2019JリーグYBCルヴァンカップ決勝の北海道コンサドーレ札幌対川崎フロンターレの一戦が26日、埼玉スタジアムで行われた。試合は延長戦(3対3)でも決着がつかずPK戦の末、川崎Fがルヴァンカップを初制覇した。川崎Fは前半10分に札幌のMF菅大輝にゴールを許し、先制されたが前半終了間際にMF阿部浩之が押し込み同点で試合を折り返す。後半に入ると途中出場したFW小林悠が43分にゴールを決め、一時勝ち越す。しかし、試合終了間際にCKから同点に追いつかれた。延長戦に入ると川崎FはFKから失点を喫したが、再び小林の得点で追いついた。PK戦では川崎FのGK新井章太が2つのセーブを見せ、悲願の初優勝を成し遂げた。

 

 MVPはPK2セーブの新井(埼玉スタジアム)

北海道コンサドーレ札幌 3-3 川崎フロンターレ

          (PK4-

【得点】

[北] 菅大輝(10分)、深井一希(90+5分)、福森晃斗(99分)

[川] 阿部浩之(45+3分)、小林悠(88分、109分)

 

 川崎Fは過去4度、ルヴァンカップのファイナルに進出したが涙を飲んできた。シルバーコレクターの汚名を返上すべく、並々ならぬ熱意をもってこの一戦に挑んだ。

 

 ところが、前半10分。札幌の菅に強烈な右足ボレーから先制点を奪われる。これまでなら、ガタガタと音を立てて崩れかねなかったがリーグ戦を連覇した経験が生きた。焦ることなく平常通り、得意のパスサッカーを展開する。徐々にボール支配率を高め、相手陣地でサッカーを展開すると、前半終了間際だった。川崎Fは左CKから阿部が押し込み、同点に追いつき試合を折り返す。

 

 後半に入ると川崎Fの鬼木達監督は19分に司令塔のMF中村憲剛、28分に小林を投入する。このベテラン2人がのちに大きな仕事を成し遂げる。

 

 43分、小林が一瞬の隙をついた。ボールを支配しつつ、相手守備陣の穴を探す。MF大島僚太が左サイドでボールを持つと、小林が相手DFラインの裏に走る。大島の浮き球のスルーパスを小林がペナルティーエリア内で胸トラップ。ボールをショートバウンドさせつつ左足一閃。ゴール右隅を狙ったシュートはGKの逆を突き、ゴールネットに突き刺さし、逆転する。

 

 

 ところが、である。試合終了間際に今度は札幌に左CKから頭で押し込まれ、試合は延長戦に突入する。

 

 延長前半3分、札幌のMFチャナティップの単独で突破されるとDF谷口彰悟がペナルティーエリア手前で、ファウルをおかす。谷口にはイエローカードが提示されたがビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の判定の結果、決定機阻止とみなされ、一発レッドカードに判定がかわった。ひとり少なくなった川崎Fは、このFKをDF福森晃斗に直接決められた。

 

 川崎Fは数的不利の中、セットプレーから活路を見出した。延長後半4分、川崎Fの左CK。キッカーの中村は右足で鋭く曲がるボールをゴール前に供給。これをニアで小林が頭で逸らすと、ファーサイドのDF山村和也がシュートを放つ。このボールを再び小林が右ひざでゴールに押し込み川崎Fが何とか試合を振り出しに戻した。

 

 120分では決着がつかず、勝負はPK戦にもつれた。先行の川崎Fは4人目のDF車屋紳太郎のシュートがバーに嫌われたが、守護神の新井が2本連続ビッグセーブを見せ、PKスコアは5対4。ひとり少ない川崎Fが苦しみながらも5度目の挑戦でルヴァンカップの頂点に輝いた。

 

 MVPには2本のPKを止めた新井が選出された。川崎Fの守護神は、大味な試合をこう振り返った。

「3点も決められているので、MVPは喜べない部分もあります(笑)。PKを決められたら終わりの状況で止められた。それは良かったかなと思います。キッカーの相手選手の方が、プレッシャーがかかっていたので、それをうまく利用し、冷静のシュートコースに入ろうと思い、止めました」

 

 カップ戦ファイナルでは過去4度、悔しい思いをしてきた川崎F。司令塔の中村は「上から見る景色は格別」と喜びを爆発させ、「(メディアに)これでシルバーコレクターと言われなくなると思うので、嬉しい」と笑顔を見せた。

 

 観る者にとっては非常にスリリングだった今回のルヴァンカップ決勝戦。予選が終わると一発勝負のトーナメント方式になる白熱した戦いの最後にふさわしい攻撃的なゲームとなった。

 

(文/大木雄貴)