いまや犬猿の仲、とまではいかないものの、長年、サッカーとラグビーは何かとソリが合わないことで知られてきた。少年を大人に変えるのがサッカーだとしたら、ラグビーは大人を一瞬、野獣に変える。支持してきたファンの層も違う。

 

 ただ、今回のラグビーW杯(RWC)に当たって、日本のサッカー界はほぼ全面的に、協力をしてきた。これほどまでにサッカーのプロチームがホームスタジアムを明け渡した例は、過去のRWCの歴史をひもといてもちょっとないのではないか。

 

 以前にも書いたが、そのとばっちりというか、RWC開催の影響をモロに受けたチームの一つがFC東京である。8月17日の広島戦を最後に味スタを明け渡した彼らは、目下アウェー8連戦の真っ最中。依然として首位争いには踏みとどまっているものの、予想された通り、勝ち点は伸びていない。

 

 もっとも、ホームを明け渡したのはFC東京だけではない。RWC開催地となった、あるいは練習会場に選ばれたチームの多くが、戦いなれたスタジアムをラグビーのために譲った。これから準決勝、決勝が行われる横浜国際(日産)をホームとする横浜もそうしたチームの一つである。

 

 だが、彼らにはFC東京にはないアドバンテージがあった。

 

 ニッパツ三ツ沢球技場の存在である。

 

 神奈川県民には馴染みの深いこの伝統ある、しかし相当に小ぶりなスタジアムは、超満員になっても1万5000人には届かない。6万を超える観衆をのみ込むこともある横浜国際に比べれば、ちっぽけ、と言ってしまってもいい。

 

 ところが、普段のホームに比べれば圧倒的に小さなこのスタジアムで、横浜は圧倒的な強さを見せている。天皇杯やルヴァンカップを含め、今季の彼らはここ9試合を戦っているが、敗れた試合は一つもない。横浜国際では2敗を喫しているチームがニッパツでは無敗を誇っているのである。

 

 これはもう、間違いなく専用競技場の強みだろう。

 

 陸上トラックのないニッパツは、観客の声援がダイレクトに選手へと届く。横浜国際で見るマリノスのサポーターは、Jリーグ平均で見てもちょっとおとなしめかな、といった印象があったが、ニッパツのそれは煮えたぎる釜のようですらある。たかが1万人ちょっとの観衆であっても、アウェーチームにとってあの熱気の中で結果を出すのは簡単なことではない。

 

 ちなみに、いまのニッパツはJ2の横浜FC、J3のYS横浜を合わせた3チームによって使用されるという超過密日程なのだが、芝生の状態が保たれているのは称賛に値する。ボール保持を重視する横浜にとっては、これも大きい。

 

 皮肉というか興味深いのは、12月7日に行われる最終節のカードと会場である。優勝争いがこのまま最終節までもつれ込んだ場合、横浜はホームにFC東京を迎えることになる。

 

 決戦の舞台は、帰って来た横浜国際――。さて、笑うのは横浜か、東京か、それとも、他のどこかか。

 

<この原稿は19年10月24日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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