NPB史上4人目の“捕手首位打者”が誕生した。

 

 

 埼玉西武の森友哉である。打率3割2分9厘。2位の吉田正尚(オリックス)に7厘差をつけてのタイトル獲得となった。

 

 捕手は激務である。打つこと以上に守りが重視される。メジャーリーグと違い、日本では配球を考えるのも捕手の仕事だ。

 

 過去、過酷な任務をこなしながら首位打者を獲得したのは野村克也(南海・65年)、古田敦也(ヤクルト・91年)、阿部慎之助(巨人・12年)の3人だけ。3人とも球史に残る名捕手だ。

 

 これまで捕手=大柄というイメージがあった。ノムさんは175センチだが、戦前の生まれとしては大柄である。ニックネームの「ムース」は、シカ科では地球上最大の「ヘラジカ」に由来する。

 

 蛇足だが、漫画「ドカベン」の主人公・山田太郎は“ずんぐりむっくり”のイメージがあるが、インターネットで検索すると身長175センチ、体重85キロとなっていた。

 

 ここへきて、これまで私たちが抱いてきた捕手像が変わりつつある。16年に導入されたコリジョンルールに依るところが大きい。ひらたく言えば、本塁上の危険な接触を防ぐため、捕手によるブロック、走者によるタックルが禁止されたのだ。

 

 これにより、小柄な選手でもプロでレギュラーを張れるようになってきた。その象徴的存在が福岡ソフトバンクの“甲斐キャノン”こと甲斐拓也だろう。

 

 昨年の広島との日本シリーズでは機動力を売り物にする広島相手に6連続盗塁阻止を達成し、育成ドラフト出身選手としては初のシリーズMVPに輝いた。

 

 その甲斐は体重こそ85キロとがっちりしているが、身長は170センチ。高校野球でも捕手としては小柄の部類だろう。

 

 甲斐や森の活躍に刺激を受け、これまでは小柄を理由に内野や外野を守っていた少年たちが捕手を目指すようになるのではないか。それがプロ野球のイノベーションにつながるのなら、大歓迎である。

 

<この原稿は2019年9月16日号『週刊大衆』に掲載されたものを一部再構成しました>

 


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