13日、第94回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が横浜・日産スタジアムで行なわれ、ガンバ大阪(J1)がモンテディオ山形(J2)を3−1で下して5年ぶり、3度目の優勝を果たした。G大阪はリーグ、ヤマザキナビスコカップと合わせて00年の鹿島アントラーズ以来、Jリーグ史上2クラブ目の三冠達成。試合は前半4分、G大阪がFW宇佐美貴史のゴールで先制すると、22分にはFWパトリックの追加点でリードを広げた。後半は攻勢を強めた山形に押し込まれ、17分、FWロメロ・フランクに決められて1点差に詰め寄られた。それでも40分、宇佐美のこの試合2点目が生まれ、追いすがる山形を振り切った。

 宇佐美、三冠導く2G1A(日産ス)
ガンバ大阪 3−1 モンテディオ山形
【得点】
[G大阪] 宇佐美貴史(4分、85分)、パトリック(22分)
[山形] ロメロ・フランク(62分)
 G大阪を頂点に導いたのは22歳の生え抜きアタッカーだった。G大阪が08年、09年大会を連覇した時、高校生だった宇佐美はスタンドで試合を観戦していた。中心としてチームを頂点に導くMF遠藤保仁を見て、宇佐美は「自分もいつかガンバを牽引していく存在になりたい」と誓ったという。それから5年後、22歳となった宇佐美は、G大阪の3ゴールすべてに絡む活躍で天皇杯優勝、そして三冠達成に貢献した。

 試合は開始早々に動いた。前半4分、宇佐美が先制弾を決めた。自陣からのFKをGK東口順昭が前線へフィードし、パトリックが頭で山形ゴール方向に逸らした。これを宇佐美が胸でトラップし、反転しながら右足でシュート。GKが前に弾いたボールを宇佐美が冷静に押し込んだ。準決勝の清水エスパルス戦で2ゴールを挙げた男が、決勝という大一番でもいきなり結果を出した。

 22分には追加点をアシストした。宇佐美はピッチ中央で自陣からのクリアボールを相手選手と競り合いながらキープすると、そこからドリブルを開始。一気にPA手前までボールを運んでから、PA内左にいたパトリックへつないだ。受けたパトリックは得意の右足で豪快にゴール右上へ突き刺した。

 エースの活躍に触発されたのか、MF倉田秋、MF大森晃太郎も積極的にシュートを放つなど、G大阪がペースを掴んだまま試合を折り返した。

 後半序盤もG大阪が山形を押し込む展開だった。1分、パトリックがPA外からミドルシュート。14分には細かいパスワークから抜け出した宇佐美がゴールを狙った。しかし、いずれも枠をとらえられなかった。

 なかなか試合を決めきれないでいると、攻勢を強めてきた山形の反撃に遭った。17分、左サイドからのクロスをニアサイドのMF松岡亮輔にスルーされ、中央にいたロメロ・フランクにゴール右へ流し込まれた。山形サポーターの声援が大きくなる。18分には、FWディエゴとロメロ・フランクのコンビネーションから、ディエゴにゴール左下を狙われた。しかし、これは東口がかろうじて弾き出した。

 G大阪が3点目を奪って試合を決めるか。それとも山形が追いついて、試合をひっくり返すか。
 スタジアムの緊張感が高まる中、この男が勝負を決めた。40分、宇佐美がPA手前で遠藤からのパスを受け、右足を振り抜いた。シュートはDFの足に当たってゴール右上へ吸い込まれた。ようやく手にした3点目。長谷川健太監督は「貴史が試合を決めてくれた」とエースの働きを称えた。

「(自分がチームを牽引する姿を)少なからず、ファン・サポーターに見せられたかなと思う」
 宇佐美は感慨深そうに、この日の自身のプレーを振り返った。今季は2月に左足を負傷し、開幕には間に合わなかった。エースを欠いたチームは不振にあえぎ、宇佐美復帰後もなかなか調子が上がらなかった。しかし、徐々に宇佐美の調子が上がるに伴い、チームも結果が出始めた。そしてナビスコ杯、リーグ、ついには天皇杯をも制して史上2クラブ目の三冠をなし遂げた。

 宇佐美は三冠達成の要因に「タイトルを意識できない状態にまで落ち込んだことで、目の前の1試合に集中して戦ってきた」ことを挙げた。そして「ガンバが常勝軍団であり続けるために、来季こそが大事」と気を引き締める。来季はアジアチャンピオンズリーグもあり、日程は過密になる。その中でG大阪が勝ち続けるには、宇佐美を含めた選手個々の更なるレベルアップが不可欠だ。宇佐美もそのことは強く自覚している。
「個人としてはまだまだ結果も内容も満足いくシーズンではなかった。向上心を持ち、チームを引っ張って、もっと圧倒的な結果を示せるようにやっていきたい」

 この日は日本代表のハビエル・アギーレ監督が視察に訪れていた。宇佐美はまだアギーレジャパンに招集されたことはないが、アジアカップの予備登録メンバーには入っている。2ゴール1アシストでチームを勝利に導いた彼の姿はアギーレ監督に強烈な印象を与えたに違いない。果たして、宇佐美のアピールは実るのか。アジア杯のメンバーは15日に発表される。

(文・鈴木友多)