皆様、新年明けましておめでとうございます。本年は読者の皆様により一層満足頂けるコラムを作成して参りたいと思います。今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう何卒よろしくお願いいたします。

 

 さて、今年はいよいよオリンピックが東京で開催されます。招致決定となった2013年9月から東京都は全精力傾け、この大イベントを必ずや成功させようと各地で様々な取り組みを行っています。56年ぶりの日本でのオリンピック開催、私も既に今からワクワクしていますし、夏が早く来てくれないかと待ち遠しくなっています(笑)。

 

 絶対に盛り上がるであろう4年に一度の祭典ですが、実は私自身も1996年のアトランタ五輪に日の丸を着けて出場した経験があります。

 

 当時の野球日本代表は全てアマチュア野球チームに所属しているメンバーのみで構成されており、現在の侍ジャパンのようなプロ野球選手が集められ、日本代表としてオリンピックに出場出来るシステムではありませんでした。

 

 では私が出たアトランタのことを少しだけ振り返ってみましょう。
 日本の他、キューバ、アメリカ、オーストラリア、韓国、オランダ、ニカラグア、イタリアが参加。8チーム総当たりの予選リーグは、序盤はなかなかームが良い波に乗れず黒星先行で予選突破すら危うい状況まで追い込まれました。ですが、予選リーグ後半は投打の主力選手が底力を発揮し、何とか4勝3敗の3位で予選を通過をしました。

 

 準決勝の相手はアメリカでした。予選では敗戦したものの、準決勝では打線が奮い11対2で勝利しました。そして迎えた決勝は宿敵キューバとの決戦でした。

 

 試合は中盤まで互角の戦いを繰り広げましたが、最後は地力の差を見せられ9対13で敗退。準優勝で銀メダルという結果となりました。キューバにとっては金メダル獲得が至上命題、一方日本は準決勝のアメリカ戦を重要視していたので、その決勝戦に対する意気込みの差が、最後結果として出たのかなと感じました。

 

 こうして改めてオリンピックを振り返ってみると、共に戦ったチームメンバーの中で後にプロ野球選手となり大活躍を収める選手もいて(編集部注・アトランタ五輪代表にはのちにプロに進んだ川村丈夫、三澤興一、今岡誠、福留孝介、松中信彦、井口資仁、谷佳知らがいた)、彼らを間近で見ていたときのことを思うと、当時の自分がいかに未熟だったかを思い知らされます。

 

 ちなみに私自身のアトランタでの成績はというと、予選リーグのキューバ戦に先発した1試合のみで、2回途中で打ち込まれてしまいノックアウト。その後登板はなく主力選手をベンチで応援し、ピッチングでチームに貢献することはできず悔しい気持ちだけが残りました。表彰式では悔し涙で前が見えなくなったことを鮮明に覚えています。

 

 アトランタで銀メダルを獲得した名誉は残りましたが、個人的に言えばほろ苦さが残るオリンピックでした。

 

 そこから24年が経ち、オールアマチュアで挑んだアトランタ五輪からオールプロ選手で編成され挑む東京五輪へ。時代の流れを感じてしまいますね。

 

 今、日本では子供たちの野球離れが深刻です。関係者や指導者たちは「野球の未来をどうしていくのか」を真剣に考え始めています。野球人口の減少を食い止めるにはどのような策が効果的で、そして将来に明るい展望を見出だせるのか。様々な場所で議論されています。

 

 野球に携わる様々な人々が改革のために努力することは当然ではありますが、今回選ばれる侍ジャパンの代表選手には、日の丸を背負う責任や重圧をパワーに変え、野球本来の魅力、素晴らしさ、そして感動を多くの方々に届けて欲しい。そして1人でも多くの子供たちが野球をやりたい! そう思うプレーを存分に魅せてほしいと願っています。

 

 東京での侍ジャパンの活躍が未来の野球に繋がる何よりも大きな力となり、再び野球が正式種目に返り咲けるだけの印象的で魅力ある試合を繰り広げてくれることを祈念したいと思います!

 

<小野仁(おの・ひとし)プロフィール>
1976年8月23日、秋田県生まれ。秋田経法大付属(現・明桜)時代から快速左腕として鳴らし、2年生の春と夏は連続して甲子園に出場。94年、高校生ながら野球日本代表に選ばれ日本・キューバ対抗戦に出場すると主軸のパチェーコ、リナレスから連続三振を奪う好投で注目を浴びた。卒業後はドラフト凍結選手として日本石油(現JX-ENEOS)へ進み、アトランタ五輪に出場。97年、ドラフト2位(逆指名)で巨人に入団。ルーキーイヤーに1勝をあげたが、以後、制球難から伸び悩み02年、近鉄へトレード。03年限りで戦力外通告を受けた。プロ通算3勝8敗。引退後は様々な職業を転々とし、17年、白寿生科学研究所に入社。自らの経験を活かし元アスリートのセカンドキャリアサポートや学生の就職活動支援を行っている。


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