「2014SUZUKI日米野球」が15日、東京ドームで第3戦を迎え、日本代表の侍ジャパンは継投でノーヒットノーランを達成し、MLBオールスターを4−0で下した。これで侍ジャパンは無傷の3連勝。先発の則本昴大(東北楽天)が5回をパーフェクトに封じる好投をみせると、西勇輝(オリックス)、牧田和久(埼玉西武)、西野勇士(千葉ロッテ)のリレーで四死球による走者4人だけに抑えた。

 日米野球、24年ぶり勝ち越し決定(東京ドーム)
MLBオールスター  0 = 000000000
日本代表       4 = 02200000×
(M)●ガスリー−チョート−ベリボー−モラレス
(日)○則本−西−牧田−西野
本塁打 (日)坂本1号2ラン、中田1号2ラン
 沢村栄治が日米野球でベーブ・ルースやルー・ゲーリッグらを1失点に抑えた伝説の試合から80年。侍ジャパンが新たなレジェンドをつくりあげた。

 流れをつくったのは先発の則本だ。今回が侍ジャパン初選出。今季はリーグトップの7完封をあげたプロ2年目の右腕が強力打線を沈黙させた。

 立ち上がりからストレートの球速は150キロを超え、フォーク、スライダーなどのキレも抜群だった。1死からはロビンソン・カノ(マリナーズ)を追い込み、フォークを落として空振り三振。続くエバン・ロンゴリア(レイズ)をフルカウントから153キロの高めの速球でバットに空を切らせる。

 奪三振ショーは終わらない。2回もナ・リーグ首位打者のジャスティン・モーノー(ロッキーズ)を2−2からカットボールを振らせる。これで3者連続三振。3回も今季30本塁打のルーカス・デューダ(メッツ)をフォーク、デクスター・ファウラー(アストロズ)をストレートで立て続けに三振に仕留める。3回で早くも三振は5つを数え、しかも、すべて空振りで牛耳った。

「まっすぐで空振りをとれた。変化球もある程度、自分の思う通りに投げられた」と本人が振り返ったように、一発長打のある相手に的を絞らせない。4回もロンゴリアをストレートで空振り三振に切って取るなど3者凡退。5回もMLBの中軸を3人で簡単に料理した。

「できすぎです。人生最高のピッチング」
 そう目を丸くした23歳に、MLBオールスターのジョン・ファレル監督(レッドソックス)は「ストライクゾーンの低めにきっちりと決められると対応が難しい。脱帽という試合だった」と完全にお手上げだった。

 この好投に触発され、侍ジャパン打線は、相手のお株を奪う一発攻勢をみせる。2回、先頭の中田がレフト左を痛烈に破る二塁打で出塁すると、1死後、坂本が初球のカットボールを思い切って振り抜く。打球は高々と舞い上がり、レフトスタンドに飛び込む先制2ランとなった。

 さらに3回、1死一塁から主砲の中田がこのシリーズ初本塁打を放つ。「甘い球が来たら思いきっりいってやろうと思っていました」とMLB先発のジェレミー・ガスリーの失投をとらえ、右中間にライナーで突き刺した。中盤以降は得点のなかった侍ジャパンだが、この4点があれば、もう十分だった。

 6回からは則本と同じ1990年生まれの西がマウンドへ。先頭のデューダを四球で歩かせ、継投とはいえ、パーフェクトが途切れる。「球場が溜息だったので、苦しかった」と右腕は心境を語ったが、続くファウラーをシュートで見逃し三振に打ち取り、リズムを取り戻す。後続はきっちりと抑え、46,084人を集めたドームの雰囲気は徐々に緊迫感を帯びてくる。

 西は7回も先頭のカノに死球を当てたものの、4番のモーノーにはシュート、5番のヤシエル・プイグ(ドジャース)にはカットボールと手元で動く変化球で三振を奪い、バットに当てさせない。プイグは思わず、バットを折りそうなほどに悔しさをあらわにし、選手たちも記録を意識し始めた。

 この状況に「ブルペンで吐きそうだった」と明かしたのが、8回に登場した3番手の牧田だ。制球力の良いサブマリンも、さすがに緊張の色は隠せない。先頭のサルバドール・ペレス(ロイヤルズ)に、あわやホームランという大ファウルを打たれた末、四球で歩かせる。さらに1死後、ファウラーに対してはストレートの四球。思わぬ乱調にキャッチャーの嶋基宏(東北楽天)もマウンドに行って声をかける。

「自分のピッチングができれば」と気を取り直したアンダースローは持ち味を発揮。次のエスコバルを高めに浮くストレートを振らせてアウトにすると、後はピシャリと締めて、8回のスコアボードにも0を入れる。

 迎えた最終回、アンカーを託されたのは西野だ。「緊張は今までで一番」と極度の重圧がかかる中、マウンドに上がる。
「やることは一緒。ひとりひとり抑えていくしかない」
 ロッテでも今季は抑えを務めた右腕は、ア・リーグ首位打者のホセ・アルテューベ(アストロズ)をフォークで空振り三振に仕留める。

 続くカルロス・サンタナ(インディアンス)は一、二塁間へ強烈な当たり。だが、ここには日本の名手がいた。セカンドの菊池涼介(広島)が反応よく、バウンドを合わせてキャッチ。一塁へ転送してアウトにする。

 ついに大記録まで、あとひとり。打席には4番のモーノー。最後の難関に対しても西野に失投はなかった。1−1からの3球目はファースト正面のゴロ。山田哲人(東京ヤクルト)がガッチリと抑え、歓喜の瞬間が訪れた。

 長い日米野球の歴史で、日本が本場・米国のチーム相手にノーヒットノーランを達成するのは、もちろん初めてだ。相手がベストメンバーではなく、本気モードではない点を差し引いても快挙と言ってよい。小久保裕紀監督は「則本のピッチングはあっぱれ。他のピッチャーもプレッシャーがかかるところで、よくつないでくれた」と4投手を手放しで称えた。

 なかでも則本、西、西野は90年度生まれの同学年。前日はホテルで食事をした際、「皆で行こう」と話をしていたという。「いいかたちになって良かった」と西は白い歯をみせた。3年後のWBCで主力と目される若き侍たちが日本野球のレベルの高さを示し、ベースボールを凌駕した。

 第4戦も引き続き東京ドームで16日に行われ、予告先発は侍ジャパンが藤浪晋太郎(阪神)、MLBはクリス・カプアーノ(ヤンキース)と発表されている。

(石田洋之)