(写真:地味ながら最高級の技量を備えたレナードは今季の優勝争いの鍵を握る Photo By Gemini Keez)

 今季のNBAで最大の注目チームを挙げるなら、レイカーズ、クリッパーズというロサンゼルスに本拠地を置く2球団だろう。今オフ、2チームは揃って大型補強を敢行し、上位進出が狙える戦力を整えた。

 

 名門レイカーズはリーグ屈指のビッグマンと称されるアンソニー・デイビスを獲得し、レブロン・ジェームズとの超大型デュオを完成させた。クリッパーズはトロント・ラプターズを初優勝に導いたばかりのカワイ・レナード、攻守両面で優れたポール・ジョージを揃って獲得。10月22日の開幕戦でいきなり激突する両チームの行方は、全米のスポーツファンの関心を呼ぶに違いない。

 

 一般的に評価が高いのは、攻守のバランスが取れたクリッパーズの方。今が旬のレナードを軸に、一気にフランチャイズ史上初のファイナル進出を果たしても驚かない。一方、レイカーズはデイビスを手に入れるために多くの主力を放出したためにやや層が薄く、フランク・ボーゲル新HCの適正にも疑問が呈されている。ただ、レブロンを擁するチームが脅威なのは間違いなく、爆発力ではリーグ屈指だろう。

 

 一時代を築いたゴールデンステイト・ウォリアーズが戦力ダウンし、今季の優勝争いは混戦模様だ。ラッセル・ウェストブルックを獲得したヒューストン・ロケッツ、底力のあるユタ・ジャズなど、依然としてハイレベルのウェスタン・カンファレンスでは多くのチームが覇権を虎視眈々と狙っている。それらの強豪に加え、LAの2強が力を発揮すれば、NBAは確実に面白くなる。今季の盛り上がりの鍵はレブロン、レナードという重鎮に率いられた2チームが握っているといっても過言ではない。

 

 現役ベストプレーヤーは群雄割拠

 

(写真:アデトクンボが2年連続MVPを獲得すれば、本格的に”ベストプレーヤー”と呼ばれるようになるだろう Photo By Gemini Keez)

 34歳を迎えたレブロンは依然としてエリートプレイヤーではあるが、もう全盛期の力はないとみる関係者が多い。そのレブロンに次ぐNo.2と考えられてきたケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)は昨季ファイナル中にアキレス腱断裂し、今季全休が濃厚。そんな状況下で、NBAの“現役ベストプレーヤー”はいったい誰なのか。

 

 一般的に最も評価が高いのは、昨季初のMVPに輝いた怪物ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)だ。サイズ、パワー、身体能力、スピードを超ハイレベルで兼備した24歳は、“規格外”と評される能力の持ち主。今季も力を存分に発揮し、2年連続MVPに輝く可能性も十分にある。

 

 もっとも、アデトクンボもまだジャンプシュートが不安定であり、完成度ではラプターズを昨季ファイナルに押し上げたレナードが上と考える関係者も数多い。今季にクリッパーズを頂点に導くようなことがあれば、最高級の2ウェイプレイヤー(攻守兼備の選手)であるレナードこそがベストプレーヤーとしてみなされるのではないか。

 

 その他、超絶シューターのステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、歴史的な得点力を誇るジェームズ・ハーデン(ヒューストン)も現役トップ5に入る実力者だ。昨季はケガにも苦しんだレブロンも、完調で臨む今季は“ベスト”の称号を取り戻そうと挑んでくるはず。優勝争い同様、ベストプレーヤー争いも群雄割拠であり、今季中の評価の推移が楽しみである。

 

 ブルックリンはさらに躍進するか

 

(写真:個人技に秀でたアービング<写真はセルティックス時代>だが、チームを引っ張る統率力はまだ証明されていない Photo By Gemini Keez)

 前述通り、昨季に初優勝を遂げたトロント・ラプターズからレナードが抜け、今季はイースタン・カンファレンスも本命不在となった。バックス、フィラデルフィア・76ersの前評判が高いが、今オフ、それ以上の話題を振りまいたのがブルックリン・ネッツだった。

 

 昨季4年ぶりにプレーオフ出場を果たしたネッツは、今オフ、デュラント、カイリー・アービング、デアンドレ・ジョーダンという3人のスター選手と次々と契約。ニューヨークに新たな“パワーハウス”が生まれ、地元での期待度も急上昇している。これまでニューヨークは“ニックスの街“だったが、ここに来てネッツの存在感が一気に高まっているのだ。

 

 アキレス腱を断裂したデュラントは今季全休が有力なだけに、すぐに優勝が目指せるというわけではない。今季は新たな司令塔となるアービングが、キャリス・ルバート、スペンサー・ディンウィディー、ジャレッド・アレン、ジョー・ハリスといった昨季からの主力と呼吸を合わせるのが優先課題。それさえ叶えば、ネッツは近未来の戴冠に向けて勢いを増すに違いない。

 

 日本人選手たちの活躍

 

(写真:八村はビール<左>、ウォール<中央>というウィザーズの2大スターに次ぐ存在になっていけるか)

 長年のファンにとっては信じがたいことかもしれないが、今季は日本人選手の活躍も見どころの1つとなっている。

 

 今年度のドラフトでワシントン・ウィザーズから全体9位で指名された八村塁は、プレシーズン戦でも安定したプレーを披露してきた。10月23日、ダラス・マーベリックスを相手に行われる開幕戦へのスタメン出場も有力。ウィザーズは再建の真っ只中なだけに、今季は八村のような若手選手に多くのプレー時間が与えられることになりそうだ。

 

 世界最高の舞台で、八村は持ち前の得点力、リバウンド力をどれだけ発揮できるか。日本人としては前人未到の“ドラフト1巡目指名”という金字塔を打ち立てた怪童は、日本バスケットボール史上に残る1ページをスタートさせる。

 

(写真:屈指の好漢、渡邊雄太は待望の本契約を手にできるか)

 メンフィス・グリズリーズの2ウェイ契約選手として2年目を迎える渡邊雄太にとって、今季は勝負のシーズンになる。昨季、田臥勇太に次ぐ日本人史上2人目のNBAプレーヤーとなり、今夏は日本代表のリーダーとしてもチームを引っ張った。最高級の守備力を持つオールラウンダーは、25歳になった今まさに選手としての全盛期を迎えているのだろう。

 

 ただ、グリズリーズでの立場はまだ保障されていない。ロングジャンパー、フィジカルの強さといった課題を克服し、NBAでやっていけるだけの力をアピールできるか。2019-20シーズンこそが、アメリカでの渡邊のキャリアを左右する1年になるはずだ。

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
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