リポビタンDチャレンジカップ2014が8日、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、日本代表(JAPAN XV)は、ニュージーランドの先住民族マオリ族によるマオリ・オールブラックスに18−20で敗れた。日本は前半、0−15とリードを許すも、38分にWTB山田章仁のトライで反撃を開始。後半に入ってペナルティトライとFB五郎丸歩の2本のPGなどで18−15と逆転に成功する。だが、残り3分で再逆転のトライを奪われ、惜しくも金星を逃した。
(写真:前半38分、山田が左隅を抜け出し、トライを決めた)
 歴史的勝利まで、あと3分だった。
 マオリ・オールブラックスは、ニュージーランドのフル代表ではないが、イングランド代表やアイルランド代表にも勝利した実績を持つ。1週間前の第1戦(神戸)では個人の能力の差を見せつけられ、21−61で敗れた。

 そんな格上相手に後半37分まで18−15とジャパンはリードしていた。
「セットピース(セットプレー)、アタックのシェイプ、ディフェンスも改善されてプラス面がたくさんあった」
 エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)がそう選手を称えたように、世界を驚かす白星を手にしかけていた。

 だが、敵陣左サイドでのマイボールラインアウトでの反則から相手にボールが渡ってしまう。右に大きく展開され、一気に攻め込まれた。相手が前方へ蹴りだしたボールを山田がキャッチするも、体ごとサイドラインの外へ押し出される。

 マオリの選手が守りが整う前に素早くボールを大きく中に入れると、ジャパンは対応できなかった。ガラ空きの逆サイドを突かれてのトライ。18−20と土壇場で試合をひっくり返された。

 それでも、PGで逆転できる点差だ。ジャパンはボールをつないで相手陣内に侵入する。途中、40分のホーンが鳴り、ラストワンプレー。桜のジャージの選手たちはアタックを繰り返す中で、相手の反則を誘おうとしたものの、黒い壁のようなマオリのディフェンスに最後はボールがこぼれ、万事休す。ターンオーバーでボールを外に蹴られ、ノーサイドを迎えた。

 結果は敗戦とはいえ、ジャパンはベストメンバーではなく、テストマッチ未経験の出場選手が3人、1キャップのみの選手が2人という構成で、ラグビー王国のチームを、あと一歩まで追い詰めた。

 立ち上がりからCTB松島幸太朗が持ち味のスピードを生かして左サイドを突破し、流れをつくる。ジャパンの圧力にマオリの選手が反則を繰り返し、シンビンで数的優位に立った。今回、代表に初選出され、初スタメンに抜擢されたNo.8アマナキ・レレィ・マフィが「最初の8分でマオリのテンションがダウンした」と振り返ったように日本ペースで試合が進む。

 しかし、7分のPGを五郎丸が外すなど、得点をあげられない。12分には代表初スタメンとなったPR稲垣啓太が中央でインゴールに飛び込んだが、その前にオブストラクションをとられ、トライが認められなかった。

 すると、マオリに先制点を奪われる。16分に左から中央へ大きくボールを回され、ディフェンスのギャップを突かれた。独走を許し、トライを奪われる。さらに22分には左から逆サイドにギアを上げて展開され、トライを喫した。31分にはPGも決められ、ジャパンは0−15とビハインドを背負う。

 流れを変えたのは前半終了間際、山田のトライだ。自陣でのマイボールスクラムから相手陣内に迫り、アタックを繰り返す。「外へのスペースに勇気を出してアタックしよう」と指揮官が試合前に指示していた通り、中央から左にボールを出すと、一番外にいた山田の前にマオリの選手はいなかった。「展開的にも早く(得点を)返したい場面だった」と山田。ジャパンは5点を返し、試合を折り返す。

 そして後半、ジャパンは束になって相手を押し込む。7分には相手陣ゴール前でのスクラムで圧倒。マオリのスクラムが完全に崩れ、ペナルティトライが認められた。「今のジャパンのセットピースは世界に通用する」と、ジョーンズHCも胸を張る新たな武器で12−15と3点差に迫る。
(写真:相手のコリン・クーパーHCが「ジャパンのスクラムを称賛したい」と語るほど、屈強なマオリの選手に押し勝った)

 こうなるとジャパンにリズムが出てくる。日本の度重なるアタックに堪えきれず、マオリは自陣で反則を犯す。五郎丸が14分にPGを決めて15−15の同点。31分にも五郎丸が右中間からのPGを成功させて、ついに18−15と勝ち越した。20515人が詰めかけ、チケットが完売した秩父宮はニッポンコールに包まれた。

 試合後の選手たちは松島が「自分の得意なスピードやステップは通用した」と話せば、稲垣も「セットプレーがしっかりすればゲームになる」と次々に手応えを口にした。 
「ジャパンは今、山登りをしている。1000メートルまでは楽しいが、そこを超えると風も強くなり、地面は荒れ、足も疲れて冷たくなる。今、ジャパンは1000メートルを超えた地点にいる」

 ジョーンズHCはジャパンの現在地を山にたとえた。目指す頂上は来年のW杯での決勝トーナメント進出だ。9日からジャパンはヨーロッパに渡り、ルーマニア(15日)、グルジア(23日)と対戦して、さらなる高みへ歩を進める。