皆さん、こんにちは。2カ月ぶりの小野仁です。まずは台風19号による被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。各地に甚大な被害をもたらしたこの台風ですが、今も復旧半ばの地域が多くあります。1日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。


 さて、今回のコラムは私が現役時代にこだわった「食」について書いてみたいと思います。2軍生活が長かった私は、イースタンリーグの終了と同時に自身のシーズンも終わってしまうことがほとんどでした。その後は10月初旬から当時行われていた高知県内の黒潮リーグという若手主体の教育リーグに参加し、それが終了するとすぐに秋季キャンプのため宮崎県に行くのがオフシーズンの通例でした。

 

 高知や宮崎にいる期間が長く、厳しい練習の合間に息抜き、いや自分の体への投資として美味しいモノを食することに私は全精力を注いでいたと言ってもいいでしょう(笑)。現地では有名な食事処や地元の人たちが愛するお店などを巡るのが毎年の恒例となっていました。今回は高知と宮崎で食べた中で、最高に美味しかった食べ物を紹介したいと思います。

 

 まずは高知の「安兵衛(やすべえ)」という屋台で食べた餃子です。「高知で餃子?」と思われる方も多いと思いますが、最高の餃子でした。

 

 あれは練習を終えたある日の夕方のこと。先輩選手から食事に誘われ、連れて行かれたのが安兵衛でした。店に入りお尻のサイズに合わない小さな丸椅子に座り、先輩が頼んだ餃子が出てくるのを待ちました。やがて目の前に餃子が出され、そして食べた瞬間に衝撃的な美味しさに度肝を抜かれたのを今でも鮮明に覚えています。皮の表面はカリッとしていますが、噛むと肉汁と野菜の甘みが口いっぱいに広がりました。大きさもちょうど良く、油っこくなく、何個でもパクパク食べることができ、まさに病みつきになる餃子でした。その日だけで40個くらい食べたのを覚えています。先輩、ごちそうさまでした!

 

 続けて宮崎のお店を紹介しましょう。こちらは「明月館」という焼肉屋さんです。このお店で出される宮崎牛がとても美味しく、カルビ・ロース・ホルモンなど、全ての部位がこれまで食べてきたどの肉とも比較にならないくらい美味でした。タレも自家製にこだわった甘辛い味付けになっており、それも肉にぴったり。宮崎牛の地元で食べるせいなのか、新鮮さが感じられる歯ごたえと肉の味わい深さを体感したのを覚えております。多少、値は張った記憶がありますが、それでもまた食べたい! と思わせるお肉でした。

 

 余談ですがこのお店では、チームメイトや裏方さん、他球団の選手や報道陣の方々ともよく顔を合わせる機会があり、その当時お付き合いしていた彼女と焼肉を堪能していた際にも何人もの方々に遭遇し、冷やかされたという恥ずかしい思い出も、これを書いていてよみがえりました。

 

 今では宮崎牛のブランド価値が高まり、全国的にも知名度も高くなりました。宮崎市内には多くの焼肉屋さんができたようですが、昔、足を運んだお店が今でも変わらず繁盛していると聞くと、とても嬉しい気持ちになります。

 

 高知、宮崎には以前仕事で行きましたが、タイミングが合わず訪問することはできませんでした。次のチャンスがあれば懐かしい味を堪能したいと思っています。

 

 プロ野球選手だった時代は高知、宮崎だけでなく全国津々浦々に遠征し、その土地の名産を食する機会も多くありました。皆さんのキャンプ巡りや野球観戦のガイドになればと、紹介したいお店はまだまだたくさんあります。それはまたの機会に。

 

 それにしてもあの頃は、来季に向け毎日精進していた中、美味しいモノを食することは何よりのエネルギーになっていたんだな、と思います。人を良くすると書いて「食」です。子供の頃は「いただきます! と大きな声で言ってから食べなさい!」と怒られたものです。今更ながらそう言われたことの重みを感じています。食に対しても日々、感謝の心を決して忘れてはならないんだと、このコラムを書きながら改めて胸に刻みました。では、次回もどうぞよろしくお願いいたします!

 

<小野仁(おの・ひとし)プロフィール>
1976年8月23日、秋田県生まれ。秋田経法大付属(現・明桜)時代から快速左腕として鳴らし、2年生の春と夏は連続して甲子園に出場。94年、高校生ながら野球日本代表に選ばれ日本・キューバ対抗戦に出場すると主軸のパチェーコ、リナレスから連続三振を奪う好投で注目を浴びた。卒業後はドラフト凍結選手として日本石油(現JX-ENEOS)へ進み、アトランタ五輪に出場。97年、ドラフト2位(逆指名)で巨人に入団。ルーキーイヤーに1勝をあげたが、以後、制球難から伸び悩み02年、近鉄へトレード。03年限りで戦力外通告を受けた。プロ通算3勝8敗。引退後は様々な職業を転々とし、17年、白寿生科学研究所に入社。自らの経験を活かし元アスリートのセカンドキャリアサポートや学生の就職活動支援を行っている。


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