(写真:ムーディーのトライで幕を開けた3位決定戦 Photo by Clive Rose-World Rugby via Getty Images)

 1日、ラグビーW杯日本大会3位決定戦が東京・味の素スタジアムで行われ、ニュージーランド代表(オールブラックス)がウェールズ代表を40-17で下した。オールブラックスは前半4トライ4ゴールで28-10とリード。後半に2トライ1ゴールを加えた。オールブラックスのスティーブ・ハンセンHC、ウェールズのウォーレン・ガットランドHCという今大会限りで退任する指揮官の最終戦。ハンセンHCが白星で飾った。

 

 3連覇の道が途絶えたオールブラックスだが、チームを去るハンセンHC、キャプテンでNo.8キーラン・リードらの花道は飾った。

 

 イングランドに敗れた準決勝からスタメンを7人入れ替えた。メンバーの中にはリードをはじめ、CTBソニービル・ウィリアムズ、ライアン・クロティ、WTBベン・スミスら、この試合で代表を退くと見られる選手たちを起用した。対する故障者続出に悩まされるウェールズは9人の選手を準決勝から変更した。

 

 オールブラックスらしいアタックで先制点を奪った。5分、SOリッチー・モウンガ、リード、LOブロディー・レタリックがタックルを受けながら放るオフロードパスの連続で、PRジョー・ムーディーに繋ぐ。ムーディーは力強い突破でそのままインゴールに飛び込んだ。モウンガのコンバージョンキックも決まり、7点のリードを奪った。

 

(写真:S・バレットは強烈なタックルで持ち味を発揮した Photo by Richard Heathcote-World Rugby via Getty Images)

 追加点は司令塔コンビの巧みなアタックで魅せる。SHアーロン・スミスが外に振ると見せかけ、中にパス。これを受け取ったFBボーデン・バレットがディフェンスの間をすり抜けるようにかわした。虚を突かれたかたちとなったウェールズはB・バレットに触れることすらできなかった。モウンガが再びコンバージョンキックを決め、リードを14点差に広げた。

 

 ウェールズに1トライ1ゴールを返され、26分にはSOリース・パッチェルのPGで4点差まで迫られた。だがオールブラックスは力づくで押し返す。33分、レタリック、リード、FLシャノン・フリゼルで前進。最後はA・スミスからB・スミス。35歳のベテランBKは外にいくと見せかけ、鋭いステップで抜け出し、インゴールへ飛び込んだ。モウンガのコンバージョンキックで再び14点差に突き放した。

 

 オールブラックスは前半終了間際にも得点。決めたのは再びB・スミスだ。A・スミスからの長く鋭いパスを右のタッチライン際でキャッチし、迫りくるディフェンスをハンドオフで抑え、そのまま駆け抜けた。モウンガはこの日4本目のコンバージョンキックを成功し、18点の貯金をつくり、前半を終えた。

 

 後半2分にクロティのトライ、モウンガのコンバージョンキックで点を加えたオールブラックス。16分にはクロティ、A・スミス、ウィリアムズら5人を一気に交代させた。中でも日本でのプレー経験のあるウィリアムズには盛大な拍手で見送られた。

 

 ウェールズも意地を見せ、WTBジョシュ・アダムズが大会通算7トライ目をあげた。18点差に縮めたものの、35分にモウンガのトライでトドメを刺された。モウンガは15得点をあげ、通算54点で日本代表のSO田村優を抜き得点ランキングトップに立った。

 

(写真:誇りをかけ、3位決定戦に向かう選手たち Photo by Richard Heathcote-World Rugby via Getty Images)

 HCにとって同国を率いる最後の試合は、両軍合わせて8トライで締めくくられた。アジア初のW杯となった大会で表彰台の頂点には立てなかったが、最後に互いの誇りを存分に見せ合った。

 

 ハンセンHCは試合後の記者会見でこう切り出した。

「まずはチームがどれだけ誇りを持っているかを話します。準決勝で敗れ、“試合をしたくないんじゃないか”と思われた中で、ジャージーに誇りを持っているところを見せられた。これで誇りを持ってニュージーランドに帰れます」

 

 優勝候補の大本命に推されながら、3位という結果は満足できるものではない。だが華麗なアタックで日本のファンを魅了した。堅実なディフェンスで対戦相手を苦しめた。気高き黒の軍団は誇りを胸に日本を去る。

 

(文/杉浦泰介)