(写真:立川<右下>ら全日本学生柔道大会の優勝メンバー)

 立川桃は愛媛県の柔道強豪校・新田高校に入学し、柔道家として力をつけていった。朝練習でのインターバルトレーニング、レベルの高い先輩や同級生と乱取りをすることで、どんどん技術を吸収していった。

 

<2019年11月の原稿を再掲載しています>

 

 父・昭宏は娘の成長に驚いたという。

「体格も高校に入学して、変わりました。入学当初は52キロ級でしたが、1年が終わる頃には63キロ級になっていたと思います」

 

 そして迎えた高校1年の3月、皇后杯の愛媛県予選。無差別級の大会で2位に入り、4月に行われる本戦出場の切符を勝ち取った。立川は「自分も少しは強くなったのかな」と手応えを感じた。本戦では自分の階級と大幅に違う相手との対戦だった。結果は1回戦敗退だったが、「相手は自分の階級ではないので、落ち込んでも意味がない」と気丈に前を向いた。

 

 高校2年の春の全国高校柔道選手権大会。立川は全国大会で初めて3位入賞を果たす。立川はこのあたりから「技が決まるようになってきました」と言い、こう続けた。

「一本を取れる柔道ができるようになってきたんです。大内刈りで勝つことが増えたように思いますね」

 

 高校3年時は、「全国タイトルを獲得」を目標に掲げたが、全日本カデでは準優勝、インターハイでは5位に終わるなど、涙をのんだ。悔しさを胸にさらなる成長を誓った立川が次の進路先に選んだのが東海大学だった。同大学女子柔道部の監督はアテネ五輪78キロ超級金メダリストの塚田真希だ。立川は高校時代と大学での指導の違いを口にした。

 

「高校生までは、指示していただいたことをこなせば良かった。大学では自分で考えることが求められています。塚田先生からは“自分の意見をはっきりと言いなさい”と。私としては塚田先生と出会えたことがとても大きいです」

 

 快進撃の背景

 

 自主性を重んじる環境が、立川の成長をさらに加速させた。個人戦では全日本ジュニア柔道体重別選手権の女子63キロ級で3位。団体戦では全日本学生優勝大会・女子5人制と全日本体重別団体優秀大会の2冠に貢献した。

 

 4月から現在までを立川は「今まで勝てなかったので、うまくいきすぎている」と振り返った。勝因を問うと「メンタル面の変化が大きい」と答えた。団体戦ではメンバーに入れない選手が大勢いる。その選手の思いを胸に戦う。簡単に負けることを許されない、という責任感が彼女の快進撃の背景にあるのだろう。

 

 父・昭宏は娘の戦いぶりを、こう称賛した。

「応援してくれる先輩、出場できない先輩の気持ちも汲んで人一倍やらないといけない。体つきもさらによくなった。この1年はよく頑張ったと思います」

 

 腰の怪我により講道館杯は欠場したものの、新たに取り組んでいることがある。股関節を柔らかくし、肩甲骨の可動域を広げるトレーニングを始めた。父は、これにより立川の柔道が変化するのでは、と語った。

 

「桃は少し、体が硬いんです。肩甲骨の可動域が広がれば、技も増えると思います。それを楽しみに待っていますよ。怪我もすべてがマイナスなわけではない。体を休めることも大事ですし、怪我がなかったら、このトレーニングに取り組んでいなかったかもしれませんから。東海大学のトレーナーの方々はしっかりしているので、安心して任せています」

 

 立川の変化が非常に楽しみである。「大内刈りで勝つことが多い」と話すがこれから先、もっと技のレパートリーが増えれば戦いの幅も広がるはずだ。彼女は今後さらに飛躍する可能性を秘めている。あどけなさの残る若き柔道家は、どんな景色をイメージしているのだろうか。

 

(おわり)

 

<立川桃(たつかわ・もも)プロフィール>

 

2001年1月6日、愛媛県四国中央市生まれ。階級は63キロ級。川之江柔道会-川之江北中-新田高-東海大。3歳で柔道を始める。高校2年時、全国高校柔道選手権大会63キロ級で3位入賞。同年、全日本カデ柔道体重別選手権大会同級で準優勝。翌年4月に東海大に入学すると、団体戦のタイトル獲得に貢献。個人戦では全日本学生体重別選手権大会で優勝を果たすなど、頭角を現している。

 

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(文/大木雄貴、写真/杉浦泰介)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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