(写真:96回目の早慶戦を制し、喜ぶ早大のメンバー)

 23日、ラグビーの関東大学対抗戦Aグループが東京・秩父宮ラグビー場で行われ、早稲田大学が慶應義塾大学を17―10で下した。6連勝の早大は、残り1試合で暫定トップに立った。24日に5戦全勝の明治大学が4勝1敗の帝京大学に敗れれば、早大の対抗戦連覇が決まる。一方、2勝4敗となった慶大は、 全国大学選手権に出場できる4位以内に入ることが厳しくなった。24日に行われる2勝3敗同士の筑波大学対日本体育大学戦が、引き分けに終わらない限り、21シーズン続いた大学選手権出場は途切れる。
 
 早大が伝統の一戦を制し、対抗戦連覇をグッと手繰り寄せた。
 
 長年、晴れの特異日という11月23日開催されている早慶戦。この日は生憎の雨模様だった。1万6000人を超える観衆を前に風に煽られ、横殴りの雨が降りしきる中、両校は熱戦を繰り広げた。
 
 先制したのは早大だ。4分、左サイドでボールを受けたWTB古賀由教(3年)が無人のスペースに蹴り出した。インゴール左に転がるボールを古賀自らが滑り込みキャッチ。そのままトライを挙げた。SH齋藤直人(4年)のコンバージョンキックは失敗。5点のリードを幸先良く奪った。
 
 古賀は16分にも左サイドを駆け抜ける。大外でボールを持つと鋭いステップで相手をかわすと、左隅に飛び込んだ。左手で叩き込むようなグラウンディングで、2本目のトライを挙げた。10点差をつけ、優位に試合を運ぶ。
 

(写真:ラインアウトからの見事なサインプレーで原田のトライが生まれた)

 既に3敗を喫している慶大は、大学選手権出場には負けられない。敵陣右でラインアウトを獲得するとサインプレーを見せた。HO原田衛(2年)が手前サイドにスロー。リターンパスを受けると、インゴール右隅にトライを決めた。SO中楠一期(1年)がコンバージョンキックを成功し、3点差に迫った。
 
 雨で滑りやすいせいか、両チームのハンドリングエラーが目立った。ラインアウトも互いにマイボールキープをなかなかできなかった。慶大は敵陣深くまで攻め込み、最後はショットを選択。中楠のPGで同点に追い付き、前半を終えた。
 

(写真:決勝トライの岸岡は「SOとしての仕事ができなかった」とゲームメイクに反省)

 後半先にスコアを動かしたのは早大だった。10分、SO岸岡智樹(4年)のパスを受けたCTB中西亮太朗(2年)が右サイドを突破。一旦、外に放ると見せ、再び岸岡へパスを戻した。岸岡は相手のタックルを切り、抜け出した。インゴール右隅へトライ。齋藤のコンバージョンキックも決まり、再び7点のリードに広げた。
 
 以降は慶大が攻め込む時間が続く。それでもインゴールを割らせない粘りのディフェンスを見せた。試合終了間際に岸岡がDGを狙うも、キックは左に外れる。そのままカウンターをくらったが、慶大のノックオンでノーサイド。早大が6連勝で対抗戦連覇に近付いた。今季不調の慶大相手に7点差の辛勝となったが、キャプテンの齋藤は「我慢の勝負となることは想定していました」と振り返る。「敵陣でペナルティーを犯し、キック処理。自分たちのミスで失点した」と反省。一方で再三のピンチを凌ぎ切ったことを相良南海夫監督は「成長を感じた」と評価した。
 

(写真:粘り強いディフェンスで慶大を後半無得点に抑えた)

 現時点で優勝の可能性を残すのは、6戦全勝の早大に加え、1試合消化の少ない5勝0敗の明大と4勝1敗の帝京大だ。24日に明大が帝京大に敗れると、全勝は早大のみ。その場合、最終節の明大戦で敗れても、1敗で並び同校優勝となる。いずれにしても明大戦で勝利すれば文句なしの2連覇である。齋藤は「対策するよりも1週間で成長したい」と語った。
 
 慶大は、伝統の早明戦で意地を見せたものの、わずかに届かなかった。キャプテンのCTB栗原由太(4年)は「慶應らしさを突き詰めようと戦いました。手応えはありましたが、7点差は力量の差」と唇を噛んだ。これで22年連続の大学選手権出場は厳しくなった。24日に筑波大学と日本体育大学は2勝3敗同士が対戦。どちらかが勝利すれば、両校との直接対決に敗れている慶大は、大学選手権出場を逃すこととなる。
 
(文・写真/杉浦泰介)