11月はU-22日本代表、A代表の試合。そして、アジアチャンピオンズリーグ決勝や来季のJ1昇格チームが決まるなどサッカーのトピックスがたくさんありました。さらに、J1の優勝争いも白熱しています。まずは、来年夏に東京五輪を控えるU-22日本代表の試合から振り返りましょう。

 

 久保&堂安にいかに絡めるか

 

 U-22日本代表は同世代のコロンビア代表と親善試合を行い、結果は0対2の敗戦。南米チーム特有の技術や身体能力に圧倒される場面がありました。その反面、まだまだ伸びしろがあると感じましたね。DF組織の構築、個々の身体的な強さを身に付ける……。そしてもっと実践経験を積んでいかないといけないでしょう。

 

 この試合ではA代表組のMF堂安律(PSV)とMF久保建英(マジョルカ)が揃って先発しました。本番ではこの2人へのマークはきつくなるでしょう。いかに周囲の選手が彼らとうまく連係を構築し、プレーの中で絡めるかがカギを握りますね。東京五輪まで残された時間はそう多くはありません。しかし、監督、コーチたちが対戦相手に対する戦術を正確にわかりやすく選手たちに落とし込み、短い期間でも選手が理解・順応できる準備をすれば問題はないと感じます。

 

 

 続いてA代表です。カタールW杯アジア2次予選のキルギス戦はセットプレーからの2得点で勝利しました。その後のベネズエラ代表との親善試合ではキルギス代表戦から先発を8名入れ替えて臨みました。前半にFWサルモン・ロンドンのハットトリックを含む4失点。組織がガラッと変わったこともあり、致し方ないと感じます。前後左右にいる選手との位置関係の修整が難しかったのでしょう。たとえば、「右のパスコースを切れ」と指示をしても、プレーを積み重ねていなとどの程度、右のコースを切ればいいのか詰め切れないものです。

 

 初招集のMF古橋享梧(ヴィッセル神戸)が後半からピッチに立ちましたが、彼のスピードを生かせる場面が少なかったように映りました。すり合わせをできる時間もなく、かつメンバーを大量に入れ替えたので、すべてにおいて中途半端な試合になってしまいました。選手は世間から厳しい目を向けられます。これでは出場した選手がかわいそうですよ。選手選考を行った協会、監督、スタッフに責任があるように思いますね。

 

 手に汗握る白熱のJリーグ

 

 さて、Jリーグも終盤です。J2の柏レイソルと横浜FCが来季、J1に上がってきます。柏は最終節の対京都サンガ戦で、13対1で勝利しました。この点差での勝利はJリーグ史上最多ですし、もちろん13得点も最多です。特に8得点をマークしたFWオルンガは、アウォーズで特別賞か何かをあげた方がいいじゃないでしょうか。横浜FCはカズさんことFW三浦知良、MF松井大輔、MF中村俊輔らスター選手が所属しているので楽しみです。

 

 僕が解説を担当した水戸ホーリーホックは、残念ながらギリギリのところで昇格プレーオフ圏内に入れず7位でシーズンを終えました。最終節はファジアーノ岡山に1対0で勝利しましたが、6位のモンテディオ山形と勝ち点70で並び、得失点差も19で同じ。得点の数でわずかに劣り、涙をのみました。あと1点でも奪えていたら……。紙一重のところでプレーオフ進出を果たせず、選手たちがピッチで泣いていたのが印象に残っています。来季に期待したいです。

 

 さて、J1も面白くなってきました。現在、首位は勝ち点64の横浜F・マリノス、2位は同63のFC東京、3位は同60の鹿島アントラーズです。今週末に横浜FMが勝利すると鹿島の優勝はなくなりますが、僕は諦めていません! 横浜FMと対戦する川崎フロンターレが勝つと信じています。川崎Fを率いているのは鹿島で共にプレーした鬼木達です。僕の後輩が頑張ってくれるんじゃないでしょうか。……というか、ルヴァンカップの準決勝で鹿島に勝って川崎Fは決勝まで進み、初優勝したんですから、今度はこっちに協力してくれてもいいでしょう(笑)。J1の優勝はたった1の得失点差、たった1つのゴール差で左右されそうですね。予想が順当にいき、最終節で鹿島が優勝したら宝くじでも買おうかな!

 

 そうそう! 宝くじといえばひとつ皆さんにお知らせがあります。12月15日(日)に「成田市政施行65周年記念事業・宝くじスポーツフェアドリームサッカーin成田~日本代表OBがやってくる」に僕も参加します。午前中に少年少女サッカー教室を開催し、午後には成田選抜と日本代表OBが試合を行います。鹿島OBは僕、本田泰人、秋田豊、増田忠俊、鈴木隆行、柳沢敦、平瀬智行が参加予定です。詳細はこちらをご覧ください。多くの方が観戦に来てくれると嬉しいです。“守備とはこうやるんだ”と今の若い人たちに見せつけてきますね(笑)。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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