第929回 公共トイレの”こもりスマホ”撲滅策を

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 1960年代から80年代にかけて「アフタヌーンショー」(テレビ朝日系)という番組があり、その中の「なっとくいかないコーナー」はテレビ史に画期をなすものだったと個人的には考えている。ジャーナリストのばばこういちさんが、「納得いかない」という市民の声に応えるかたちで当局を追求し、原因を探り、改善を迫るという立て付けの内容だが、当局とのスリリングな応酬こそは“お茶の間社会派”たるばばさんの真骨頂だった。

 

 そこで今週は東京五輪・パラリンピックを7カ月後に控え、個人的に「納得いかない」事案をひとつ提示したい。それは「開かずの踏み切り」ならぬ「開かずのトイレ」である。過日、私もJR某駅のトイレでそれを経験した。

 

 個室トイレの前には長蛇の列。3分、5分、10分…。その間、いくつか扉が開いたが、ほとんどは閉まったままだ。中には諦めて、列から離れていく者もいた。

 

 じゃあ、あと5分待とう…。列はいくらか短くなったが、簡単には用を足せそうにない。15分近く待っていて、あることに気がついた。開く扉は限られていて、後はずっと“貸し切り”の状態になっているのだ。

 

 よし、もうあと5分だけ待とう…。あれ、何やら“開かずのトイレ”の中から声が聞こえてくる。耳を澄ますとスマホで、取引先か何かと話をしている様子。一度切れたが、また次の取引先に。どうやら“開かずのトイレ”の主は、個室トイレを朝の仕事場として活用しているらしい。

 

 インターネットで調べたら、こうした行為は“こもりスマホ”と呼ばれ、小なりとはいえ社会問題化しているというのだ。

 

 あくまでもトイレは用を足す場である。個室トイレを仕事場に使うなどモラル以前の問題だが、こうした状況が続くのであれば、「トイレ内はスマホ禁止」の警告文でも貼っておくべきだろう。それでも改善されないようであれば、妨害電波を発する機器でも取りつけるしかあるまい。交通当局は、どう考えているのか。

 

 2020年、政府は4000万人のインバウンドを見込んでいる。五輪・パラリンピック期間中、首都圏の公共交通機関は大混雑が予想される。すぐにでも“こもりスマホ”撲滅に乗り出すべきである。品のない結びで恐縮だが、公共トイレにプライバシーもクソもあるまい。

 

<この原稿は19年12月11日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>

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