10月になり、急に涼しくなりました。スポーツの秋到来といった感じでしょうかね。さて、今月はカタールワールドカップアジア二次予選の2試合と、ルヴァンカップ決勝戦が行われました。それでは早速、代表戦から綴っていきましょう。

 

 日本代表は10日にホームでモンゴル代表と、15日にはアウェーでタジキスタン代表と対戦しました。結果はモンゴル戦が6対0、タジキスタン戦は3対0で勝利し、日本はグループFの首位をキープしました。相手が格下のため勝って当然といったところでしたが、モンゴル戦は先発メンバーに変化がありましたね。

 

 これまで、森保一監督は右サイドハーフのレギュラーにMF堂安律(PSV)を据えていました。ところが、このモンゴル戦ではMF伊東純也(ゲンク)を起用しました。伊東は前半だけで3アシストを記録し、采配がぴたりと的中しました。

 

 彼の長所は何と言ってもスピードと縦に仕掛けるドリブルです。私はDFでしたが、伊東のようなタイプは非常にやりにくい(笑)。対策としては伊東にボールを入れさせないことと、あらかじめスペースを確認し、しっかりとケアをすることが必要になってきます。

 

 伊東の存在が、守備に人数を割くモンゴルには効果的でしたね。内側に切れ込んでシュートを狙ったりすると、ゴール前はスペースがなくなり渋滞が発生します。ワイドに開き、相手DFを外におびき出し、クロスに合わせるのが森保監督の狙いだったように思います。サイドからクロスを上げられるとDFはボールを目で追いながら、マークを捕まえないといけなくなります。中で合わせる選手はその分、DFの死角を突きやすくなりますよね。伊東がアシストしたMF南野拓実(ザルツブルク)やFW永井謙佑(FC東京)のヘディングでのゴールはまさにそのパターンでしたね。日本代表にとって、オプションが1つ増えたことは収穫でした。これからも右サイドの競争は激しくなりそうです。

 

 白熱したルヴァンカップ決勝戦

 

 今年のルヴァンカップ決勝のカードは北海道コンサドーレ札幌対川崎フロンターレでした。札幌は初の決勝進出、川崎Fは過去4度決勝に駒を進めながら、涙をのんできました。26日に埼玉スタジアムで行われた決勝戦、結果は延長戦にもつれ込み3対3。それでも決着がつかず、川崎FがPK戦を制し、カップ戦を初制覇しました。

 

 リーグ戦とは違い予選を通過するとトーナメント方式になるカップ戦を制したことは川崎Fにとっては大きな意味があるでしょう。選手もスタッフも自信を深めたはずです。川崎Fは今後、ますますいやらしいチームになる気がします。

 

 さて、今回は台風19号や大雨の影響で移動やコンディション調整も大変だったように思います。川崎Fはルヴァンカップ準決勝で鹿島アントラーズと対戦しました。カシマスタジアムで行われたセカンドレグ。川崎Fは前日の朝一番に地元を出発し、鹿島に入りました。私の運営する施設で調整を行い、宿舎に向かい、翌日の試合に備えていました。

 

 その際、川崎Fの関係者や鬼木達監督から連絡をいただいたのですが、移動のタイミングやコンディション調整に神経を使っていました。川崎で調整メニューをこなし、鹿島入りするべきか、早い時間に鹿島入りし、鹿島で調整メニューをこなすべきか……。ほんの些細なことも勝敗を分ける原因になります。そこまでこだわっていた川崎Fはさすがだなと感じました。一方の札幌は拠点が北海道で飛行機移動が多いチームですから、天候の把握には普段から気を配っているはずです。両チームとも戦前からコンディション調整、移動のタイミングなどにスタッフ陣が細心の注意を払ったからこそ、あれだけ素晴らしい戦いが繰り広げられたのかなと、思います。

 

 今回、ラグビーワールドカップも台風19号の影響を受けました。それでも、地元の方々の協力もあり開催できた試合もあると伺っています。支えてくださる人々があって、スポーツ選手は試合ができ、ファン・サポーターは楽しくスポーツ観戦ができます。陰で大会運営をサポートする人たちには、頭が上がりませんね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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