香川オリーブガイナーズの監督を退任し、「次は何を?」と各方面から聞かれていましたが、ようやく正式にお知らせすることができます。来季は社会人野球のセガサミーで監督を務めることになりました。初めての社会人野球の監督ということで新鮮な気持ちであり、新たな挑戦に身が引き締まる思いです。肩書は変わりますがこのコラムは「社会人編」として続けていきますので、引き続き愛読のほどよろしくお願いいたします。

 

 還暦で新たな挑戦

 四国アイランドリーグplusの香川で指揮を執った13年、振り返れば「やりきった!」という思いしかありません。広島カープやアイランドリーグで築いた指導者としての礎をいかし、長年の目標、そして夢だった社会人野球の指揮官を全うしたいと考えています。

 

 アイランドリーグで過ごしたことはいい思い出ばかりです。直近の教え子である又吉亮文、三好一生が沖縄に新設されたプロ球団・琉球ブルーオーシャンズに入団しました。また香川からNPBへ進んだ亀澤恭平(元中日)、松本直晃(元埼玉西武)も同球団へ。香川OBが新天地で野球へ情熱を燃やし続ける。私にとっても、彼らの挑戦は心強く、刺激を受け奮起させられます。

 

 独立リーグと社会人野球、同じ野球ですが当然、中身は異なります。アイランドリーグは前期後期、年間約70試合を戦い、その中で優勝を目指します。リーグ戦ですから勝ち負けを繰り返し、その中で選手を育成し、トータルでの勝敗を競う。一方の社会人野球。最大の目標は花形である都市対抗野球大会です。そこを目指し予選を勝ち上がっていくため、1敗のダメージたるや……。ひとつひとつの試合を会社のため、地域のため、そして自分のために全力をかけて戦っていくことになります。

 

 セガサミー野球部はとても良い環境が整っています。寮はNPB球団に負けない充実した施設であり、宮崎でキャンプを張ることもあります。選手はそうした環境で鍛えられ、さらに社会人としてCSR(企業社会貢献活動)にも取り組んでいます。アイランドリーグの選手も練習の合間に地域貢献活動を実施していたので、こうした地域密着という面は似ている部分はあるでしょうね。

 

 セガサミーを含め社会人のトップチームはアマチュアのエリートコースを歩んできた選手が多く、レベルも高い。そうした選手が野球に集中できる環境で切磋琢磨している。そのチームで指揮を執ることは非常に光栄です。私もアマチュア時代は高校(PL学園・大阪)では甲子園優勝を果たし、大学(法政・東京六大学)ではベストナインに5回輝き、さらに日本代表として日米大学野球にも出場しました。プロではボチボチだった私ですが、アマチュアの実績なら名球会ですよ(笑)。

 

 監督に就任し、セガサミーの選手ではキャプテンの宮川和人と顔を合わせました。彼は東洋大の出身で、高校は私の後輩にあたるPL学園。「頼むぞ」と声をかけたんですが、なぜか相当にビビっていました。人のことを鬼かなにかと勘違いしているんでしょうかね(笑)。セガサミー野球部はコーチ陣も優秀で、選手は会社の代表としての自覚、そして家庭のある選手は家族のためにという意気込みもある。チーム全体が勝利に向け高いモチベーションがあり、監督業のスタートする1月が楽しみです。

 

 ただ楽しみと言いつつ、不安もあります。アマチュア最高峰の社会人野球の監督という大役を任されたこともそうですし、大学時代以来となる都会生活への不安。こっちの不安の方が大きいかもしれません(笑)。13年過ごした高松の町は渋滞もなくのんびりとした所だったので、早く都会生活に慣れないと。30年ぶりに武蔵小杉の法政野球部の寮を訪れましたが、あの辺りも都会になっていて驚きました。アマチュア球界には六大学時代の知り合いも多くいるので、その点では不安はありません。

 

 来年、私は還暦を迎えます。干支がひと回りし新しく生まれ変わるという年に、こうして新たな役目を任されるのも何かの縁だと思っています。私も"新社会人"になる気分です。セガサミーのあの鮮やかなユニホームに袖を通し、選手全員チーム一丸となり、てっぺんを目指します。東京はJR東日本、鷺宮製作所、東京ガス、明治安田生命など手強いライバルが数多くいます。繰り返しとなりますが、今回の大役に身が引き締まり、そして武者震いする思いです。

 

 お世話になった香川の皆さん、そしてこれからお世話になるセガサミーの関係者やファンの皆さま。新たな挑戦も皆さんの後押しをいただければ、これほど心強いことはございません。応援のほどよろしくお願いいたします。

 

<このコーナーは毎月1日更新です>


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