7日、全日本総合バドミントン選手権最終日が行われ、女子シングルスは山口茜(勝山高)が昨年度優勝の三谷美菜津(NTT東日本)を下し、初優勝を果たした。同種目で高校2年生の優勝は奥原希望(現日本ユニシス)以来、3年ぶり2度目の快挙となった。一方の男子シングルスは佐々木翔(トナミ運輸)が7年ぶり2度目優勝。男子ダブルスでは早川賢一&遠藤大由組(日本ユニシス)が平田典靖&橋本博且組(トナミ運輸)を破り、3連覇を達成。早川は松友美佐紀(日本ユニシス)と組む混合ダブルスも制しし、2年連続でダブルス2冠を果たした。女子ダブルスは福万尚子&與猶くるみ組(ルネサス)が初めて優勝した。
 クールな17歳の新女王

 優勝決定の瞬間も、新女王は淡々としていた。17歳の山口茜が世界選手権銅メダリストをストレートで撃破した。

 序盤から山口はスマッシュが決まり、ペースを握った。「最初に決まったので、決まらなくなるまで打とうと思った」と強打を軸に、ドロップショットも混ぜながら、緩急自在に相手を揺さぶった。第1ゲームは相手にペースを譲ることなく、スコア7−5から7連続得点で一気に突き放した。最後は17−11からの4連続得点で、このゲームを先取した。

 第2ゲームは一転、競った展開に持ち込まれた。11−10からは1点ずつの取り合いとなり、膠着した状態が続いた。3年連続決勝進出を果たした三谷に対し、山口は初の大舞台。しかし、その雰囲気に飲まれることなかった。リードを許しても慌てない。「離されずついていくことで相手が嫌そうだった」と我慢の時間帯も耐え、第1ゲーム同様にショットを巧みに使い分け、相手を翻弄した。「先行されても、競った場面でも気持ちの余裕を持てた。ラリーでいいプレーがいっぱい出せた」と胸を張る。

 山口は昨年、ヨネックスオープンを制し、BWFスーパーシリーズ(SS)の優勝を果たした。全日本総合ではベスト4に入り、ナショナルチームに選出された。今年は海外を転戦し、ユーバー杯やアジア競技大会を経験した。世界のトップ選手のプレーに触れ、「同じ人間。みんなミスをする。我慢をすれば勝てるかもしれない」と思えるようになったという。

 17歳とは思えぬ冷静沈着なプレーに、会場からは感嘆の声や大きな拍手が送られた。この日コートを支配していたのは、確実に山口だった。16−17の1点ビハインドの場面では、4連続得点で相手を突き放した。1点を返されたものの、最後は三谷の返球がネットを越えられず21−18でゲームセット。昨年度の女王をストレートで下した。新たに手にした“全日本女王”の称号にも山口は「あまり似合わない。普通の高校生だと思うから」とはにかんだ。

 6日には全日本総合5度の優勝経験を持つ広瀬栄理子(ヨネックス)が引退を表明。第一人者をコートを去り、新時代の幕開けを予感させる。山口、三谷のほかにも高橋沙也香(日本ユニシス)ら若い世代が台頭してきており、群雄割拠の様相を呈してきた。

 山口は再来週のSSファイナルズ(UAE・ドバイ)の出場が決まっている。「世界のトップしかいないので厳しい試合になる。自分らしい思い切ったプレーをしたい」と意気込んだ。ここでの経験が来年以降の成長にもつながるはずだ。進境著しい17歳の今後が楽しみである。

 男子複エース、頂上対決制す

 男子ダブルスの決勝は、4年連続同一カード。3連覇を狙う早川&遠藤組に対し、3年前に3連覇を達成した平田&橋本組というナショナルチームのトップダブルスの対決は1時間24分にも及ぶ熱戦となった。

 序盤から高速のラリーが続き、観客に息をもつかせぬ一進一退の攻防を見せた。第1ゲームは24−22で平田&橋本組、第2ゲームは22−20で早川&遠藤組がいずれもデュースの末にゲームをとった。

 どちらに流れが転ぶかわからない。ファイナルゲームまでもつれた我慢比べ。スコア11−10から抜け出したのは早川&遠藤組だった。遠藤が「最後まで諦めなかった。下がらず前に行けた」と、ディフェンディングチャンピオンが攻めの姿勢を失わなかったことが生きた。4連続得点で平田&橋本組を突き放す。

 第2ゲームの途中から「楽しくなってきた」という遠藤。後衛からのパワフルなスマッシュは徐々に威力を増していく。「遠藤のスピードが上がった。それに僕も乗ってこれた」と早川もパートナーのギアチェンジに呼応した。早川がネット際で押し込んで、チャンピンシップポイントを獲得。最後は遠藤の強打を相手が返しきれず、21−13で熱戦の終止符を打った。3連覇を達成の瞬間、早川はヒザをついて、ガッツポーズを作って雄叫びを上げた。

 早川&遠藤組は今大会、1回戦から苦戦した。遠藤は「1ゲーム目を終えても羽根の感覚も掴めず、2人のローテーションもひどかった」と振り返る。挑戦者の姿勢で向かってくる相手に受けに回ってしまっていた。ストレート勝ちでは勝ち上がっていたものの、納得のいく内容ではなかった。早川と遠藤はなかなか寝られない日々を過ごしたという。準決勝、決勝からは拮抗した相手と対戦し、攻めの姿勢で戦えた。苦しみながらも掴んだ3連覇。早川&遠藤組が男子ダブルスのエースであることを証明した。

(文・写真/杉浦泰介)