不思議な感じがする。天皇杯のない年末年始。国立競技場では迎えられない新しい年。高校サッカーからJの強豪に入ったような選手にとっては、大人になってから初めて体験する静かな年末年始かもしれない。せっかくの機会だから、“一般的なお正月”を存分に満喫してもらえたら、とも思う。
 さて、14年のJリーグはガンバ大阪の3冠で幕を閉じた。正直、開幕戦を見た時には「降格を免れるのが精いっぱいかな」と見ていたのだが、パトリックが加入してからの躍進ぶりには目を見張らされた。

 遠藤や今野、宇佐美も素晴らしかったが、個人的にはパトリックの強さと、終盤で見せた長谷川監督の決断力が大きな意味を持っていたと見る。

 一方、土壇場まで首位であり続けた浦和の破滅的な終幕も、強烈な印象を残した。以前にも書いたが、強烈すぎる痛みは、必ずやそれに倍する喜びになって返ってくるのがサッカーの世界である。ファンが望み、フロントが応えようとするのであれば、必ずや近い将来、赤い帝国が築かれることになろう。

 14年のJリーグは近年になくフロントの重要性に注目が集まった年だった。

 トップ主導でフォルランという大物を獲得し、ビッグクラブへの階段を上り始めたかに見えたセレッソは、唯一、監督選びを間違えたことで、優勝どころかJ2降格の憂き目にあってしまった。

 優勝を狙える位置につけていながら、監督を交代させるという決断を下した鳥栖も大きな話題を呼んだ。あの決断はプラスとマイナス、どちらの方が大きかったのか。答えが出るのは来年以降になろう。

 とにかく、もつれにもつれたリーグ終盤の争いは、ほとんど劇画レベルと言ってもいいほどの面白さだった。W杯は惨敗に終わったが、そのダメージをほとんど感じずに済んだのは各クラブの頑張りの賜物である。

 先週末行われた天皇杯決勝は、関東に縁のないチームの対決だったにもかかわらず、5万人近い観客を集めた。いよいよ、Jは日本に根付きつつある。

 ガンバの3冠は、途方もない偉業である。ただ、日本でしかありえない偉業でもあった。世界の伝説的なチームでさえなかなかできない3冠を、2部からあがってきたクラブがいきなり? 成熟したリーグではありえないことが、成熟してきたはずの日本で起きた。なぜか。その理由を考えるのは、クラブの仕事ではない。

 Jリーグの仕事である。

 来年、Jリーグは2シーズン制導入に踏み切る。わたしはナンセンスだと思うが、同時に、新しいことに取り組もうという姿勢は評したいとも思う。そして、もっと大きな“新しいこと”に、取り組む15年になってくれることを期待したい。

<この原稿は14年12月18日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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