(写真:6回に生還したランナーを迎え入れるHondaベンチ)

 16日、第52回日本女子ソフトボールリーグ1部決勝トーナメント初日が神奈川・横浜スタジアムで行われた。1回戦第1試合はリーグ戦1位のビックカメラ高崎BEE QUEENは同2位のHonda Revertaと対戦。Hondaが3-1で勝利し、17日の決勝へと進出した。第2試合は4位のトヨタ自動車レッドテリアーズが3位の豊田自動織機シャイニングベガを延長8回タイブレーカーの末、3-0で下した。敗れた豊田自動織機は今季4位が確定。トヨタ自動車とビックカメラ高崎が17日に3位決定戦を行い、勝者が決勝へ進出。敗者が3位となる。

 

◇第1試合

 カーダ、先制弾&最終回零封と投打に活躍(横浜)

Honda Reverta       3 = 0000120

ビックカメラ高崎BEE QUEEN 1 = 0000100

勝利投手 フォード(1勝0敗)

敗戦投手 濱村(0勝1敗)

本塁打 (H)カーダ1号ソロ

    (ビ)北口1号ソロ

 

 昨季10位からのリーグ戦2位に躍進を遂げたHonda。旋風巻き起こしたリーグ戦に続き、決勝トーナメントでも相手を飲み込んだ。

 

(写真:3投手による継投策がうまくハマッた鈴木監督)

 先発はビックカメラ高崎はエースの上野由岐子ではなく勝股美咲、Hondaは今季最多勝のジェイリン・フォードではなく常盤紫文が起用された。ビックカメラ高崎の岩渕有美監督は「今季は上野のケガもあり、3人でシーズンを投げ抜いた。短いイニングで繋ごうと考えました」と説明。Hondaの鈴木幸司監督は「ビックさんを相手に1人で投げ切るのは難しい。3人で繋げた」と試合後に振り返った。
 
 大事な先発マウンドを任された両右腕は、その期待に応えた。3イニングを無失点に抑える好投を見せた。スコアボードにゼロを並べ、勝股は中野花菜に、常盤はフォードにマウンドを譲った。
 
 試合が動いたのは5回だ。この回、先頭打者のアリー・カーダがビックカメラ高崎の中野から左中間へのホームランを放った。アメリカ代表の一撃でHondaが先制に成功した。対するビックカメラ高崎もその裏の先頭打者・北口美海がライトへの一発で追い付いた。
 
 5回に中野からバトンを引き継いでいた濱村は続く6回もマウンドに上がった。しかし先頭打者の長谷川優理にライト前ヒットを許すと、続く田井静華を追い込みながらレフトオーバーのツーベースを打たれた。
 
 無死二、三塁となり、Hondaとしては絶好機を迎えた。控えるのは森山遥菜、胡子路代、佐野由貴美のクリーンアップだ。森山、胡子の凡退した後、佐野がひと仕事をした。「“点を取ってやる”と強い気持ちで臨みました」と打席に入り、7球目をセンターに打ち返す。打球はセカンド藤本麗に抑えられたが、ヘッドスライディングで内野安打をもぎ取った。テンポラリーランナー(二死で塁上に捕手がいる場合、代走を送れる)で二塁走者となっていた胡子は、一気にホームへ還ってくる好走塁を見せた。
 

(写真:“二刀流”の活躍を見せたカーダは現役アメリカ代表)

 大きな2点のリードをもらったフォードはその裏をゼロで抑えると、最後はカーダにバトンタッチ。カーダは2四球を与えたものの、力強いピッチングでピンチを断った。代打の中西舞衣、1番の大工谷真波を連続三振に切って取った。
 
 Hondaは4年ぶり2度目の決勝トーナメントで、初の決勝進出だ。今季は「楽しむソフトボール」をテーマに戦っている。キャプテンの森山も「楽しむこと」を再三強調した。最後まで笑って駆け抜けることができるのか。

 

◇第2試合

 アボット、8回15奪三振1安打完封(横浜)

トヨタ自動車レッドテリアーズ 3 = 00000003

豊田自動織機シャイニングベガ 0 = 00000000(延長8回タイブレーカー)

勝利投手 アボット(1勝0敗)

敗戦投手 エスコベド(0勝1敗)

本塁打 (ト)古澤1号2ラン

 
 負ければ終わりの決勝トーナメント第2試合は、トヨタ自動車が制した。
 
 ページシステムの決勝トーナメントは第1試合で負けたビックカメラ高崎が3位決定戦に回り、この試合の勝者と対戦する。トヨタ自動車と豊田自動織機が優勝するには3試合を勝ち抜かなければいけない。その第一関門でトヨタ自動車はモニカ・アボット、豊田自動織機はダラス・エスコベドと今季防御率1、2位を争った両エースを惜しげもなく投げさせた。
 
 アボットは今季11勝5敗。防御率は0点台と衰え知らずの大型サウスポーは、この日もアクセル全開だ。長身から繰り出す威力のあるストレートで押し、ドロップやチェンジアップを織り交ぜ緩急をつけた。5回途中まで豊田自動織機をノーヒットに抑えた。対するエスコべドもランナーを許しながらも要所を締め、トヨタ自動車に得点を与えなかった。
 

(写真:今季キャプテン2年目の古澤。貴重な一発を放った)

 試合は0-0のまま決着付かず、各回無死二塁からスタートする延長タイブレーカーに突入した。先攻のトヨタ自動車はルーキーの石川恭子が送れない。1死後、アリー・アギュラーは「彼女を支えるためにもいい球をいいスイングする」と新人のミスを取り返す。センター前に弾き返し、待望の先制点を奪った。
 
 続く古澤春菜はアギュラーを塁に置いたまま、レフトフェンスを越えるホームランを放った。「打った瞬間、いったと思った」。キャプテンの一発でリードを3点に広げた。その裏、アボットは2つの三振を奪い、反撃を許さず試合を締めた。
 
 昨季女王のトヨタ自動車は今季リーグで苦戦。4位で決勝トーナメントに進んだ。「今年は追う立場」と古澤。“下剋上”を目指し、昨季決勝を争ったビックカメラ高崎に挑む。
 
(文・写真/杉浦泰介)