東京都品川区は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会において区内で開催のホッケー、ビーチバレーに加え、ブラインドサッカーの3競技を応援する。品川区はスポーツを通じた共生社会実現を目指し、パラスポーツという呼称のなかった時代、1982年から“障がい者スポーツ”への取り組みをスタートした。2016年には日本ブラインドサッカー協会とパートナーシップ協定を締結した。東京23区でスポーツ競技団体とパートナーシップを結んだのは初めてである。今後は「enjoy our 2020!」を合言葉に、東京2020大会の気運醸成を図る。品川区オリンピック・パラリンピック準備課の辻亜紀課長に区が目指す独自の取り組みや、今後の課題について訊いた。

 

二宮清純: 品川区は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が決まった直後から積極的に大会や競技に関わっている印象があります。

辻亜紀: 2007年に制定した「品川文化芸術・スポーツまちづくり条例」を機に、スポーツを“誰でも”“いつでも”“どこでも”“いつまでも”という4つの理念をもとにスポーツ振興に取り組んでいます。

 

二宮: パラスポーツに関わるようになったきっかけは?

: 品川区が“障がい者スポーツ”に取り組み始めたのは1982年です。東京2020大会開催が決定した直後から様々なスポーツ団体と一緒に気運醸成のイベントや体験教室を行ってきました。

 

伊藤数子: 2016年4月には日本ブラインドサッカー協会とパートナーシップ協定を締結しました。

: 東京2020大会を招致していた時、ブラインドサッカーは品川で開催する予定でした。最終的には青海アーバンスポーツパーク(江東区)になりましたが、会場が決まる前からいろいろ事業を一緒に行うことが多かったんです。ブラインドサッカーは共生社会実現に向けても力を発揮してくれるスポーツです。相手を思いやり、コミュニケーションをとることの素晴らしさを区民にもっと知ってほしいという思いからパートナーシップ協定を結び、協力体制を築いています。

 

二宮: 具体的には、どのような協力体制を?

: まずは事業に協力すること。その他には区内でIBSAワールドグランプリという国際大会を2018年から開催しています。大会は来年の3月で第3回目を迎えます。東京パラリンピックに出場する強豪国も品川にやって来ます。

 

 共生社会実現へ

 

伊藤: 辻さんがオリンピック・パラリンピック準備課の課長に就任されたのが昨年です。それまでパラスポーツに関わった経験は?

: 実はなかったんです。自分で運動するのは好きなのですが、パラスポーツ観戦に行ったり、体験することはありませんでした。現職に就くことが決まってから、ブラインドサッカーのワールドグランプリを品川で開催した時に観に行きました。そこで見事にハマりましたね。テクニックやスピードだけでなく肉弾戦の要素もあり、圧倒されました。それからは他のパラスポーツもたくさん観るようになりました。

 

二宮: 品川区はビーチバレー、ホッケーに加え、ブラインドサッカーを応援競技としているそうですね。区内の小学校の授業にも取り入れていると聞きました。

: そのとおりです。品川区の小学校全校で3競技の体験を取り入れています。なかでも、ブラインドサッカーをプレーしてみると、コミュニケーションの大事さを考えさせてくれます。それは大人も子供も同じ。障がいについて考えるきっかけにもなります。障がいの有無や年齢でカテゴライズせずスポーツを通じ、個性を生かして共生していくのが品川区のビジョンです。ブラインドサッカーはまさにうってつけのスポーツだと言えます。今後も日本ブラインドサッカー協会との連携を深め、様々な事業を展開していきたいと思います。

 

(後編につづく)

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辻亜紀(つじ・あき)プロフィール>

品川区文化スポーツ振興部オリンピック・パラリンピック準備課長。1965年、東京都出身。1987年、慶應義塾大学法学部卒業、1989年5月に入区し、選挙管理委員会に配属。福祉部副参事(品川区社会福祉協議会派遣)を経て、2018年4月より現職。「enjoy our 2020!」を合言葉に、東京2020大会を区民・事業者とともに盛り上げていきたいと奮闘中。趣味は水泳とランニング。スキーとスキューバダイビングはインストラクターを務めたこともある。

 

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