5日からプロ野球のクライマックスシリーズ(CS)が始まる。CSファーストステージの対戦カードは、セ・リーグが横浜DeNA-阪神(横浜)、パ・リーグが福岡ソフトバンク-東北楽天(ヤフオクドーム)。セ、パともに2勝したチームがファイナルステージへ進出する。ファイナルステージは9日から、リーグ優勝を果たした巨人、埼玉西武の本拠地が舞台となる。ファイナルステージは6試合制で、優勝チームのアドバンテージ(1勝)を含め先に4勝したチームが日本シリーズへ進出する。

 

 セ/"ハマスタ弁慶"の阪神、いざ下剋上へ

 4連覇を目指し、CS圏内に踏みとどまっていた広島がシーズン終盤に失速。セ・リーグCS最後の切符は、最終戦まで6連勝で駆け抜け3位に滑り込んだ阪神が手にした。2年ぶり8度目、矢野燿大監督就任1年目のCSを戦う阪神にとって、ファーストステージを戦う横浜スタジムは願ってもない舞台だ。

 

 今季、阪神とDeNAの対戦成績は阪神の16勝8敗1分。さらに横浜スタジムに限れば8勝4敗と、阪神が圧倒している。"地の利"だけ見れば阪神のファイナルステージ進出が順当だが、初の本拠地CS開催、そして98年以来の日本一を目指すDeNAも簡単には負けられない。DeNAアレックス・ラミレス監督も「CSとシーズンは全く違う。何でも起こりうるのが短期決戦」と意気込む。

 

 阪神はリーグトップの防御率3.46を誇る投手陣が強みだ。CSファーストステージでは西勇輝、青柳晃洋、高橋遥人の先発が予想され、中盤以降を受け持つリリーフ陣も盤石だ。岩崎優、そしてクローザーに復帰した藤川球児と令和版・勝利の方程式にスキはない。シーズン終盤にはオネルキ・ガルシアを先発から配置転換し、リリーフ陣に厚みが増した。短期決戦のCSではガルシアを第二先発としてゲーム序盤から準備させることもでき、継投で逃げ切るのがトラの戦法となる。

 

 対するDeNAはエース今永昇太が鍵を握る。今季、キャリアハイを更新する勝利数(13勝)を積み上げたが、9月に入って調子を落とした。チーム最終戦の28日の阪神戦では7回1/3、7失点と乱調。CSでは石田健大とともに先発、また状況によってはリリーフや第二先発での待機も考えられる。「まだ1週間あります」とCSに向け調整を続けてきたエースの復調に注目が集まる。DeNA投手陣に朗報は右股関節痛で鮮烈を離れていた濵口遥大、右手小指骨折のスペンサー・パットンがともに復帰したこと。阪神、DeNAともに守護神の藤川、山﨑康晃までいかにバトンをつなぐか。矢野、ラミレス両監督の継投手腕も見ものである。

 

 ファーストステージ勝者を東京ドームで待ち構えるのが、5年ぶりのリーグ優勝を果たした原巨人だ。3度目の指揮となった原辰徳監督は、昨秋就任するや丸佳浩、炭谷銀仁朗など約30億円の大型補強を敢行し、ペナントを奪還した。2番に坂本勇人を配置し、3番・丸、4番・岡本和真と続く強力打線でリーグトップの663得点、183本塁打をマークした。

 

 原巨人の強みは強打以外にもある。シーズン序盤から一、三塁の場面でのダブルスチールなど、積極的にランナーを動かし1点を奪うシーンが見られた。また外国人選手のアレックス・ゲレーロに送りバントのサインを出し、9回あと1人の場面でライアン・クックに交代を命ずるなど、原采配には一切の迷いも遠慮もない。シーズン中以上に監督の采配力が問われる短期決戦、キレのよい判断力と采配はここでもアドバンテージになる。

 

 さて、巨人の相手はDeNAか、阪神か。DeNAは43本塁打、108打点で二冠王のネフタリ・ソトを筆頭に、筒香嘉智(29本)、ホセ・ロペス(31本)と大砲が揃う。ソトが9月11日の巨人戦で放った1試合3本塁打は巨人投手陣にとってトラウマである。エース菅野智之を欠き投手陣に若干の不安を抱える巨人にとってDeNAの強力打線は脅威となる。阪神は14年、リーグ優勝を果たした巨人を相手にアドバンテージ1勝をものともせずファイナルステージで4連勝、日本シリーズへ悠々と勝ち進んだ実績がある。

 

 ここ10年、日本シリーズはパ・リーグが8度優勝と圧倒している。いずれの球団が勝ち進むとしてもセ代表としての意地を期待したい。

 

 パ/“山賊打線”が猛威をふるうか

 西武が連覇を果たしたパ・リーグは、ソフトバンクと楽天がファーストステージに臨む。昨季はレギュラーシーズン2位のソフトバンクがファーストステージ、ファイナルステージを勝ち上がり、広島との日本シリーズを制した。

 

 ファイナルステージでいずれかを待ち受ける西武は“山賊打線”や“獅子おどし打線”と呼ばれる破壊力抜群の攻撃が持ち味だ。チーム打率2割6分5厘、総得点756は12球団トップ。個人タイトルは首位打者・森友哉、ホームラン王・山川穂高、打点王・中村剛也、最多安打・秋山翔吾、盗塁王・金子侑司、最多犠打・源田壮亮とほぼ総ナメ状態だ。そのほかに栗山巧、外崎修汰など相手投手にとっては気の抜けないバッターが打線に並ぶ。

 

 今季は昨季以上に“打高投低”が色濃く表れた。総失点695、チーム防御率4.35はリーグワースト。投手での個人タイトルはゼロである。先発陣で規定投球回数に達した者はいなかった。単純計算で1試合4点取られるチームだが、1試合5点以上取るチームでもある。文字通り、打ち勝ってチャンピオンフラッグを手に入れた。

 

 ファイナルステージ第1戦の先発が有力視されているのが“負けない男”ザック・ニールだ。抜群のコントールを生かし、打たせて取るピッチングで今季11連勝を記録した。規定投球回数には満たなかったものの、12勝1敗、防御率2.87をマーク。来日1年目の“助っ投”右腕で勝ちを計算できれば、西武の日本シリーズ進出は大きく近づくはずだ。

 

 不安は2番手以降の先発だ。昨季最多勝の多和田真三郎、5年目で自己最多の9勝を挙げた髙橋光成はCSに間に合わない見通し。ニールに続き、第2戦を任されそうなのが3年目右腕の今井達也である。今井は昨季第4戦に登板し、5回途中4失点で負け投手となった。雪辱を期す21歳の右腕に期待がかかる。

 

 先発のコマ不足はリリーフ陣で補う。右の中継ぎはリーグ新記録の81試合登板の平井克典、速球派の平良海馬が、左は変則の小川龍也がいる。クローザーは今季30セーブの増田達至と勝利の方程式を確立している。就任3年目・辻発彦監督の采配もカギを握るだろう。

 

 その西武への挑戦権を得るのはソフトバンクか楽天か。戦力で見れば昨季日本一のソフトバンクに分がある。先発はエースで13勝の千賀滉大を筆頭に、12勝の高橋礼、7勝のアリエル・ミランダとコマは揃っている。

 

 打線も柳田悠岐が8月、アルフレド・デスパイネが9月に故障から復帰。内川聖一、松田宣浩など昨季の日本一を知る経験豊富な選手がいるのも強みだ。今季で6年連続のCSになるが、5年間での勝率(アドバンテージを除く)は6割5分を超える。かつてのようにポストシーズンに弱い印象はない。

 

 一方の楽天は先発ローテーションの則本昂大、美馬学、辛島航の出来次第か。ゲーム終盤には初のセーブ王に輝いたクローザー・松井裕樹が控える。今季ソフトバンク戦は防御率0.00。今季90打点以上を記録した浅村栄斗、ジャバリ・ブラッシュとポイントゲッターで得点し、勝ちパターンに持っていければ“下剋上”もあり得る。

 

(文/SC編集部・杉浦、同・西崎)