15日、日本サッカー協会(JFA)の大仁邦弥会長は、ハビエル・アギーレ監督らが八百長に関与したとしてスペイン検察庁からスペイン・バレンシア裁判所に告発され、告発状が受理されたことに対するJFAの声明を発表した。告発受理は14日に同国のマルカ紙が報じたもので、大仁会長は「告発受理が正式なものかどうかはまだ確認できていないが、これまでの報道の経緯からいうと確実であると想定している」とコメント。その上で「アジアカップ期間中は、代表チームの戦いを最優先する。(期間中は)この件については、我々は封印したい。アジア杯終了後、告発が受理されたことについてのJFAの考え、対応をご説明する」とアジア杯での日本代表の活動が終わった後に改めて説明の場を設けることを発表した。
(写真:大仁会長は「今は、とにかくアジア杯に専念する」と語った)
 約1カ月前には「まだ告発されただけで、受理はされていない」と繰り返し、主張してきたJFA。しかし、告発受理によって、フェーズが1段階進んでしまった。
「我々としては、告発が受理されないことを願っていた。受理されたということで残念。重く受け止めないといけない」
 大仁会長は神妙な面持ちで、現状についての感想をこう述べた。

 会見にはJFA法務委員長の三好豊弁護士も同席し、現状について説明した。
「昨年12月15日に、(スペインの)検察当局からの告発がバレンシアの予審裁判所に出された。検察当局からの告発に対して、バレンシアの予審裁判所が告発を今回受理したという報道になっている。受理したことによって、バレンシアの予審裁判所が正式に捜査、調査を開始するという法的な意味合いを持つと理解している。従って、これは、起訴されているわけではない。捜査が今から本格的に始まるということだ。捜査後に、実際に起訴するかどうかが決まる。本件について、起訴される可能性があるのか、どの程度、可能性があるのかについては、スペインの専門家にもいろいろ聞いているが、確実なことは今の段階では申し上げられない」

 スペインと日本とでは司法制度が異なる。日本では検察官が起訴すれば、被疑者が有罪となる確率は極めて高い。一方で、スペインの場合は起訴後に有罪となる確率は「向こうの専門家によるとケース・バイ・ケース」(三好弁護士)だという。スペインでは2010年にスポーツにおける八百長を含めた違法行為に関する法律が制定された。アギーレ監督ら41人が八百長疑惑で告発されたのは、同法が施行されて初のケース。それゆえに三好弁護士は「起訴された場合の有罪の可能性がどの程度あるのかというのは、はっきりしたことは申し上げられないという状況にある」と語った。

 告発受理を受け、大仁会長は日本代表に帯同している霜田正浩技術委員長(強化)に「とにかく、チームが試合に集中できるようにしてほしい」と伝えたことを明かした。日本代表は明日、グループリーグ第2戦でイラク代表と戦う。JFAとしては現場に混乱を生じさせないことを最優先するが、それでも現地にいるメディアからは八百長疑惑について追求されることが予想される。平穏にイラク戦、それ以降の戦いに臨むことは難しいだろう。

 告発受理はバレンシア裁判所が捜査を必要としたことを意味する。だからこそ、この事実を大仁会長も「重く受け止める」と語ったのだ。アギーレ監督の処遇について大仁会長は「いろいろな情報を集めて検討しているが、まだ決まっていない」と述べるに留まったが、JFAとしては痛みを伴う決断も下す必要性も出てきた。

(文・写真/鈴木友多)