フィニッシュは大外でボールを受けた途中出場の福岡。スピードを生かし、インゴール左隅に飛び込んだ。14-12とジャパンが逆転に成功した。田村のコンバージョンキックも成功し、4点のリードを奪う。

 

 逆襲を仕掛けるアイルランド。緑の波がジャパンの陣地に押し寄せてきた。それでもジャパンは防波堤のように守備ラインを築き、耐え凌ぐ。25分にはHO堀江翔太がタックル。ラックとなったところをFL姫野和樹がプレッシャーを掛け、アイルランドのペナルティーを誘った。

 

 焦るアイルランドはペナルティーを重ね、31分にジャパンがPGで加点した。1トライ1ゴール差に広げた。アイルランドはアタックでもリズムを掴めず、時計の針は進んでいく。36分には福岡がインターセプトからカウンター。大きく距離を稼いだ。最後は田中が時間をうまく使いながらゲームをコントロール。アイルランドに後半得点を与えず、試合を締めた。

 

 相手が得意とするセットプレーで負けなかったことが大きい。「(長谷川)慎さんのスクラムをやれば押されない」(堀江)。マイボールスクラム成功率100%に加え、アイルランドボールのスクラムを押し込み、ペナルティーを獲得する場面もあった。相手ボールのラインアウトは2度奪取した。

 

 信じた道を貫いた。キャプテンのリーチが「“勝つ”“勝ちたい”というメンタリティーが一番重要だった。やってきたことを信じること。意思統一できたことが勝因だと思う」と語れば、司令塔の田村は「ゲームプラン通り。この1週間、勝つと信じて準備した」と口にした。

 

 ジェイミー・ジョセフHC就任以降、多くのティア1勢と戦ってきたが勝利を収めたのは昨年のイタリア戦のみだった。それがW杯の大舞台で、これまで未勝利だったアイルランドを破る快挙を成し遂げた。指揮官は「ゲームプランを遂行できた。これでまた強くなる」と胸を張る。2試合合計勝ち点9はプールB暫定1位に立つ。残りのサモア代表、スコットランド戦で勝ち点を積み上げ、初の決勝トーナメント進出を決めたい。

 

(文/杉浦泰介)

 

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