2005年に設立され、10年目のシーズンを終えた四国アイランドリーグplusの10周年記念式典が13日、高松市内で開かれた。式典には今季、中日で新人王争いに加わる活躍をみせた又吉克樹投手(元香川)や、香川でプレーし、昨季限りで現役を引退した元阪神の桜井広大さんらOB、関係者、スポンサー400人が出席した。リーグの鍵山誠CEOは「10年継続という目標が達成できたと同時に、多くの仲間や同志でアイランドリーグに新たな可能性が生まれてきた」と挨拶。来季はリーグのシステムを大幅に変更し、夏場に北米独立リーグに参戦することを表明した。
(写真:又吉投手(左)、桜井さん(中央)とのトークショーに二宮清純も参加した)
 10年の実績をベースに、次の10年、20年へ向けてアイランドリーグが、ついに世界に飛び出す。
 式典内で発表した鍵山CEOの構想によると、来季は6〜7月にかけて、リーグ選抜チームを結成して渡米。独立リーグの「アトランティックリーグ」と「キャンナムリーグ」に参戦する。日本の独立リーグではBCリーグが対抗戦形式で米独立リーグと交流試合を行ったケースはあるが、長期間の遠征は例がない。

 アトランティックリーグは米国の独立リーグでもレベルが高く、今季は元千葉ロッテの渡辺俊介や元北海道日本ハムの坪井智哉らがプレーしていた。MLB、NPBや韓国プロ野球などに所属していた選手も多い。キャンナムリーグはカナダと米国にまたがるリーグで、リーグ選抜の試合も公式戦として組み込まれ、17試合を行う。両リーグでの試合数は2カ月で20〜25試合になる見込みだ。

 そのため、今季まで4〜6月に実施していた前期、7〜9月までの後期シーズンはそれぞれ短縮され、4〜5月、8〜9月と約2カ月間にまとめて公式戦を展開する。期間は短くなるものの、鍵山CEOは「これまでの前期40試合、後期40試合という日程に可能な限り近づける」と実戦機会は減らさない意向だ。

 11年目の大胆な改革の目的を鍵山CEOは大きく2つに分けて説明する。ひとつは「選手強化」だ。リーグでは今秋のドラフト指名選手も含め、45名の選手をNPBに送り込んできたが、鍵山CEOは「入ってすぐ活躍できる選手を輩出したい」と次のステップに進む必要性を感じている。現状、リーグの公式戦開催は週末を中心に週3〜4試合と緩やか。日程を圧縮することで、連戦が続くNPBやMLBに近いスタイルでシーズンを戦い抜く力を養う。

 さらに選抜チームに選ばれたトップの選手たちは北米の慣れない環境でもまれる中で体力、技術、精神力を培える。向こうでスカウトの目に留まれば、一気にMLBへの道も開けてくる。また日本でプレーを希望する外国人をスカウトして、アイランドリーグに呼ぶといった人的交流も可能だろう。こうして、よりレベルの高い素材を集め、磨き上げることで育成リーグとしての価値を高めたい考えだ。

 もうひとつの狙いは「球団の健全経営化」だ。リーグは初年度には3億円の赤字を出したが、球団を分社化し、単年黒字を計上するところまで経営は改善されてきた。しかし、依然として赤字が続いている球団もある。

 黒字化には当然ながら収入を増やし、支出を減らすことが求められる。まずコスト面ではシーズンを短縮することで選手の給与を支払う期間も短くなる。またチームを運営する上での経費も削減できる。そして、6〜7月のリーグ選抜の北米遠征期間中には、残された選手を活用してイベントや地域貢献活動に取り組める。これまでシーズン中にはできなかった事業展開で収入増を図ろうとの試みだ。

 鍵山CEOは「健全経営とさらなる選手の育成に注力し、世界のベースボールマーケットでの地位向上と四国をベースとするグローカルビジネスの確立を目指す」と来季以降のビジョンを打ち立てた。四国アイランドリーグの名称で産声をあげたリーグは、現在、「四国アイランドリーグplus」と“plus”が名前につけられている。文字通り、四国を拠点としつつ、さまざまなプラスを生み出す存在へ――。10年の節目に、リーグは大きな転換点を迎えた。

 式典に参加した又吉投手はルーキーイヤーでリーグ2位の67試合に登板。中継ぎながら9勝をあげ、イニング数を上回る104奪三振を記録した。シーズン後には休む間もなく1カ月半にわたってドミニカのウインターリーグへ修行に出た。「ドミニカでもう1度、独立リーグ時代の気持ちを思い出させてくれた。同世代にも100マイル(160キロ)以上を投げるピッチャーがたくさんいた」と異国の地で来季へ大きな刺激を受けた。

「143試合すべてにベンチに入って、今年のシーズンの登板数を超えられるようにしたい。そうすれば最優秀中継ぎのタイトルも見えてくると思う」
 リーグ出身者では角中勝也(千葉ロッテ、12年首位打者)以来となるタイトル獲得を目指し、来季もフル回転を誓った。

 又吉投手とともに登壇した桜井さんは昨季限りで現役を退いた後、現在は兵庫県明石市の「バトルエクサ ベースボールラボ」という塾で子どもたちに指導を行っている。阪神を戦力外後、2年間、NPB復帰を目指して四国で汗を流した日々を「野球ができることへの感謝を思い出させてくれた」と振り返る。指導者への道を歩み始め、「いつか、何らかのかたちで恩返しがしたい」とリーグへの思いを語った。

 式典では10年でリーグからNPBに進んだ他の選手、審判、スタッフも紹介され、代表して又吉投手が「これから何十年も独立リーグが続くことが僕たちにとっても誇りになる。これからもよろしくお願いします」と鍵山CEOにサプライズで花束を贈呈する一幕もあった。セレモニーの中締めでは初年度からリーグで監督を務めた香川・西田真二監督が挨拶。「(愛媛の監督をしていた)1年目に中谷(翼、元広島)を何とかNPBに入れたいと、広島の松田(元)オーナーのところまで本人を連れていった」と秘話を披露し、「今後も選手のプレーを観に球場に足を運んで、連帯意識を高めて応援してほしい」と継続してのサポートを呼びかけた。

 また、10シーズンで在籍した選手の中から、ファン投票による歴代ベストナインも発表。投手部門に又吉、指名打者で桜井が選ばれたほか、現在、東京ヤクルトの星野雄大が捕手、埼玉西武の水口大地が二塁手で選出された。

「あなたが選ぶ四国アイランドリーグplus10周年歴代ベストナイン」は以下の通り。

【投手】
又吉 克樹(香川2013−中日2014〜)
【捕手】
星野 雄大(香川2012−東京ヤクルト2013〜)
【一塁手】
(森田)丈武(香川2006〜08−東北楽天09〜11) 
【二塁手】  
水口 大地(長崎2008〜10−香川11〜12−埼玉西武13〜)
【三塁手】  
松嶋 亮太(徳島2011〜)
【遊撃手】  
大原 淳也(香川2010−横浜DeNA11〜12−香川13〜14)
【外野手】
西村 悟(徳島2006〜07−福岡08〜09−愛媛09〜10)
【外野手】  
YAMASHIN(山本 伸一)(高知2006〜09)
【外野手】
梶田 宙(高知2005〜14)
【指名打者】
桜井 広大(阪神2002〜11−香川12〜13)

(石田洋之)