サントリーサンゴリアスに所属するラグビー日本代表(ジャパン)のCTB中村亮土は11日、都内のクラブハウスで共同取材に応じ、W杯日本大会を振り返った。繋ぎ役の誇り、大会中の苦労などを語った。

 

 中村は全5試合で背番号12を纏い、ジャパンのベスト8入りに貢献した。ロシア代表との開幕戦でWTB松島幸太朗のトライをオフロードパスで演出。続くアイルランド戦ではWTB福岡堅樹の逆転トライにも絡んだ。決勝トーナメント進出を決めたスコットランド戦では11タックルを記録し、タックル成功率は100%だった。攻守に渡る活躍でジャパンの躍進を支え、影のMVPとの声もある。

 

「ただ楽しかった」

 性格はポジティブ。プレッシャーとは無縁に思えたが、本人の自覚のないところで身体は消耗していた。「自分の中でどこか制限をかけていた。身体は正直なんでしょうね」。大会期間中はなかなか寝付けず、ドクターから睡眠導入剤を処方してもらっていたという。また円形脱毛症になっていたことも明かした。

 

 サントリーでは営業担当。酒販店と会社をコネクトする役割だ。ジャパンにおいては数少ない社員選手である。

「企業スポーツである以上、会社に支えられています。皆さんに勇気と感動を届けるには会社に近い存在でなければいけない。社員選手とはいえプロフェッショナルな成果を見せ、プロフェッショナルな行動をとらないといけないと思っています。会社とプロスポーツの繋ぎ役が社員選手。サントリーの素晴らしさを、ラグビーを通して伝えたい」

 

 彼の持ち場であるCTBというポジションは繋ぎ役の印象が強い。アタック面ではSO田村優と両サイドのトライゲッターを繋いだ。大会期間中はディフェンスリーダーからアタックリーダーに“転勤”。司令塔の補佐をした。中村は大会前に、こう語っていた。

「ビッグプレーは狙っていない。僕の場合、足が速かったりポテンシャルがずば抜けているわけもない。いかにチームとコネクションを取って、パイプ役として動けるかが重要なんです」

 ジャパン劇場の主演男優賞ではなかったかもしれないが、名バイプレーヤーとしてチームを支えた。

 

 来年1月から開幕するトップリーグの新シーズン。所属のサントリーで「今季は優勝しかない」と覇権奪回を目指す。個人ではベストフィフティーンを受賞したことがない。中村は「選ばれないキャラなんで」と笑い、こう続けた。

「“サントリーの12番は亮土だな”と認められる存在であればいい」

 

 4年後のフランス大会は「チャンスを掴むところまでいきたい。その後は運やタイミング。身を任せるだけ」と肩肘を張らない。迷わずブレない――。芯の強さが持ち味だ。

 

中村亮土(なかむら・りょうと)プロフィール>

1991年6月3日、鹿児島県生まれ。ポジションはCTB。中学時代まではサッカーに取り組み、鹿児島実高入学と同時にラグビーを始める。2年時、3年時にはSOとして2年連続の花園出場に導く。10年に帝京大へ進学。1年生ながら対抗戦の早大戦で公式戦デビューを果たす。4年時には主将として大学選手権5連覇に導いたほか、日本代表初キャップも記録した。14年にサントリーに入社。16−17シーズンの連覇を経験。W杯日本大会は全5試合にスタメン出場し、攻守に渡って貢献した。通算24キャップ。身長178cm、体重92kg。

 

(文・写真/杉浦泰介)