10月初めに中日を退団した松坂大輔の、14年ぶりの古巣復帰が決定した。

 

 

 今季、松坂はわずか2試合の登板に終わった。0勝1敗、防御率16・88。39歳という年齢を考えれば、普通ならジ・エンドである。

 

 だが松坂の場合、そうではない。西武に“貸し”があるからだ。

 5111万1111ドル11セント(当時のレートで約60億円)――。

 

 2006年11月、ポスティング・システムを利用してボストン・レッドソックスが松坂を落札した金額は驚くべきものだった。

 

 これを受け、26歳の松坂は語った。

「最高入札額は20億円前後だと思っていた。60億円は想像より、はるかに上でした。

 破格の金額はアメリカ(のメディア)が煽っていただけだと思っていたので、聞いたときはしばらく信じられなかった。それだけ期待されているのかと思うと、うれしい反面、プレッシャーもあります」

 

 レッドソックスでの6年間の成績は50勝37敗。西武に支払った60億円という移籍金が高かったか安かったかについては評価の別れるところである。

 

 ちなみにポスティング・システムは1998年12月、日米選手協定の改定によってできたもので、海外FA権を取得していない選手がメジャーリーグ球団に移籍するための、いわば日米間の“特措法”である。

 

 この制度は96年オフ、千葉ロッテが業務提携の契約を結んでいたサンディエゴ・パドレスに伊良部秀輝(故人)の独占交渉権を与えたことに対し、他のメジャーリーグ球団が猛反発、「機会均等」の名の下に導入された。

 

 この制度を使っての日本人メジャーリーグ移籍第1号は誰か!? 若い読者はご存知ないかもしれないので書いておく。オリックスからシアトル・マリナーズに移籍したイチローである。

 

 メジャーリーグ志望のイチローに対し、球団は企業防衛のために、この制度を利用した。FA権を取得後の渡米なら、球団には1円も入ってこないからだ。移籍金は約14億円だった。

 

 イチローの渡米から6年後、松坂は約60億円ものビッグマネーを移籍金として球団にもたらせたのである。

「この“松坂マネー”を球場や寮の改修費用に使わせてもらいました」(元球団職員)

 

 そんじょそこらの“出戻り”とは訳が違うのである。

 

<この原稿は2019年12月20日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものを一部再構成しました>

 


◎バックナンバーはこちらから