セガサミー硬式野球部の初芝清監督は、就任1年目で見事に結果を出した。この11月、初芝が社会人野球の二大タイトルのひとつである日本選手権でチームを準優勝に導いたことは記憶に新しい。2005年創部のセガサミーは、これまで日本選手権に2回出場し、いずれも初戦負け。戦前の評価は高くない中での快進撃だった。プロで17年プレーした経験を持つ指揮官に二宮清純がインタビューした。
二宮: セガサミーからはどういった経緯で声がかかったんでしょうか?
初芝: 1本の電話ですね。現在、副部長をやっている撰田篤から監督就任の話をもらった。撰田はもともと­東芝府中の出身ですので、自分が現役の時、自主トレ行っている時­のマネージャーだったんです。急な話だったので、「ちょっと待って­くれ­」と少し時間をもらって考えたんです。かずさマジックでコーチを経験していたので、社会人野球の面白さはわかっていました。監督という立場で、思い切ってやってみたいなというのはあった。その後、「やらしてほしい」と返事をしました。

二宮: 今年の夏は都市対抗にも出られましたが、監督を引き受けた時から目標は日本一ですか?
初芝: そうですね。このチームは創部して9年で7回、都市対抗に出ている。最初の頃は出るだけでもよかったと思うんですが、常に出るようになったら、それ以上のものを会社も求めてきます。ですから優勝を本当に考えるというチームになっていますね。都市対抗に出るのはもう通過点。そこの意識をもっと高く持たなければ、上には行けませんから。

二宮: そういった点は選手たちにも伝えていると?
初芝: もうとにかく日本一になることしか考えることはないですね。設備はほとんど日本一に近いですよ。社会人でここまでの設備というのはなかなかない。だから選手たちには「会社は日本一の環境は与えてくれているよ。あとは自分たちが日本一になるしかない」ということは最初から言っていますね。

二宮: セガサミーの寮は、都心から離れており、ネオン街の誘惑もない。野球に集中できるいい環境ですよね。
初芝: 自分も寮に1部屋もらって住んでいます。自宅も遠くないので、通おうと思えば通えますが、だいたいが1日がかりですので。

二宮: では初芝さんが、寮長代わりですね。
初芝: いえいえ、それはないですね。いる時でもいない感を出していますから。野球以外では選手たちにリラックスしてもらいたい。だから僕は、ここで夕飯は食事摂っていないんです。そこで一緒になっちゃうと選手が緊張しちゃう。だからもう自分は夕飯だけはもう別で。時にはコンビニの弁当だったりしますね(苦笑)。

二宮: さて、プロ野球の世界に目を移すと、来季は広島の緒方孝市監督、東北楽天の大久保博元監督、埼玉西武の田辺徳雄監督などが新たに就任するなど、プロ野球の指揮官も若返りました。
初芝: デーブと田辺は同い年。広島の前監督・野村謙二郎も一緒ですね。僕らの世代は丙午(ひのえうま)なので少ない。当然、プロの同年代も人数が少ない中で3人がプロの監督になった。これはとても励みになります。

二宮: 初芝さんが率いていることもあり、セガサミーの注目度は高いと思います。日本一になれば、チームももちろんですが、初芝さんの株も上がりますね。プロからのオファーが相次ぐのでは?
初芝: ハハハ。そうなってくれればいいですね。

<20日発売の小学館『ビッグコミックオリジナル』(1月5日号)に初芝監督のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>