(写真:激しい肉弾戦で観客を沸かせた両チーム Photo by Warren Little-World Rugby via Getty Images)

 29日、ラグビーW杯日本大会が各地で行われ、プールDのオーストラリア代表はウェールズ代表と東京・味の素スタジアムで対戦した。試合はウェールズがオーストラリアを29-25で下した。2連勝のウェールズは勝ち点を9に積み上げた。ウェールズはSOダン・ビガーのDGで先制。前半は2トライ2PGなどで23-8とリードした。後半はオーストラリアの反撃を受け、一時は1点差まで迫られたものの、逃げ切った。

 

 初戦を勝利し、勝ち点5を積み上げた同士の対戦。ティア1に属するオーストラリアとウェールズの強豪対決を見たさに味の素スタジアムには4万7885人の観客が詰め掛けた。互いの意地と意地とがぶつかり合う好ゲームとなった。

 

 最初に大観衆を沸かせたのはウェールズだ。相手がキャッチしたキックオフのボールを敵陣深くで奪取。ゴールまで約25mの位置でパスを受けたSOダン・ビガーがDGを狙った。ビガーのキックがゴール中心を射抜き、ウェールズが3点を先制した。

 

 ビガーの正確なキックはインプレーでも発揮された。12分、中央やや右の位置からキックパス。放物線を描いたボールをCTBハドリー・パークスが競り合いながらキャッチした。パークスはそのままインゴール右隅に飛び込みトライ。ビガーのコンバージョンキックも成功し、10点差を付けた。

 

 対するオーストラリアもやられたまま黙っていない。18分は相手ボールのスクラムにも関わらず、押し勝ち、ペナルティーを獲得。マイケル・フーパーとデービッド・ポーコックの両FLが激しいチャージでプレッシャーを掛け、ノットリリース・ザ・ボールを誘った。

 

(写真:馬力のあるケレビは何度もゲインした Photo by David Ramos-World Rugby via Getty Images)

 20分にはSOバーナード・フォーリーがお返しとばかりにキックパスでトライを演出する。大外のWTBアダム・アシュリークーパーがキャッチ。内側に切れ込み、右中間にトライを挙げた。27分にはPGで2点差まで詰めた。

 

 27分にHIA(脳震盪の確認のため10分間の一時退場)でビガーがピッチを去ることとなったウェールズ。プレースキッカーを欠くこととなったが、ビガーに代わって入った長身SOリース・パッチェルは高いキック精度を見せた。32分、35分にPGで加点。リードを広げた。

 

 さらにウェールズは鋭い出足で、オーストラリアのアタックを封じようとする。37分、ハーフウェイライン付近でオーストラリアSHウィル・ゲニアのパスを、SHギャリー・デイビスがかっさらう。そのまま1人で独走し、左中間にトライを挙げた。デイビスは6分にもインターセプトからチャンスをつくっていた。抜け目のないディフェンスでオーストラリアを苦しめた。

 

 前半を23-8と15点リードを終えたウェールズは、後半も開始早々にDGを決める。決めたのはパッチェル。ゴールまで約25mの距離から得たボールを、きっちり得点に結び付けた。

 

 一気にウェールズペースに傾くかと思われたが、再びオーストラリアが反撃を開始する。6分にはゲニア、ポーコックと繋ぎ、最後はFBデーン・ヘーレットペティがトライ。途中出場のSOマット・トゥームアがコンバージョンキックを決めた。

 

 なおもウェールズはスクラムで押し負け、オーストラリアの圧力に陣地を奪われた。21分にはじわりじわりと自陣に押し込まれ、最後はフーパーにインゴール中央に飛び込まれた。その後、トゥームアにコンバージョンキック、PGを決められ、26-25と1点差まで詰め寄られた。

 

 それでもウェールズは負けなかった。今年のシックスネーションズを制した堅い守りが終盤に発揮された。31分にパッチェルのPGでリードを4点に広げた。その後もオーストラリアの圧力に押し込まれ、スクラムでは劣勢だったが、赤い砦を築き、インゴールまでは辿り着かせなかった。

 

 ウォーレン・ガッドランドHCはタフなゲームを制した選手たちを称えた。

「このチームは成長してきた。ゲームマネジメントが改善。シックスネーションズで学び、経験値重ねてきた。それはこの試合の後半も出ており、相手のプレッシャーにも対応できていた」

 

 これでウェールズは勝ち点9でプールDのトップに立った。敗れたオーストラリアは7点差以内での敗戦でボーナスポイントを獲得。勝ち点6で2位に付ける。ウェールズは中9日でフィジー代表、オーストラリアは中5日でウルグアイ代表と対戦する。

 

(文/杉浦泰介)